「失敗した時に言われたく無い言葉 高学年向け」Rev.2
「失敗した時に言われたく無い言葉 高学年向け」Rev.2
作者:中島 征一郎
「時間もったいないし、行きますか。」
「そうだね!行こう!」
親友であるBのテンションが高い声に、少し笑いながらコントローラーのボタンを押した。
今、このオンラインゲームに夢中だ。クラスでもやっている子は多いけど、多分上位に入る上手さだと思う。いつもは上手い奴らと一緒にやっているけど、今日は塾があるらしく、親友のBと一緒にやる事になった。と言っても、誘ったのはオレだし、たまには勝ちにこだわらずにのんびりやるのも良いよね。でも、負け過ぎてランクが下がるのは嫌だけど。
「おお、だいぶ上手くなったじゃん。」
「ありがと!Aくんは教えるのが上手いからね!」
Bはこのゲームを始めたばかりだし、のんびりしてる所もあって、正直あまり上手くない。でも、早く上手くなって欲しいし、文句ばかり言ってもつまらないからね。
「まあ、そうだね。感謝してくれて良いよ。」
「あはは、そうだね、Aくん、ありがとうございます!」
わざとらしく偉そうに応えたけど、笑い合いながらプレーしていたのは最初だけだった。
「ああ、Aくん、ごめん!またやられちゃったよ。」
「はぁ〜〜、まあ、ドンマイドンマイ、しょうがないって。後はオレがやるし、大丈夫だから、のんびり見ててよ。」
「今回も、ごめんね。」
「いいって、Bは始めたばかりで下手なんだから、失敗したって仕方ないよ。」
「・・・なんかその言い方、嫌だなぁ・・・」
小さな声だったけど、Bは「嫌だ」と言った。え?なんで?こっちは気を使ったのに、言われたくなければ、ちゃんとやれば良いじゃん。色々と教えてあげてるし、オススメの動画も紹介して、それに負けてポイント減らさないように頑張ってるの、オレだよ?感謝してくれたって良いくらいなのにさ。
「ああ、しまった、Bごめん、やられちゃったよ。」
「ドンマイドンマイ!失敗は誰にでもあるし、しょうがないよ!後は任せてよ!」
「え、あ、うん。」
・・・なんかムカつく。集中切れたのはBが変な事言ったのが原因なのに、なんだそれ。そもそも、ミスったBを守るために動いたからで、なんで「ドンマイ♪」とか言われなきゃいけないんだよ。オレより下手なヤツに、上から目線で「任せてよ!」とか言われるとイライラする。
「あ、やられた・・・ごめんAくん。」
だから言ったじゃん、調子に乗ってるからやられるんだよ。
「いや〜、惜しかった惜しかった、でもBにしてはよく頑張ったよね。」
「ごめんね・・・。」
「いやいや気になさらず、下手な人が調子に乗れば、こうなっちゃいますよ。」
「ちょっと!なんなの、その言い方!」
「は?Bが先にバカにしてきたんだろ!」
「え?ボク、バカになんかしてないよ?なんでボクがAくんをバカになんかするのさ!」
は?あれだけバカに・・・あれ?確かにバカにはされてないのか?。
「ボクが下手でヘマしてばかりで、Aくんが途中からイライラしてるのわかってたから頑張ったけど、やっぱり足でまといだったね。」
始めは余裕があって楽しんでたけど、負けが続いてポイントが減ってきて、勝手にイライラしていたのかも。それにBに言われてムカついた言葉は、オレがBに言った言葉と同じだった気がする。そもそもBはこのゲームを始めたばかりで下手なのは当たり前なのに、自分と同じくらいやれるでしょ、って勝手に思い込んでいた。
「ねえ!Aくん、聞いてる!?」
「ああ、うん聞いてる。オレの方こそ勝手にイライラしてごめんな。Bは始めたばかりで下手なのわかってたし、不器用なのも知ってたのに、なんか期待し過ぎたみたいでさ。」
「だから、言い方!」
え?本当の事を言っただけなんだけど、言い方ってなんだ?
あ、そうか、自分だって失敗した時に言われたくない言葉があるし、それが本当の事だったとしても言われて嫌な言葉は、言わなかったり言い方を変えた方が良いのか。
「えーと、B、嫌な気持ちにさせてごめんな。母さんが帰ってくる時間まであと1回か2回できるだろうから、これからは最初みたいに楽しくやろう・・・で、どう?」
時計を見ながら、残り時間を少しでも楽しくゲームしたくて、言ってみた。でも、これで合ってるのかな?相手に伝わるような言い方って難しい。だって、相手の気持ちを考えないといけないんだから。
「うん!いいよ!」
Bの元気になった声が聞こえて、ホッとした。良かった。まあ、減ったポイントはまた上げれば良いし、イライラして終わりたく無いもんね。よし、気を取り直していくか。
と思った時に、玄関が開く音がした。
「ただいまー!あ!またゲームやってる!宿題はしたの!?」
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