友情のために命を懸けられるか?太宰治の『走れメロス』③
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9月第2作目には、太宰治の小説、『走れメロス』を取り上げます。
『走れメロス』―友を信じ、命を懸けられるか?男たちの友情物語
太宰治(1909~1948)
【書き出し】
メロスは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の王を除かねばならぬと決意した。
メロスには政治がわからぬ。
メロスは、村の牧人である。
笛を吹き、羊と遊んで暮らして来た。
けれども邪悪に関しては、人一倍に敏感であった。
【名言】
人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。
一番きらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。
私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい。
【解説】
『走れメロス』は太宰治の作品のなかでも比較的明るい短編小説です。
国語の教科書でも扱われているため、なじみのある方も多いのではないでしょうか。
作品の最後に、「古伝説とシルレルの詩から」と書かれていることから、この作品は、ギリシャ神話のエピソード(『ダモンとピュティアス』)と、ドイツの詩人・シラーの詩(『人質』)をもとに創作されたことが分かっています。
日本人の書いた作品なのに、どこか世界文学を感じさせるようなスケールの大きさも、大衆に好まれた理由の一つかもしれません。
お互いを信頼し、命を懸ける美しい友情物語
処刑されるのを承知の上で、命懸けで友人との約束を守るメロス。
メロスを信じ、身代わりとなって待つセリヌンティウス。
その二人の友情の姿に、人の心を信じられない王が、信頼することの大切さを学びます。
普通の人であったら、メロスのように、死ぬことが分かっているのに、友人のために一生懸命、走って帰ることはなかなかできないでしょう。
また同じく、いくら戦友とはいえ、一歩間違えば死の危険にさらされるのに、セリヌンティウスのように待つのも難しいことです。
だからこそ、二人のひたむきな友情の姿によって、王の心が変わり、読者に感動を与えるわけです。
「お互いを信じ合う心が奇跡を起こす」というメッセージは、現代の私たちにとっても必要な考え方ですね。
原点は「古代ギリシャ神話:ダモンとピュティアス」
物語の本筋自体は、太宰治本人のオリジナルではなく、古代ギリシャ神話の時代から語り継がれる伝説のエピソード。
すでに何千年も語り継がれている伝説というところを見ても、多くの人の心を打つテーマではあったのでしょう。
この伝承をテーマに選び、作品として昇華したところが、太宰治の最大の功績かもしれません。
『走れメロス』の舞台裏……悲惨な借金生活から生まれた友情物語
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