私たちに問われている事
5年がかりで書き上げた「ビジョンプロセシング」出版から二カ月が過ぎ、また有難いことに、多くの出版記念のイベントで本書の内容や想いについてご紹介させていただく機会を頂いております。
長い執筆期間を振り返るたび思うのは、表現や方法は変われど、私はずっと同じメッセージを皆さんにお伝えする役割を受け持っていたのだ、ということです。
そのメッセージは、 「複雑性の極まる時代において、私たちに問われている事とは何だろうか?」 ということです。
これは2005年にU理論、そしてシステム思考に出会ってから一貫して変わっていないのですが、話すトーンや文脈は変遷しています。
そして、変遷のきっかけは往々にして社会課題・状況の変化とリンクしていました。
その変化は、大まかに3つの期に分けられるようです。
初めは私がU理論に出会ってから、2010年ごろまで。
U理論でも語られている「3つの複雑性」について、まだあまり知られていなかった時です。「狼が来るぞ」と言ってもまともには取り合ってもらえないような状況でした。
しかし私たちが知らないだけで、薄氷の上を歩いているような時代を生きているのだということを、何とかお伝えしようとしていた時期でした。
大きなポイントの切り替わりは、東日本大震災でした。
未曽有の災害を経て、複雑性ということに関して、多くの人に響き、自分事として聴く方が増えたように思います。
仮にここを第2期と呼称すると、ますます複雑性が際立っていく中で「反U」を辿る状況が増えるだろうと感じていました。
そのため、Uプロセスの社会的実践を行えるチェンジエージェントを増やしていくためには何が求められるのかが、この時期の活動のテーマでした。
さながら、レスキュー隊員を増やすための活動とも言えます。
そしてポストコロナの時期が、第3期でした。
コロナ禍やロシア・ウクライナ間の戦争など、世界が分断に向かっている状態とも言えます。
あまりにも見通しがきかずに思考停止に陥る人が増え、リーダーに負荷がかかりすぎてしまったことによる「燃え尽き」が起きやすくなっています。
レスキュー隊員を増やすのでは、もはや間に合わない。
命を守るためのメッセージとして、 「いつ何時であっても、たとえお先真っ暗な状態であったとしても、自らを力づける未来を創っていくこと」 「そして、そういった未来への向き合い方は可能であるということ」 と、お届けしようとしていると、変わっていったように思います。
「ビジョンプロセシング」の執筆に時間を要したのは、多くは書き直しによるものなのですが、それは第2期から第3期に跨って執筆していたからに起因すると気づきました。
「誰かや何かに貢献したいと願う人の『それでも』、『もう一歩』を応援したい」
これが長い執筆の末辿り着き、いついかなる時もお伝えしている私の想いです。
出版記念イベントとしては最後となるオンライン対談イベントが9月4日(水)に開催されます。
一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会(BMIA)代表理事 小山 龍介さんとの対談イベントとなります。小山さんとの対談を通して、
・ビジョンをプロセシングするとはどういうことなのか?
・これからのイノベーションのあるべき姿とは?
についてじっくり探求してまいります。
ぜひ奮ってご参加下さい。