史上最年少での芥川賞を受賞した問題作――石原慎太郎の『太陽の季節』②
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1月第1作目には石原慎太郎の『太陽の季節』を取り上げます。
石原慎太郎といえば、長らく東京都知事を務めていたイメージですが、現役大学生・史上最年少での芥川賞を受賞するという華々しい経歴を誇る作家でもあります。
『太陽の季節』―無軌道で不道徳な若者の生態を真正面から描いた話題作
『太陽の季節』は、1955(昭和三十)年、文芸雑誌「文學界」七月号に新人賞受賞作として発表されました。
当時、石原慎太郎は一橋大学在学中の大学生で、この作品が文壇デビュー作でした。
翌年、『太陽の季節』は第三十四回芥川賞を受賞。
当時史上最年少での芥川賞受賞となり、爆発的な人気を博します。
同時に、作品の倫理性をめぐっては、社会的にも賞賛と非難の嵐が巻き起こる大事件となりました。
石原慎太郎(1932~2022)
【書き出し】
竜哉が強く英子に魅かれたのは、彼が拳闘に魅かれる気持と同じようなものがあった。
それには、リングで叩きのめされる瞬間、抵抗される人間だけが感じる、あの一種驚愕の入り混じった快感に通じるものが確かにあった。
【名言】
「乾き上った季節に、獲物は案外多かった」
「何故貴方は、もっと素直に愛することが出来ないの」
※あらすじは前回の記事をご参照ください。
【解説①】
・倫理的問題作とされながら、新鮮さから目が離せない作品
『太陽の季節』が発表された時期は、ちょうど終戦から十年後の日本社会です。
青年たちは夢を失い、窮屈で退屈な日々に、行き場のない反抗心を持っていました。
そんなときに登場した、既存社会の秩序・道徳に反逆し、享楽的生活を送る不良少年の物語。
発表されるやいなや、人々に新鮮なショックを与え、同世代の青年たちには羨望の眼差しで迎え入れられました。
作品の倫理性を巡っては社会的にも議論が巻き起こる異例の事態に。
芥川賞の選評者の一人だった井上靖は、「問題になるものを沢山含みながら、やはりその達者さと新鮮さには眼を瞑ることはできないといった作品であった」と述べています。
『太陽の季節』が芥川賞を受賞した1956年度の経済白書には、「もはや戦後ではない」という文言が記され、まさに新たな時代の到来を告げるブ―ムを巻き起こしました。
この作品のストーリーは、石原慎太郎氏の弟である石原裕次郎氏が彼の仲間の噂話として、湘南での生活を兄に聞かせた話が題材となっているそうです。
・弟・石原裕次郎主演で映画化⇒裕次郎は伝説のスターに
「太陽の季節」は1956年に日活によって映画化。
著者の石原慎太郎の弟・石原裕次郎氏は「太陽の季節」で主演俳優デビューし、日本映画界のスターとなります。
原作者である慎太郎氏も映画「太陽の季節」に出演しており、その際の彼の髪型が「慎太郎刈り」として流行しました。
また、『太陽の季節』で描かれる若者のように、特に夏の海で無秩序な行動を取る若者(慎太郎刈りにサングラス、アロハシャツの格好をしている不良集団)のことを指す「太陽族」という言葉が流行語となりしました。
・一体どの辺が倫理的にアウトなのか?
倫理的にアウトな問題作、と言われると、一体どの辺がアウトなのか?と気になってしまいますよね。
しいて言えば、一番ショッキングなエピソードはやはり、
「主人公・竜哉が英子を妊娠させ、4か月を越えて中絶させたため、英子は帝王切開となり、手術後、腹膜炎を起こして死んだ」
というラストでしょうか。。
うーん、センセーショナルすぎて忘れられないエピソードではありますが、、もっと他になんとかならなかったの……と個人的には思ってしまうお話ではあります。
それから、退廃的な性表現の嵐……私のこの記事ではとても引用できないような表現ばかりなのでお察しください。💦
ただまあ、とても有名な一節があるので、そこだけノーコメントで載せておこうと思います。
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