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世界に見る、日本より先に高齢化を迎えた国々の事業承継【M&A日記】

日本より先に高齢化が進んだ国として代表的な例は ヨーロッパ諸国

例えばイタリアは長寿命と低出生率が特徴で、高齢化率(65歳以上の人口割合)が日本よりも早く上昇した。
ドイツも同様に、出生率の低下と長寿命により高齢化が進み、1970年代から1980年代にかけて高齢化率が大幅に増加した。
スウェーデンは高齢化社会に早くから直面しており、社会福祉政策を充実させることで高齢化の影響に対応してきている。

以下は高齢化の主な要因で日本と重なるところもある。

  • 出生率の低下:経済的要因や社会構造の変化により子供を産む家庭が減少。

  • 寿命の延び:医療技術の発展や生活水準の向上で平均寿命が延びた。

  • 移民の増加(一部の国):若い移民が流入することで一時的に若年層の人口が増えるものの、全体的な高齢化トレンドには影響が限定的。

これらの国では、日本同様に企業の事業承継問題が発生していて、その対策と日本との比較を考えてみる。

ヨーロッパにおける事業承継問題の特徴

1. 家族経営の割合

ヨーロッパでも、日本同様に中小企業や家族経営の企業が経済の大部分を占めていて、故に高齢化した経営者が後継者を見つけられないケースが増え、事業の継続が困難になる問題が見られている。
特にイタリアやドイツでは、日本と同様に伝統的な家族経営の企業が多く、後継者不足が課題。

2. 後継者不足

若い世代の人口減少や、次世代が家業を継ぎたがらない傾向(都市部への移住や異なる職業を選ぶなど)が影響を与えている。
これは日本と同じ傾向で、また地方部でこの問題が顕著になるのも日本同様。

3. 事業売却や外部承継の選択

日本では家族内承継が殆どだったが、ヨーロッパでは比較的早い段階から外部の経営者や投資家への事業売却(M&A)が積極的に利用されてきた。

  • ドイツでは「マネジメント・バイアウト(MBO)」が普及しており、経営者が自社を売却して引退する事例が増えている。

  • フランスではベンチャーキャピタルやプライベートエクイティが中小企業の事業継続をサポートする動きが活発。

4. 公的支援と政策

ヨーロッパの多くの国では、事業承継を支援する政策が整備されている。

  • 税制優遇措置:事業承継に伴う相続税や贈与税の負担を軽減する仕組みがある(例:ドイツでは事業継続を条件に大幅な税優遇)。

  • 専門機関の設立:中小企業支援機関や商工会議所が事業承継のコンサルティングを提供。

日本との主な違い

  1. 承継手段の多様性

    • 日本では家族内承継が長らく主流だったが、ヨーロッパでは外部承継や売却が早くから一般的だった。
      日本ではここ10年ほどで急速にM&Aが普及してきている。

  2. 政策とインフラ

    • ヨーロッパでは高齢化問題への対応として、公的機関や民間セクターが協力して早くから事業承継問題に取り組んでいるが、日本では近年ようやくこうした仕組みが整ってきているところ。

ヨーロッパと日本の事業承継問題には共通点もあるが、対応策や文化的背景の違いから、その解決アプローチには違いがある。

とはいえ基本的にはM&Aが重要な選択肢となることには違いなく、日本ではその浸透がだいぶ遅れたが、現在急速に広がっているところ。
その急速さ故に、環境整備が追い付いておらず、近年様々な問題が生じてしまっているのも事実。

事業承継問題の解決に当たっては、引き続きM&Aが重要な選択肢とはなるものの、その品質等の環境整備が今後の課題。
良い環境作りのために、質の高いサービス提供を引き続き心がけていきたい。

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