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「バスタブ脳」が世界を変える
バスタブ脳、と言われて、突然なんだろう?と思われたことでしょう。
これは私の造語なのですが、今後の先行き不透明な時代において非常に重要なものの見方であると考えています。
その「バスタブ脳」をご紹介する前に、先に比較対象として「ビリヤード脳」について紹介します。
ビリヤード脳とは出来事の連鎖を因果関係で捉えている状態を表現しています。
キューで白球を打ち、狙い通りに次の球、次の球に連鎖して当たっていく様子を思い浮かべてみてください。
出来事の連鎖をまさに「玉突き」のように因果関係が連なって起こっていくものだと判断しているのが、ビリヤード脳です。
そして、ビリヤード脳でのアウトプットの質は、経験の量や質に依存します。
先に断っておくとビリヤード脳的思考を悪と断じているわけではなく、これも必要なものの見方です。
しかし、今日の環境においてビリヤード脳だけで物事を考え、予測しようとするのには限界があり今後の見通しに対しての精度が非常に下がると痛感しています。
では、「バスタブ脳」とはどういうことでしょうか。
風呂桶、大きな浴槽をイメージしてください。
浴槽に水を張るときに排水の栓を閉じていれば水はどんどんたまっていきます。
また、栓を抜けば、当然のことながら浴槽の水は減っていきます。
このとき、栓が抜かれていても、蛇口から出る水の量が排水量と同じくらいであれば、浴槽の水量は変わらずに保たれることになります。
また、排水量より蛇口から出る水量が多ければ浴槽の水量は増えていく、ということもあり得ます。
これはシステム思考の中でよく使われるメタファーです。
バスタブにたまる水を「ストック」、
蛇口から出てくる水は「インフロー」、
浴槽の栓から排水される水の量は「アウトフロー」と言われます。
この考え方は、ある出来事が何を増やして、何を減らすのか、について着目しています。
そのため、バスタブ脳におけるアウトプットは観察と思考の質に依存します。
それぞれについて説明したところで、ビリヤード脳の限界とはどういうことなのかご説明します。
最近の出来事を例に挙げると、このような連鎖で物事を考えることができます。
例)
ロシアのウクライナへの侵攻が起こる
↓
ロシア産天然ガスが輸入できなくなる
↓
物価高が起きる
↓
インフレが進行する
↓
・・・
過去に似たような事象に相対した経験があると、今後の展開の予想は容易です。
しかし過去にはあり得なかったことを予測することについてはどうでしょうか。
よく、中高年にさしかかると頭が固くなる、などと言われることもありますが、その要因の一つとして「ビリヤード脳」で考えがちということはあるのでは、と思います。
では、バスタブ脳で考えるとは、どういうことなのでしょうか。
ポイントとしては、その行動によって何が失われているのか、もしくは何が増えているのか?という観点です。
以前ニュースで放送されていた出来事をもとにご説明します。
1つ目は「再生可能エネルギーと中国の影響強大化」についてです。
電気自動車の普及、風力発電や太陽光発電などの広まりは、サステナビリティにおいて重要と多くの方が思われるでしょう。
この広まりによって世界的に高まっているストックが、「銅の需要」です。
銅の主要産出国はペルーやチリなのですが、各国の主要な輸出先は中国です。
これから重要となる銅の需要が高まれば高まるほど、世界への中国の影響力も同様に増えていく、という状況が予想されます。
もう1つ挙げます。
コロナ禍と、自然災害の掛け合わせによる農家の危機的状況についてです。
現在は回復傾向なようですが、一時期「干し草不足」によって 乳用牛が飢餓状態に陥るということがありました。
これは、コロナ禍の影響で世界的な物流コンテナ不足が起こったことに関連します。
在宅勤務の拡大や巣ごもり需要の高まりによりパソコン、ゲーム機などに使われる半導体不足が加速しました。
半導体不足自体は2019年の米中間の貿易摩擦に端を発しているのですが、そのことが解消されないままコロナ禍で更に加速したという状況になった訳です。
さて、世界的に物流が混乱するなか、コンテナ船運賃も上昇し、半導体や巣ごもり需要に対応する品目が輸出される一方で干し草の優先順位は下がり、輸入と入手が難しくなった、ということが起きていたということです。
半導体不足の影響は農機具の調達にも及びます。
当然といえば当然のことですが、農機具にも半導体は使用されています。
半導体不足はそのまま農機具生産量低下につながりました。
近年の異常気象で頻繁に発生する水害で故障してしまった農機具を、新たに仕入れることができず、農作物が収穫しきれないということも起こっています。
農作物の収穫が十分されなくなったことの影響は、さて、どのようなことに及んでいくでしょうか。
今回例に挙げた事象は、過去既に起こったことを事例にご紹介しています。それでも様々なことが複雑に重なり影響しあっているさまを実感いただけると思いますが、これから起こるかもしれない事として見通しを立てるのは、因果関係によるビリヤード脳だけでは到底不可能ではないかと思います。
私自身が、その予測が不可能であった一人であり、バスタブ脳で考えることの難しさを痛感しています。
今回の2つの例では共通してコロナ禍が大きな要因となっていました。
未曽有の出来事により「バスタブ」に衝撃が起こったとき、
・いったい何が起こったのか
・何が減って、何が不足するのか
・何が増加し、どんな余剰がおこるのか
・そのことで困るのは誰で、どんなことに困るのか
このように想像していくと、様々なものの見方ができるのではないかと思います。
そして、ストックとして増減するのは、物理的・物質的なものだけではなく、心理的なものも対象になり得るというのも見逃せないポイントです。
あなたの行動は
どんなストックを生み出していますか?
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