「失敗した時に言われたくない言葉 4年生向け」Rev.0 

「失敗した時に言われたく無い言葉 4年生向け」Rev.0 
                          作者:中島 征一郎

「もう、また忘れたの!?帰って来たらすぐ出しなさい、って言ってるじゃない!!」

今日も、朝からお母さんに怒られた。
学校にペットボトルを持っていかなきゃいけなくて、そのプリントを朝見せたからしかたないけど。
いつものように、自分の足の指を見ながらお母さんの小言が終わるのを待った。

「っていうか、このプリントいつもらったの?もう、いい加減にしてよね!」

よく忘れ物をしちゃうのは自分でもわかっていて、でも、なかなかできないんだよね。
帰って来たらすぐに遊びたいし、それにプリント出しても見てくれない事もあるから、それだったら出さなくても良いか、って思っちゃう。
それに、こんなに厳しく言わなくても、もっと優しく言ってくれればいいのにさ。

「わかった!?次からはちゃんとやりなさいよ!」
「はい。ごめんなさい。次はちゃんとやります。」

やっと終わった。
朝から嫌な気持ちになったけど、今日は図工があるし、早く学校いってみんなと遊びたいな。

「来週の授業で新聞使うから、家から持ってきて下さいね。」

そう先生は言いながら、プリントが配られた。
よし、今日は忘れずに出そう。ボクだってやればできるんだし、やっぱり朝から怒られたくないもんね。

家に帰ってから、1番にランドセルからプリントを取り出して、プリント入れのトレイに置いた。
トレイには郵便物が入っていたけど、一番上に置いた。

「これで良し!」

ちょっと誇らしい気分になった。
ぼくだって、やればできるんだからね!

「お母さん、新聞紙は?」

新聞紙が必要な日の朝、新聞紙が見当たらず、忘れずに覚えていたボクえらいな、と思いながらお母さんに聞いた。

「え?ウチは新聞取ってないから、無いよ?何に使うの?」

・・・なんだってぇ!!

「ちゃんとプリント出したじゃん!なんで新聞紙用意してくれてないのさ!いつもいつもボクを怒るくせに、なんでお母さんはちゃんとやらないのさ!」
「え、ちょっと何怒ってるの?そんなプリント知らないわよ。」
「ここに出したじゃん!」

トレイを指差すと、プリントがあるはずなのに郵便物が重なってのっていた。
慌ててトレイをひっくり返すと、プリントが見つかって、手に取ってお母さんに見せつけた。

「ほら!ちゃんと出してるじゃん!」
「何やってるの!そんな散らかして!!」

ごめんなさい、とあやまってくれると思ったのに、急に大きな声で怒られてビックリしてしまった。

「そんなに大事ならちゃんと渡さなきゃダメでしょ!もう朝から仕事増やして・・・」

悔しくて悲しくて、いつものように足の指を見つめていると、ポタポタと涙が落ちてきた。

「・・・ちょっと、泣いてるの?」
「・・・。」

何か言い返したいけど、言葉が出てこなかった。
頑張ったのに、ちゃんとやったのに、ひどいよ。

「ごめんね、ちゃんとプリント出したのに気付かなくて、お母さんが悪かったね。」
「・・・うん。」

お母さんは、コンビニに買いに行ってくれた。
気持ちが落ち着いて考えると、お母さんはいつもこんな気持ちだったのかもしれない。
やるって言ったのに、やらないって言うのは嫌な気持ちになるんだな。

それなのに、自分が言われたくない言葉をお母さんに言ってしまった。
お母さんだって失敗するんだし、その時はもっと優しく、自分が言われたいように言いたいな。

なぜか心がほっこりしていると、お母さんが帰ってきた。

「ちょっと、支度終わったの!?遅刻するわよ!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?