M&A会社は、査定価格では選ばないことをお勧めする【M&A日記】
M&A市場の拡大と共にM&A会社がものすごい勢いで増えたが、それに伴い新たなプラットフォームも次々と生まれている。
売主と買主を直接マッチングさせるサイトとか、当社のようなM&A事業者向けのマッチングサイトとか、M&A会社の比較サイトとか。
そんな中で、最近M&Aと検索したり、WEB広告でよく目にするようになったのが「譲渡価格の診断」「譲渡価格の一括見積」というサービス。
前者はM&A会社が自社の顧客獲得を目的として、譲渡価額を無料で診断しますよ~というどちらかと言えばありきたりなサービス。
しかし、後者は一括見積ということで、M&A会社の比較サイトが、集客を目的としたサービスとして提供されている。
この「譲渡価格の一括見積」というサービスはどうなのだろうか、と思う。
例えば車を売ろうと思うときに、一括見積を取得する、というのは理解できる。
登録している中古車を扱う会社が、自社であればこの値段で買い取る、というアピール合戦だ。
それでも、実態としては、見積もりでは高く出して、あとから傷があるからとかなんたらで結局安く買い取られたり、という問題もあるよう。
仕組みとして理解はできるが、まだ粗いところがあるという前提のサービスとして理解している。
一方で、会社を譲渡しようと思うときに、譲渡価格の一括見積をするのには疑問がある。
何故なら、見積もりを出すのは、買う会社ではなく、M&A会社だからだ。
私自身、M&A会社の経営者として断言できることがある。
それは、会社の譲渡価格は実際に動いて売ってみないと分からない、ということだ。
思っていたよりも高く売れることもあるし、安くなってしまうこともある。
対象会社の理解を深めて、業界の理解を深めて、できる限り市場の実態と見積もりを合わせようと努力はするものの、こればっかりは売ってみないと分からない。
愛車を売るときに、自分ではこれぐらいの価格と思っていても、実際にはそれより高かったり安かったりするのと同じだ。
売主はより高く売ってくれそうな会社を選ぶはずなので、M&A会社としては、いくらで売れるかは分からないけど、高めに出さないと選んでもらえないということで、高めに査定するという動機がはたらくはずだ。
そして、売主との契約さえしてしまえば、いざ動いてみて、見積もりの金額で相手が現れなくとも、金額を下げてもらって、見積もり以下の金額で譲渡するということになってしまう。
M&A会社を選ぶときには、査定価格で選ぶというのは正直お勧めしない。
高く査定して契約だけとってしまおう、という考えのM&A会社にハマってしまう恐れがある。
一方で安く出してくるM&A会社は誠実ともいえるし、あるいは自信がないともいえるかもしれない。
査定額で選ぼうとすると、誠実に活動してくれるか?という一番大事なところを見過ごしてしまう可能性が高くなるので、お勧めしない。