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同じ支払額でも、実質的な価格が変わることを数字で説明する【M&A日記】

買収側でM&Aを見たときに、同じ支払い額でも、支払い方によって実質的な価格が変わることがある。

最も多く使われている方法としては、譲渡対価の一部を退職金として支払う方法。
譲渡価額が10億円だったとして、この一部を退職金として支払うと、売主にとっては手取りが増えることがある。
詳細はこちらの記事で。
実は、これには買い手にもメリットがある。

例えば、総額10億円の内5千万円を退職金として支払うことで、売主にとっての手取り最大化が実現されるとする。
ということは、株価は9.5億円、退職金は5千万円となる。
9.5億円は買い手が支払うが、5千万円の退職金は譲渡対象企業から支払われる。
この5千万円は損金算入が可能となるので、実効税率30%と仮定すると、1500万円分の税金圧縮に繋がる。
買い手としては、10億円-1500万円=9億8500万円で実質的には買収できるということになる。

もう一つ。
のれんの償却がある。
のれんについてはこちらの記事で

日本の会計基準では、のれんは20年以内に償却することが求められる。
しかし、これはあくまで会計上の話で、税務上は、のれんの償却は損金として認められない。
株式譲渡の場合は。

事業譲渡の場合には、のれんと同じ性質の資産調整勘定が発生する(一応要件ありなので、実行の際にはM&A会社に要確認)。
これには60か月の償却と損金算入が認められているため、のれんの大きなM&Aの場合には、買い手にとってはとても大きな効果が出る。

例えば時価5000万円の資産を用いて展開されている事業を3億円で買収するとする。
受け入れ資産の時価との差額2.5億円を60か月で償却できるので、2.5億円×実効税率30%=7500万円の税金圧縮効果が出ることとなり、実質2億2500万で買収できたということになる。

但し、事業譲渡の場合には、売主の税務が増加する。
株式譲渡は譲渡益課税が20%+復興税だが、事業譲渡の場合には通常の法人税がかかってくる。
この売主が税務を多く負担する分、買い手が得をするという考え方になる。

他にも考え方を変えることで、実質的な価格が売主や買主にとって変わることが色々とある。
なので、M&Aにおいてはスキームの検討はとても重要だ。

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