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「つみきメソッド」子どもの自己肯定感を高める関わり方

このnoteは、NPO法人Grow Up の活動として、「いじめをなくす」ことを目的とした「自己肯定感を高める講座」の小冊子から、文章だけを抜粋したものです。

小冊子にあるイラストはありませんが、文章だけでも読んでいただき、子どもとの関わりをより良くするための一助となれば、とても嬉しいです。



0.はじめに

 本小冊子は、私のプロコーチとしての10年以上の経験をもとに、お母さんや学校の先生や多くの方々に行っているコーチングテクニックを「つみきメソッド」と名付けて、子どもの自己肯定感を高めるための関わり方について書いています。

 2014年から小冊子を作り始め、10回以上の改定を行ってきました。今までは心理学の情報が多かったのですが、今回は具体的なワークの形で書いています。

 「子育ての正解は、失敗から学ぶ事」

 これが、この小冊子で一番お伝えしたい事です。子育ての答えは本やSNS、専門家や自分の親など誰かが持っているものではありません。目の前の子どもとあなた自身の中にあるもので、それに気づけるのは失敗したと感じた時だけです。

 私の子どもが小学生の頃にいじめを受けて「子どもにも親にも先生にも、誰にもこの経験をしてほしくない。」「いじめを無くしたい。」との思いから2015年8月にNPO法人Grow Upを仲間と共に立ち上げました。父子家庭二人暮らしは、子どもにとっても良い環境ではなかったと思いますし、失敗の連続でした。その私達の経験も活かしてほしいと願っています。

 「社会の中で、自らに由り、楽しく生きる力を育む。」

 子育ての目標にとお伝えしていますが、子育ては親だけでするものではありません。子育てとは、色々な人を巻き込み、迷惑をかけ合いながら行うものです。巻き込むのは家族や友人、行政系の相談も、民間の相談もあります。もちろん、中島も相談先の選択肢に入れてくださいね。

NPO法人Grow Up 理事長 中島 征一郎

1.子育てで、一番の誤解されていること

親の愛情より、子どもに興味を持とう

「親の愛情が不足しているから、子どもが問題行動を起こす」

 という話を読んだり、聞いたりした人は多いと思います。親が子どもに愛情を注ぐからこそ、子どもの心情が育まれます。まあ、間違ってはいないのですが、「親の無償の愛」という言葉だけでは、説明が不足しています。

 子どもの心情を育むために、親の愛情よりも、子どもに興味を持ちましょう。

 親の愛情とは、親の価値観や感情の押し付けともいえます。多くの親は子ども達を愛していますし、愛情を注いでいます。でも、それが子どもが求めているものではないんですよね。私達の子どもの頃もそうであったように、親の愛情と子どもの心情とは別物なのです。
 自分の愛情を子どもに押し付けるよりも、子どもに興味を持ち、子どもが望む関わり方をすることで子どもの心情が育まれ、自己肯定感が高まります。

・子どもが、好きなことは何ですか?
・子どもが、嫌いなことは何ですか?

 子どもに興味を持って関わることが、子育てで一番大切な事です。

2.自己肯定感とは、メンタルの安定

まずは、自分の自己肯定感を高めよう

 親になると自己肯定感以外にも、自己有用感や自尊感情、愛着障害と色々な言葉に振り回されてしまうものです。

 私が講師をしている「自己肯定感を高める講座」では、以下の3つの意味で自己肯定感を定義しています。

・自分の成長する可能性を信じる
・自分の失敗を許す
・自分の成功を認める

 ですが、今ではもっとシンプルに、

自己肯定感が高い=メンタルの安定

 とお伝えしてます。色々と小難しいことを考えるよりも、メンタルを安定させるためにはどうしたら良いか?を考えて行動することで、結果として自己肯定感が高まりますからね。

・どんな時にメンタルが安定していますか?
・どんな時にメンタルが不安定になりますか?

 親も、子どもも、メンタルが安定していれば、どんなことでも何とかなりますからね。

3.プロコーチの関わり方「つみきメソッド」

「教える」と「育む」2つのアプローチ

 「つみきメソッド」では、子どもへの関わり方を「つむ」と「ささえる」の2つに分けて考えています。「教育」という言葉が「教える」と「育む」の組み合わせであるように、「教える=つむ」「育む=ささえる」のどちらも子どもの成長に必要なことです。子どもとの関わりで、どちらが正しいか?ではなく、その状況に応じて選択することが大切です。

「社会の中で、自らに由り、楽しく生きる力を育む」

 という目的のためには、「つむ」ことも「ささえる」こともどちらも大切です。家庭内の躾や社会のルールを「つむ」ことも、子どもの失敗にも成功にも寄り添い「ささえる」ことも、どちらも社会の中で生きるために必要ですからね。

 とはいえ、子育てをしていれば、子どもの言動にイライラして、感情的に「つむ」ことも多いと思います。大切なのは、自分のメンタルを安定させることですから、冷静に子どもを観察して、「つむ」か「ささえる」かを選択していきましょう。

・あなたは、自分の親からどう「つまれたい」ですか?
・あなたは、自分の親からどう「ささえられたい」ですか?

 子どもはいつでも不安定ですから、「つむ」より「ささえる」を多くしたいですね。

4.「5つのめがね」で、子どもに寄り添う

子どもと共に、親が成長するために

 「つむ」か「ささえる」か、目の前の子どもに合わせて選択しましょう。と、言うのは簡単ですよね。でも、実際にどう選択すれば良いのでしょうか?多くの育児書の問題もここにあります。何をやるか?の情報は溢れるほどですが、どうやるか?は自分で考え選択しなければいけません。

 「つみきメソッド」は、「5つのめがね」を用いて、子どもと自分の中にある子育ての答えを見つけ出すフレームワークです。「自分めがね」「相手めがね」「今めがね」「未来めがね」「推理めがね」の5つの視点で観察することで、目の前の子どもに合ったより良い関わり方を見つけることができます。子育てでは、「目に見えていないものを観る」ことが重要です。

 子どもの成長には、親の成長が不可欠です。親の成長とは、視点を替えることであり自分の価値観をアップデートすることです。そのためには自分の思いや考えを言葉にする必要があります。初めて「つみきメソッド」を使おうとすると、思っていたよりも書けないでしょう。だからこそ、繰り返し行い、自分を成長させていきましょう。

・あなたが、好きなことは何ですか?
・あなたが、嫌いなことは何ですか?

 自分を観察することが、親の成長のはじめの一歩です。

5.「今めがね」子どもと自分の言動を観察する

結果だけでなく、原因も探求しよう

 5つのめがねの1番目は「今めがね」です。ワークシートでは、左側のマスになります。

 ここには、何が起きたのか?何が問題なのか?問題のきっかけは何か?誰が関わっているのか?といった足跡を探して書き出しましょう。なるべく具体的に、目に見えているものだけではなく、過去の出来事も思い出しながら書くことが大切です。

 5つのめがねの中で、「今めがね」が一番書き出しやすいと思います。現状を把握するのはとても大切ですから、一番大きなマスにしています。ですから、練習の気持ちで、書けるだけ書き出していきましょう。

 ここで意識してほしいのが、思考の筆算です。文章を考えながら書くのではなく、書き出しながら考えていきましょう。書いた言葉や文章が問いとなって、さらに書き広げていけますからね。

・目の前の状況は何が問題ですか?
・それは、なぜ問題なんでしょうか?

 言葉にするチカラを高めることが、一番の成長です。

6.「自分めがね」子どもに伝えたいことは?

子どもと自分の、自他境界線を引き直そう

 5つのめがねの2番目は「自分めがね」です。ワークシートでは、右側中央のマスになります。

 ここには、自分が子どもにさせたいことや、言いたいことを書き出しましょう。ここでは子どもの気持ちを考えずに、思うがままに書き出して下さい。それは躾かもしれませんし、社会のルールかもしれません。また、自分の幼少期に自分の親から言われたことや、親として他者から見られる目を気にしているのかもしれません。

 「つむ」ことを書くのに抵抗を感じたら、「王様の耳はロバの耳」と叫ぶように、あえて自分の欲求を書き出していきましょう。ここでは、自分自身の気持ちに気付く事が大切ですからね。

・親として、周りからどう見られたいですか?
・親として、周りからどう見られたくないですか?

 子育ての答えは子どもの中だけでなく、自分の中にもありますから、その想いを言葉にしていきましょう。

7.「相手めがね」子どもは何を求めている?

子どもの言動に、興味を持とう

 5つのめがねの3番目は「相手めがね」です。ワークシートでは、右側下のマスになります。

 ここには、子どもの気持ちになって、自分が子どもだったら何をしてほしいですか?何をしてほしくないですか?を書き出しましょう。

 「ささえる」で大切なのは、親視点である「自分めがね」から、子ども視点である「相手めがね」に替えて書き出すことです。「子どもの気持ちがわからない」と思ったら、自分の子どもの頃を思い出しましょう。自分が親や先生にされて嬉しかったことは何でしたか?されて嫌なことは何でしたか?どう関わってほしかったですか?

 ここでは「自分めがね」とは逆の立場で、思うがままに書き出していきましょう。

・子どもの頃に、親から言われたかった言葉は何ですか?
・子どもの頃に、親から言われて嫌だった言葉は何ですか?

 子どもに寄り添うために、自分の子どもの頃を思い出しましょう。

8.「未来めがね」どんな大人になってほしい?

自分を嫌いな大人になってほしい?

 5つのめがねの4番目は「未来めがね」です。ワークシートでは、右上のマスになります。

 子育てで大切なのは「子どもに、どんな大人になってほしいか?」なのですが、日々の生活の中では、目の前の出来事に一喜一憂してしまうものです。イライラしたり、自分の感情を子どもに押し付けたりすることもありますよね。だからこそ、「未来めがね」をかけて考えましょう。

 子どもの目の前の失敗や言動を責めても、何も効果はありません。効果がないだけでなく、子どもの自己肯定感を下げてしまい、子どもが自分自身のことを嫌いになってしまいます。これは私達親も同じで、自分の失敗を注意されたり批判されたりすれば、自分のことが嫌いになってしまいますよね。

 まずは今と過去の出来事は横に置いて、理想の未来を言葉にしましょう。自分にとっての今の理想と未来の理想はなにか?子どもにとっての今の理想と未来の理想はなにか?目指すゴールがあるからこそ、今の行動を選択することができます。

・子どもに、自分を嫌いな大人になってほしいですか?
・子どもに、自分を好きな大人になってほしいですか?

 楽しい未来を、言葉にしていきましょう。

9.「推理めがね」どう関わるか?を考える

子どもに合わせた「7つの関わり」

 5つのめがねの5番目は「推理めがね」です。ワークシートでは、一番下のマスになります。

 ここまで書き出したシート全体を眺めて、関わり方を推理し、答えを解き明かしましょう。

 具体的な関わり方を推理するヒントとして、「7つの関わり」を参考にしてみて下さい。縦軸に「自分めがね」「相手めがね」、横軸に「今めがね」「未来めがね」、上段を「つむ」下段を「ささえる」として、関わり方を7つ載せています。

 子どもへの関わりで避けるべきなのが、「〇〇しなさい!」「〇〇してはいけません!」「〇〇しないと、△△だよ!」等の「命令」と「脅迫」です。これら二つの「つむ」関わりは、自傷や他害等で必要な時はありますが、子どもの自己肯定感だけではなく主体性も大きく引き下げますので、別の関わりを探していくのがオススメです。

・子どもに言った後に、後悔したことはありますか?
・その後悔をした時に、どう関われば良かったと思いますか?

 理想の未来につながる、関わり方を選びたいですね。

10.「推理めがね」子どもの未来へ、種まきをしよう

子どもには「相手めがね」で関わろう

 子どもの求める親の愛情とは、「未来めがね」と「相手めがね」で関わってもらうことです。ですが、「ささえる」だけでは甘やかしになってしまいますから、「つむ」ために「ささえる」関わり方こそが、子どもの未来のために大切なことです。

 これは子どものためだけではなく、自分自身や一緒に住む家族のためにもなります。親子関係は子どもが大人になっても続きますから、10年後20年後を見据えた関わり方が、結果として自分のためにもなるのです。

 そのために必要なのが、自分と子どもとの「自他境界線を引き直す」ことです。親になると、他者からの子どもへの視線や評価が気になるものです。ですが、自分と子どもとは別の人間です。自分の評価のために子どもに「つむ」関わり方をしてはいけませんし、自分の人生を子どもに肩代わりさせてはいけません。自他境界線を引き直して、子どもの未来のために、種まきとなる関わり方を選択していきましょう。

・子どもの未来のため、した方が良いことは何ですか?
・子どもの未来のため、しない方が良いことは何ですか?

 子どもの未来だけでなく、自分の未来にも種まきしていきましょう。

11.安全基地で、自分自身を育む

子どものために、自分の安全基地を作ろう

 ここまで「子どもへの関わり方」について書いてきましたが、子どもの自己肯定感を高めるためには、子どものメンタルの安定が不可欠です。子どもに寄り添い、時には優しく、時には厳しく、子どもから安全基地として認められるように関わりましょう。

 ですが、子どもの安全基地になるのは、難しいことです。なぜなら、親自身に安全基地となる人がいないからです。中島の考える安全基地とは「心理的安心」「身体的安全」「期待的対応」の3つが必要であり、これらがあるからこそ信頼され、安全基地として認められます。

 子どもの安全基地になるためには、まずは自分の安全基地を見つけましょう。その相手は、家族や友人ではないかもしれません。自分の良いも悪いも受け止め、優しさも厳しさもあり、目の前の課題解決をサポートしてくれるような、頼れる人を見つけたいですね。自分で安心感や心地良さを経験するからこそ、子どもにも同じように関われるのです。

・あなたには、安全基地となる人がいますか?
・安全基地となる人に、どんなことを求めますか?

 もし周りにいなかったら、中島を候補に入れて下さいね。

12.おわりに

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

 この小冊子は「いじめをなくすために」と私の想いを込めて書いたので、情報量が多くなりましたが、ページの都合で書ききれず情報が足りない部分もありました。

 ですから、まずは理解しようとするよりも、日常で意識するようにしてみて下さい。子どもと関わる時もそうですし、家庭でも職場でも、色々な場面で「5つのめがね」を意識してみると、「この人は自分めがねで話をしているな。」とか「今は自分めがねだからイライラしてるのかも。」と気付くことがあると思います。それが、はじめの一歩です。

 子どもの自己肯定感を育むためには、親である自分自身の自己肯定感を高める事が大切です。

 そのためには、頑張るだけではなく、自分自身に寄り添いささえていきましょう。子育ては長期戦ですから、頑張り続ける事は難しいですし、メンタルを大きく崩してしまっては、元も子もありませんからね。

 そして、この小冊子に書いたことは、自分だけが知っているよりも、家族や学校といった関わる人達も知っていた方が、効果が何倍にも何十倍にもなります。まずは夫婦の子育て観をすり合わせることから始めましょう。子どもにとっても一貫性のある関わりは、メンタルの安定につながります。

「もっと詳しく知りたい」

 という方は、講座にご参加いただくか、プロのコーチとして個別相談も受けています。研修やご夫婦での相談も行いますので、気軽にご相談下さい。また、周りに安全基地となる人がいない場合は、選択肢の一つにしていただければと思います。もちろん、私の出番がないのが一番ですが、自分をささえるためには、自分自身で行動する必要があることだけは、知っておいて下さいね。

 まずは、この小冊子を最後まで読んだ自分を、褒めてあげて下さい。これからも、子育てという旅路の戦友として、いじめをなくすための仲間として、共に歩んでいけると嬉しいです。

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