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外資系翻訳あるある・訳すと長い言葉になってしまう
UI の翻訳でよく起こるのが、訳したら原文よりも言葉が長くなってしまい、用意されているスペースに収まらなくなる問題です。
そして、これ、日本語とドイツ語でよく起こる現象です。大学時代ドイツ語の授業をとっていましたが、確かに長い単語が多かった気がします…。
コーディングの段階でボタンの横幅を決めていたりなんかすると、各国語の訳を入れた時にスペースが余ってしまったり、逆にボタンから文字がはみ出てしまったり、あるいはすべてが表示されなかったりするのですが、さすがに最近はあまり見なくなりました。これはレスポンシブデザインが一般化してきたこととも多いに関係ありそうなので、ありがたい話です。
レスポンシブデザインとは、様々なデバイスのディスプレイ幅に対応するよう作られたデザインのことです。PC、スマートフォン、タブレットと、それぞれの幅用の専用レイアウトを作るのではなく、どんな幅であっても快適に閲覧できるよう自動的に調整されるようデザインされているウェブサイト、増えてますよね。PC のウェブブラウザで横幅をドラッグして変更すると、ボタン位置や表示される画像などレイアウトがぬるぬるっと変化するのはこのおかげです。
文章が途中で切れてしまうようなケースはさすがに減ったとはいえ「なんとなく文字多いなー」「スペースに余裕がないなー」という見た目になってしまうことは今も起こります。そしてその例の一つが、「1 行で完結してほしいのに、次の行に文章がこぼれてしまう」ケース。
また古巣の例を挙げますが、以下、Evernote のウェブサイト。
どうでしょう。
EVERNOTE が選ばれる理(改行)由!おしい!!これが 1 行で収まったらほんとにきれいなのに!(気にならない人には気にならないのかもしれませんけれども…。)
実際にこのように表示されてしまうことがわかった場合、いくつかの対処方法があります。
1. 訳語を変える
2. 文字サイズを変える
3. 改行位置を変える
1. 訳語を変える
訳語を変えるのは比較的簡単ですが、オリジナルの意味から若干の変更が必要になることもあるでしょう。
上記のケースでは、英語のオリジナルは「Why Evernote」です。訳は自然な日本語になるよう工夫されています。例えば「選ばれる理由」に変える、といった可能性があると思います。Evernote のウェブサイトを見ているのでわざわざ 「Evernote が」を入れなくても意味が通ると思われるからです。ただし、厳しい会社では、会社名が入っている場合は訳語でも社名を入れなければいけない、といった縛りもあるかもしれませんね…。その場合は、「Evernote 人気の理由」「Evernote 人気の秘密」なども考えられます。
2. 文字サイズを変える
文字を少し小さくすれば、全部を 1 行に収められそうです。簡単そうですが、意外とそうでもありません。なぜなら多くの場合スタイルシートでその文字ポイントが指定されているからです。
多くの会社ではウェブサイトの管理にCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)と呼ばれるシステムを使っています。イメージとしては、ウェブフォームのようなページに掲載したい情報を入れていくと、自動的にウェブページが作成される、といった感じです。文字の大きさ、レイアウトなどはレンプレートごとに決まっていますので、この部分だけ日本語の表示を小さくする、といった特別扱いをするのはなかなか大変なのです。
ちなみに、日本語と英語では、同じポイント数でも日本語のほうが大きめに表示されるので、スタイルシートの段階で日本語のポイント数は全体的に小さめに指定するべきではないかと個人的に思っています…。
これまた古巣の例を出させてもらいますが、Logitech とその日本法人ロジクールのマウスページの違いです。
一番大きな文字、「マウス」「MICE」に注目してみてください。これ、どちらも h1 のタグがついているのですが、明らかに「マウス」のほうが大きいですよね。
これまた個人的見解ですが、日本語ってあまりに大きい文字で表示されるとマヌケな見た目になるような気がするんです。馬鹿にされているような気になる、というか…。
3. 改行位置を変える
英語をはじめ多くの言語では、単語と単語の区切りにスペースが入ります。このため、単語の途中に改行が自動的に入ってしまうようなことは通常ありません。一方日本語では、単語の区切りにスペースを使用しないため、「さすがにそこで改行するのはちょっと…」(上記の、理由の理と由の間で改行されてしまうケース)、というところで切れてしまうことが多々起こるんですよね。
改行位置を訳者が指定することができる場合もあります。なんですが、先ほどのレスポンシブデザインがここではマイナスに働きます。例えば、PC で見た時には「ここで改行してほしい」という場所が、スマホで見た場合には「そこじゃない」になることがあるからです。というわけで、そう簡単にここで改行してほしい、と指定できるわけでもないんです。
タイ語では、改行位置が変わると文章の意味自体が変わってしまうということもあるそうですから、日本語以上に深刻ですね。言語って本当に面白い!
ちなみに、アップルのウェブサイトはどんなウィンドウ幅でも改行位置が意図したところになるようしっかり指定されています。さすが。