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思想による殺人……犯した罪は許されるのか?ドストエフスキーの『罪と罰』①
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第2作目には、ドストエフスキーの『罪と罰』を取り上げます。
ドストエフスキーといえば、近代文学を代表する世界的文豪です。
同時代に活躍したトルストイと並び、ロシア文学の世界的存在感を一気に引き上げた立役者でもあります。
長編が多く、内容も難解だと言われていますが、教養としては概要だけでも知っておきたい名作の数々!!
『罪と罰』と共に代表作として有名なのが、『カラマーゾフの兄弟』です。
今回は、話の内容が比較的分かりやすく、考えさせられる議論もしやすい『罪と罰』の方をピックアップさせていただきますね。
※あらすじは、工藤精一郎 訳『罪と罰』(新潮文庫)等を参考に、著作権に抵触しないように要約・リライトしたものです)
それでは、『罪と罰』の世界へ入っていきましょう!
『罪と罰』―思想犯の罪と許しをキリスト教観点から描く世界的傑作
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フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(1821~1881)
ロシアの小説家。
モスクワで生まれ、ぺテルブルグの陸軍中央工兵学校を卒業後、工兵隊勤務を経て、文筆活動に入る。
『貧しき人々』で文壇に登場するも、思想犯としてシベリア流刑・兵役を科され、約十年間執筆活動を中断。これが後の創作に影響を与える。
極端で冷酷な理性主義が生み出す不幸と、キリスト教的な宗教的救いを描いた作品が、世界中の文学者・思想家に影響を与えた。
代表作品:『カラマーゾフの兄弟』『白痴』『悪霊』『未成年』など
【書き出し】
七月はじめの酷暑のころのある日の夕暮れ近く、一人の青年が、小部屋を借りているS横丁のある建物の門をふらりと出て、思いまようらしく、のろのろと、K橋のほうへ歩きだした。
【名言】
「神が存在しないならば、すべてが許される。」
「あなたはなんてことを、いったいなんてことをご自分にたいしてなさったんです!」
「十字路へ行って、みなにお辞儀をして、大地に接吻(せっぷん)なさい。あなたは大地にたいしても罪を犯したのです。それから世界じゅうに聞こえるように言いなさい、私は人殺しです! と」
【あらすじ】(前編)
ぺテルブルグに住む青年ラスコーリニコフは、金貸しの老婆アリョーナが住むアパートを訪れていた。
貧乏のため大学を辞めた彼は、亡き父親の形見の銀時計を質草として、金を借りに来たのだ。
この訪問は、「ある恐ろしい計画」の下見も兼ねていた。
この翌日の晩、彼は偶然、老婆アリョーナと同居する妹のリザヴェータが次の日の晩に外出し、アリョーナが一人になることを知る。
さらに、ひと月ほど前に聞いたある会話を思い出した。
ある安料理屋で、将校と大学生が、金貸しの老婆アリョーナについて話していた内容だ。
「一方に何の価値もない有害な老婆がいる。
一方に財力の援助がないばかりに空しく挫折する若々しい力がある。
やつを殺して金を奪い、その金で全人類への奉仕に身を捧げられないか。
一個の些細な犯罪は、数千の善事で償えないものかね?」
彼は、これを「啓示」だと感じていたのを思い出した。
その翌日、「計画」決行の日。
ラスコーリニコフは、丹念に紐で結わえた偽の質草を持ち、斧を外套に忍ばせて老婆を訪ねた。
老婆が紐を解こうとする間に、彼は斧を振り下ろして殺害した。
そして、金品を物色している最中に帰ってきてしまった妹リザヴェータをも殺してしまう。
その翌朝、彼は突然、警察に出頭を命じられる。
恐怖で自暴自棄になったが、命令の理由は、下宿の借金の返済に関することだった。
ただ、警察署からの帰り際、署内で老婆殺害について話されているのを耳にする。
ラスコーリニコフは自宅に戻り、盗品を持ち出して、人気のない空き地の石の下に埋めると、安堵して笑い出してしまった。
そして、自宅に戻って意識を失った。
精神が不安になっていたのだ。
四日間ほどがたって、ラスコーリニコフは正気を取り戻した。
そこへ、友人のラズミーヒンや、彼に呼ばれてやって来た医師が入ってきた。
ラスコーリニコフは神経症と診断されていた。
さらにそこに、彼の妹ドゥーニャの婚約者ルージンが、近くに越してきた挨拶に現れる。
老婆殺しの事件を話題にしたところ、ラスコーリニコフが激怒し、彼はその場から追い出されてしまう。
ラズミーヒンらは、ラスコーリニコフが事件関連の話題にだけ過敏に反応する姿に気づいていた。
その夜、ラスコーリニコフは一人になりたいと外出する。
事件現場の老婆の家を訪れたあと、通りで知人のマルメラードフが馬車に轢かれているのを発見。
自宅まで運んだが手遅れで亡くなってしまう。
ラスコーリニコフは母からの仕送りをマルメラードフの遺族に与え、葬式と法事を行うよう伝えた。
マルメラードフの娘ソーニャは信仰深かったが、家が貧しいため、心ならずも身を売って金を家に入れて暮らしていた。
翌日、ラスコーリニコフの母と妹のドゥーニャが、彼の家にやって来た。
そこに、マルメラードフの娘ソーニャもやって来た。
そこに、マルメラードフの娘ソーニャもやって来て、慎ましやかな礼儀正しい物腰で、マルメラードフの葬式と法事の日を伝えた。
それを見た母は、ソーニャが彼の大切な人になると予感する。
一同が解散したあと、ラスコーリニコフは、殺された老婆に質草として預けた時計の回収を相談するために、ラズミーヒンの親戚である有能な予審判事、ポルフィーリイを訪ねた。
そして、彼にこう言われて論戦となる。
「新聞に掲載されたあなたの論文を読んだ。あらゆる人間が『凡人』と『非凡人』に分かれ、非凡人は、犯罪を行い法律をも踏み越す権利を持っている、という理論は興味深い」
ラスコーリニコフは応戦した。
「非凡人が法律を犯す権利を持つのは、全人類のために救済的意義を有する思想の実行が、法律を犯すことを要求する場合にのみ限ります。
マホメットやナポレオンなどの非凡人は、流血の惨にすら躊躇しなかったでしょう?」
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