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合意された価格が落ちる要因【M&A日記】

具体的に買収検討を進めたいという企業から意向表明書を取得するステップがある。
買収意向があり、その目的や条件等については~というように、買収候補企業としての意向を書面に落としたものだ。

意向表明を受けると、多くの場合は相手を1社に絞り、独占交渉権を付与してデュー・デリジェンス(買収監査)(以降DDとします)→最終契約へと進むことになる。

さて、この意向表明で提示された金額は、確定条件にはならない。
DDを経てからの最終契約となるので、DDの結果次第では価格交渉が発生することがある。
では、どのようなことが価格交渉要因となりうるのか、メジャーなものを紹介する。

前提としては、極力支援するM&A会社が予め確認して、買収検討をする企業に通知し、それを踏まえた意向表明を受け取りたいところ。
状況により、事前に確認できるものと無いものがあるが、マイナスなものほど先に明らかにしておくのが原則なので、決してM&A仲介会社には隠さずに、むしろ積極的に伝えてほしいところ。
隠したところで、必ずDDで判明する。

さて、M&Aで実施されるDDは概ね、財務・税務、法務・労務、ビジネスの3種類だ。

【財務・税務】
会計・税務上の間違いがあれば当然修正分が交渉材料になるが、これは当たり前なのでそれ以外。

  1. 賞与・退職金の引き当てがなされていない
    引当金=負債なので、その金額分減額の対象となりうる。

  2. オフバランスのリース契約の残高が確認されていない
    リースは負債なので、残高分が減額の対象となりうる。

  3. 資産除去債務
    資産除去債務の引き当てをしている中小企業は殆どいないので、これは減額の対象とすべきかどうかの議論があるが、上場企業など自社でこれを引き当てている企業の場合は交渉される可能性がある。

【法務・労務】
法務の指摘事項は財務・会計と比べると重たい内容となる可能性があり、価格に反映させるだけでは済まず、買収自体が頓挫する可能性もあるため要注意。

  1. 偶発債務(将来的に負債となる可能性のあること)の存在
    ①労働債務。残業代等の未払の賃金があると、それは債務としてみなされて減額の対象となりうる。
    ②損害賠償債務。訴訟の最中であれば、損害賠償の支払いが将来的に発生する可能性があり、その分は減額の対象となりうる。

  2. COC条項の存在
    譲渡対象会社が締結している契約の中に、COC条項(株主変更を禁止する条項)が入っていて、交渉しても承諾を得られない時には、その契約が無くなることによる経済的損失を価格に反映させる必要がでてくる。

【ビジネス】

  1. 事業計画に不備がある
    作成していた事業計画をベースに価格算定がなされていたとすると、その事業計画に不備があった場合は、減額交渉の対象となりうる。

  2. 従業員の退職
    事業を引き継ぐうえで、その従業員は不可欠。退職する従業員の業績への影響力が大きければ大きいほどマイナス。
    退職する人によっては破談となる可能性もあるので重要な項目。

会社の譲渡を検討されている方は、これらを予め綺麗にしておけると良い。

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