ロールアップという成長戦略【M&A日記】
PEファンドと呼ばれるファンド運営会社と多くお付き合いをしている。
PEファンドについてはこちらから。
彼らは非上場企業の株式を取得し、会社を成長させるなどによって株式の評価を高めてから、次の企業へとバトンタッチし、取得価額と売却価額の差額を利益とする投資家だ。
企業価値は概ね対象企業のBS(貸借対照表)とPL(損益計算書)によって決まるので、基本的には投資期間中に、対象企業の売上・利益を伸ばすことによって、株式価値を高めようとする。
その方法の一つとして用いられるのがロールアップだ。
ロールアップは追加買収のことを意味する。
例えば50店舗の飲食店を運営する企業に投資したとする。
この会社を成長させるには、既存店の業績を改善するか、出店する、という方法になる。
とはいえ、既存店を大幅に改善するのは再生段階の企業でもなければ難しいし、売上を10%上げても企業価値はあまり大きく変わらない。
売上・利益を倍にすることを考えると、出店していくことが現実的な選択肢になる。
一方で、出店といっても、10も20も簡単にできるものではない。
お金があればよいということでもなく、それだけの物件を確保しないといけないし、国全体が人材不足の中で人材も確保しないといけないし、言うは易し行うは難しだ。
そこでロールアップという選択肢が出てくる。
同じような業態を20店舗ほど展開する会社がM&A市場に出てきたとする。
これを買収すれば、20店舗分の売上・利益を一挙に確保できることとなる。
直営店を出店するのと同等、あるいはそれより安い金額で買収できれば、その分の時間と物件探索や採用労力などを丸々カットして、短期間で成長を実現できることとなる。
これはファンドに限らず、自社の成長戦略を考えたときの一つの選択肢になる。
企業がM&A(買収)するときには、会社それぞれの目的があるが、大きく分ければ、既存事業の成長or新規事業分野への進出だ。
ロールアップは前者の、既存事業の成長を実現するに有効な選択肢と言える。
なので、PEファンドは概ね投資先について、ロールアップできる会社を探している。
PEファンドは、運用しているファンドのサイズにもよるが、小さいファンドでも年間1億円以上ぐらいは利益を出しているところが対象になるし、大きなファンドなら10億円以上の利益がないと投資対象にならない。
しかし、ことロールアップに関しては、投資規模が小さくても投資対象となりうる。
ファンドのロールアップニーズを把握しておくと、利益額が1億円に満たない企業でも、買収候補先になりうるのだ。