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ボケ論争に終止符を打つために、ボケ量計算ツールを作ってみた。

こんにちは。初めまして。中島です。
カメラが好きな方は一度は、どのセンサーサイズがボケるか論争になっているのを見かけたことがあるのではないでしょうか。
はたまたレンズでも「このレンズのほうがボケる!」だの「こっちのほうがボケる!!」だの言い争っているのを見たこともあるのではないでしょうかね。
カメラ趣味ではない人達からしたらクッソしょうもない論争なのに、白熱できる皆様と私は同じでございます。
そんな中、詳細な数値を用いて光学理論に基づいた会話をしている方々が少なく見受けられましたので、数字を触るのは苦手な私ではありますが、数字を見るのは好きなので、今回は無いやる気を少しばかり絞り出してボケ量計算ツールを作ってみましたのでご紹介いたします。
そして記事最後にツールのスプレッドシートを共有いたしますので、皆様と力を合わせてボケ量の表を完成させようといった魂胆でございます。


ボケ量計算ツールについて

このツールを作ろうと思った経緯

発端は、自称「X」を名乗るSNSにて、200mmF1.8(通称ニーイッパ)が最もボケるレンズだと称したツイートに、いや600mmF4(通称ロクヨン)のほうがボケるよ、との反論を見かけ、その理論の展開の仕方が、焦点距離÷F値の計算式により有効口径を割り出し、有効口径が大きいほうがボケる、と言ったものありました。

至極当然ながら、有効口径がボケ径を決定づける最大の要因となりうることは、この世の摂理でございます。

たしかにロクヨンの有効口径は150mmであり、ニーイッパの有効口径は111.11mmと、ロクヨンのほうが口径が大きいため無限遠にある玉ボケ径の側面ではその理論は正しいことになります。

しかし、ここで見落としているのが、像高を揃えた条件下で話が進んでいないことです。

私も以前像高を揃えず他人様を批判してしまい、大変赤っ恥をかいた覚えがあるため、ボケの話をするときには必ず像高を揃えることを意識しております。

話を戻しますと、まず、そもそも焦点距離が200mmと600mmと大変違いますので、像高を揃えなければボケの話題でよく出されるピント面の薄さが同条件下で計算できず、話が始まりません。

寄ればボケるし、引けばボケないので。

200mmより600mmのほうが焦点距離が長いため、必然的に引かなければならないのです。

そう。引けばボケない。

あれ。600mmのほうが引いてるからボケ、小さくなるんじゃね???

はい、そうです。ここが運命の分岐点でした。

焦点距離の違うレンズで像高を揃えて被写界深度を計算しなければならない。
そのためには被写体との距離を算出しなければならない。
じゃあ算出してやろうじゃねぇか。

はい。これがこのツールを作成しようと思った経緯でございました。

ツールの作成

まず、像高を揃えるためにも被写界深度を計算するためにも、被写体距離を算出しなければなりません。
しかし、ネットをいくら探しても、焦点距離(画角)とイメージセンサーのサイズから被写体との距離を算出する式を載せているサイトが見つからず、逆に距離から被写体の高さを算出するサイトはちらほらありました。
はい。式を変形させます。
あっという間に完成ですね。
(焦点距離*被写体の高さ)/撮像素子の水平(垂直)サイズから算出します。
なんかこれで行けるらしいです。
正確に求めるのであれば、焦点距離から画角を算出し三平方の定理を用いるべきですが、近似値が導けておりメジャーで測ってみた感じ問題なかったので、おおよそ大丈夫でしょう。
この距離自体は像高を揃えるのが目的なのでね。

さて、像高を揃えました。
次に問題なのが、被写界深度です。

被写界深度を計算するにあたってはまず許容錯乱円が計算式中で必須となります。
フィルム時代は許容錯乱円が0.033mm(33μm)と世界標準で決まっていたものの、デジタルになってからは、各社それぞれの許容錯乱円を設定しているらしく、あまり表にこの数字が出てくることもありません。
とりあえずフルサイズの許容錯乱円は0.02mm(20μm)とします。
根拠のある数字ですのでご安心あれ。

被写界深度を実際に計算するセクションに移りましょう。
ここで使う計算式は
許容錯乱円×絞り×被写体距離^2/(焦点距離^2±許容錯乱円×絞り×被写体距離)となりますね。間違ってたらごめんみ。
±の部分はプラスが前方、マイナスが後方の被写界深度となり、これらを合算することで算出可能です。

さて、ついでに有効口径を計算するセルも作っておきましょう。
こちらは簡単。焦点距離/絞りです。

これであらかたのボケ量計算が可能となりました。

有効口径は無限遠にある光源の玉ボケ径≒背景ボケの大きさを、被写界深度はピント面の幅を示しています。

ボケ量がそれなりに得ることのできるレンズの計算結果がこちらになります。

各種レンズを計算してみた所感と「論争」の結果

ボケを語る上で、背景ボケの大きさとピント面の薄さの二つを上げる論調があり、今回のこのツールはその二つに応えることのできる指標となったのではないかなと思います。
背景ボケの大きさは有効口径から、ピント面の薄さは被写界深度が示しています。

さて。

当初の作成意図である200mmF1.8と600mmF4、どちらがボケるのかといった話題。
上記表中にその答えがあります。
200mmF1.8の被写界深度は約500.1mm 有効口径は約111.1mm
600mmF4の被写界深度は約1111.2mm 有効口径は150mm
となりました。
この発端の話題に対しての結論としては
被写界深度はニーイッパのほうが薄く、背景ボケはロクヨンのほうがボケる、です。

どっちもボケるんですよね。結局。
ボケの位置が違うだけで。

なんなら像高を揃えた今回の条件だと、ピント面の薄さは85mmF1.4のほうがニーイッパより薄いですし、それよりも50mmF0.95のほうがさらに薄いです。

そう。像高を揃えた条件下であると、被写界深度は絞りが絶対的になるということです。
たしかに同じ絞り値で、焦点距離の差の分寄り引きしますから、広角はボケないけど寄ればボケる。望遠はボケるけど引けばボケないといった理論を鑑みると納得ではありますが、ここまで近似値になるとは思いもよりませんでした。

機能拡張

さて、ここまで来たら機能を拡張してみたくなるのが男の性ってもんです。
上記のままだとフルサイズセンサーにしか対応してませんでしたが、被写界深度の話題はなんならセンサーサイズのほうが話題になりやすいんですから。
やりましょうとも。

やりました。
センサーサイズによって許容錯乱円も変わりますので、ここで一気にやってしまいました。
倍率を出して、許容錯乱円を割るだけです。
プルダウンリストから各種センサーサイズを選択する方式にし、楽しましょう。
4433やIQ3 60MP等の大きなセンサーのカメラに対しての許容錯乱円の数値は比較的おかしなことにはなっていないので問題ないかなと思いますが、流石に小フォーマットのセンサーともなると、許容錯乱円が小さくなりすぎているため、少々見直しが必要なのかなと思いますが、ここは目をつぶっておきましょう。

これで、一通りのボケ量計算ツールとしては成立したのではないでしょうか。

まとめ

ここまで読んだもの好きなアナタ。
ありがとうございます。本気で。
ここまで読んでいただいたお礼に、このツールの共有リンクを授けます。

使い方は至って簡単。
薄オレンジのセル内の数値を自由に記入し、センサーサイズをプルダウンリストから選ぶだけです。

そしたらあら不思議。有効口径と被写界深度が出てきます。

シート2を見てください。
50mmからのにはなりますが表があります。
計算したレンズやセンサーサイズでの数値を記載していっていただけるとめっちゃうれしいです。
もっと広角がいい!!って人は表の下に書き連ねていっていただけるととうれしく思います。
暇なタイミングで綺麗に治します。
あと薄オレンジ以外のセルを弄ってしまうと結果が狂ってしまうので、ノータッチでお願いします。
ロックかけろよ!その通り!なんか上手く行かなかった!!!!

というわけで下記リンクにて色々試してみてください!!!

ここまでご覧いただき、本当にありがとうございました。

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