買い手と売り手の希望価格ギャップが拡大中【M&A日記】
多分。
私の感覚に過ぎないが、売主の譲渡希望価格と買い手の買収希望価格の目線が広がっている。
特に私が主戦場としているサービス業界ではその印象。
感覚の根拠としては、上場企業によるリリースが減っている、即ち買収自体が減っていること。
案件自体は相当にあるはずなので、恐らく価格が高いのだろうと思っている。
希望価格が乖離する要因は主に以下2点と想定。
①譲渡した経営者たちが価格を盛って伝えることで、高く売れるものという神話が広がってしまっている
②仲介会社が受託したいがあまりに、高い希望価格のまま受けてしまっている
殆どのM&Aで、譲渡価格は公表されない。
買収側が上場企業でもなければ、そもそも公表する必要がないし、買い手が上場企業であったとしても、譲渡価格についてはNDAに基づいて非公表とするということが殆ど。
実は緻密に調べれば分からなくもなく、ある程度私は調べて把握しているが、M&Aの仕事に関わってでもいなければ、そんなことを調べる人はまずいない。
とすると、あの会社はいくらだったというのを何故皆さん話しているかというと、譲渡した方が自ら言っているケースが少なくない。
そして、その数値が盛られているケースがまた少なくない。
聞いた人はそれを信じるので、いつの間にかそれが事実として神話のように広がる。
例えば近年リリースされている飲食業界におけるM&Aのバリュエーションを計算してみると、年倍法の概ね5倍程度で買収されている。
飲食業がどれぐらいで売れそうかと聞かれれば、私は基本的に2~5倍と伝える。
なので5倍は高評価ということ。
上場企業が買収するような飲食店は概ね良い会社で、それが事実5倍ぐらいで売れている。
しかし、その5倍で売れているはずの案件が、巷の経営者たちと話していると、7倍とか10倍とかで売れたらしいという話に変わっているのだ。
確かに私も7倍とかそれ以上の高値を実現したことは全然ある。
但し、それは前提としてその譲渡される会社によほどの魅力があって、他社と違うところが明らかで、高収益でというようなことが必須。
更に、そういう会社であれば、高くても致し方なし!という気概のある会社が興味持ってくれることもまた必須。
5倍以上はそもそも買わないというように決めている会社も少なくないので、確率の少ない中で奇跡的なマッチングを実現する必要がある。
ということなのに、7倍じゃないと売りたくないというような希望が恐らく多く、そういう提案ばかりが買い手には持ち込まれていて、恐らくその結果として、上場企業による飲食企業の買収ニュースというのは明らかに減っている。
そして無事売ることができた方々は、実は堅実に5倍で売られている方々だったりする。
もっと言えば、5倍もそれなりに強みがあって、売上もあって、収益力もあって、という会社に提示される条件なので、殆ど会社は3倍ぐらいで考えておいた方が良い。
高めの提示を受けられるに越したことはないかもしれないが、それはあくまでラッキーだと思って、堅実な条件でも検討されることをお勧めする。