#あみもの第三号ゆる感想 その1
総勢69名が参加する超豪華・短歌連作サークル誌『あみもの 第三号』。素晴らしい作品が多いので全連作一首選するとツイートしたのですが、感想を全然ツイートできておりません。あと一週間で第四号の締め切りです。ダメウーマン!
Twitterに感想をガシガシ投稿するとTLが流れてっちゃうのでnoteでまとめていきたいと思います。計画性なくてホントすみません。。
あみもの第三号はこちら↓から読めます!まだの方はぜひ!
その1はミオナマジコさん~大橋春人さんです!Twitterに投稿済みのものもまとめてあります。ゆるっとどうぞ。
未来まで一緒に歩いてみたかった君の背中を追いかけていた/ミオナマジコ「ラブレター」
愛の溢れた連作。まさにラブレター。主体は「君」と結ばれなかったけれど、この先もずっと心の支えになるのだと思う。
ばあちゃんが入れ歯をはずし大泣きの赤子よ世界とはおそろしきもの/笛地静恵「呟き坂48」
俳句と短歌セットの超豪華な連作。贅沢だ!ノスタルジックな日本の風景に潜むそこはかとない不気味さがクセになる。
ハワユー?にアイムオーケーする国で気付けば失くしかけてた本音/ 楓奏(ふーか)「鈍色交響曲(シンフォニー)」
決まりきった型にはまらなければ生きていけない学校、社会。つらいときにつらいって言えないのはつらい。諦念の漂う連作です。刺さった。
ニュースにて映されている映像は決して起きないことなんてない/ シリカ「もしも」
感受性豊かでまっすぐな連作。他人事はある日他人事じゃなくなるかもしれない。もしも、を重ねた先に見えるのは日常の尊さなのかもしれないなと思いました。
秒針が軽すぎるから絨毯に骨を埋めて半泣きでいる/ 海老茶ちよ子「花冷え」
時間は無情にも過ぎていくし、主体はすでに別れが来ることを悟っている。別れの冷たさを必死で暖めようとする前半、別れてしまっても力強く立ち直ろうとする後半の構成。名詞の使い方が流石だと思います。
いつか片道の切符で乗り込もう 列車の屋根に溶けかけの雪/松岡拓司「離れて暮らすとは」
家族の連作。溶けかけの雪。かつて主体は自らの意志でふるさとを離れていったのではないかなあ、という妄想。実家を離れて暮らす身にずっしり響いた一首でした。
震災のテレビはつまらないからとチャンネル変える妻と住む東京/ベルデ「7年目の春」
震災に胸を痛めながらも力になれない、というもどかしさが溢れた連作。被災地から離れて暮らす人の無関心を残酷なまでに描いた一首だと思います。3.11を過ぎたら自分だって「妻」と変わらないのではないか、と思うと肝が冷える。
定型で前人未到のことをする前に微糖か加糖で悩む/水沼朔太郎「実を言うと」
でっかい夢を抱えた上の句と凡人の日常の一コマの下の句の対比に思わずニヤリとしてしまいました。8首目、9首目の字余りのドライブ感めっちゃ好きです。歌人の泥臭くも愛しい日常詠。
教科書を闇の秘本と名づけたり聖霊たちをその隅へ書く/あひるだんさー「ハイスクールデイズ(仮) 」
構成が見事。「まとも」な大人と並べることでこんなに中二病感が際立つとは。めっちゃ笑った。めっちゃ笑ったけど…ネタだよね??ネタだと言ってください
ふるさとを模した火星の移住区のジャスコで今日もそうざいを買う/ルナク「火星へ」
SF連作。火星にジャスコ。スタイリッシュなものを作ればいいのにジャスコ。何だかんだで人は馴染みのあるものから離れられないのかも。もっと長い連作でこのコロニーの世界観を味わいたい。ロマンティックな六首目も好きです。
気づかずに未来と呼んだともしびをぼくらはいつか悔やむだろうか/貝澤駿一「きみとぼく」
過ぎ去った日々を想う美しい連作。若さ故に気付かなかったこと、今になったからこそ気付けることがある。ある「仕掛け」のある連作なのですが、この仕掛けもまた美しいのです。すごい。
パン生地にくるみを混ぜた手のままで抱けよ 世界がいつ終わってもいい/茉城そう「世界の終わり」
熱情の字余り。喪失の字足らず。こういう連作が読めるところがあみものの素晴らしいところだと思います。きっちり細部まで描写しつつ心的テンションが最後まで下がらない力量には唸るばかり。好き~~~。
真実がすべてではなく今はもう亡いかもしれぬ星のかがやき/夏山栞「スターゲイザーの瞳」
スターゲイザー=星を見つめるもの。死者に真実を問うことはできない、生きている人間は星を見て死者に思いを馳せることしかできない。悲しくも美しい挽歌。四首目「にせものの~」のお歌が悶絶級に好きです。読むべし。
青春を歓迎する様(よ)に満開の桜の下で君に出逢った/amico「ガクセイのハル」
色々な年代の学生の春を描いた、出会いと別れのみずみずしい連作。掲題の一首、一目ぼれのお歌と読みました。この主体はこれからどんな青春するんでしょう?多分至る所に「君」がいるんだろうな。眩しい。
炊飯器、電子レンジ、僕が壊れ歯ブラシで革靴を磨いた/大橋春人「前歯を磨く」
ほのぼのとした日常がちょっとずつずれていく、壊れていく。前歯を磨いている二首目にも危うさの片鱗が見えるのですがどんどん壊れていく。怖い怖い。モチーフが多彩で、噛めばずーっと味が出てくる連作。