『ショパンのレシピ』 (短歌連作10首)
ブランチの山吹色のオムレツに蛙色したクレソンが合う
こんなにも赤いラディッシュそんなにも短い刻で色めいたのか
愛し合い傷つけ合った春を終え等間隔で若鮎を焼く
出窓から恋人たちのしあわせが終われと願う夏のサボテン
デンファレを艶めく髪に挿すようにカッペリーニに添えるクレソン
輪郭を失いかけた恋人はマスクメロンを手に訪れる
パスタ屋でアンダンテって云う女子にスピアナートとポロネーズ(大)
完璧な失恋の夜も完璧にカニのペンネをつくってしまう
もう二度と逢えないひとの輪郭の食後のマルゲリット・マリーラ
マカロンの黒だけを買うわたしより喪服の似合うひとを知らない
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