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個人と組織が持つシャドーとは?

少し前の話題になりますが、今年も5月23日~28日の日程でインテグラル・ヨーロピアン・カンファレンス(IEC)が開催されました。
IECは、ヨーロッパを拠点としたグローバルコミュニティで、統合アプローチの可能性を最大限に引き出し、世界の変化を加速するための活動を行っており、去年は私も「インテグラル・チーミング "SOUND “メソッド」というテーマで登壇させていただきました。

 今回は、今から3年前の2020年5月27-31日に開催された回にはなるのですが、非常に多くあったコンテンツの中から特に興味深いと思ったキーノートをご紹介します(連載・全3回)。

世界のエグゼクティブ層に、心理療法やコーチングを組み込んだコンサルテーションを提供している、キム・バルタとテリー・オフェロンの二人による、「Harnessing the power of organizational shadow(組織のシャドーの力を活用する)」というキーノートです。

彼らは、私たちが持っている、取り入れ(イントロジェクション)と投影(プロジェクション)という心理機能のために、個人や社会を、ありのままではなく、歪めて見ていることがある。
この歪みの部分、つまり、シャドーに対するアウェアネスを高めることが、様々な問題解決の端緒となるのではないかということを、いくつかの事例を交えながら解説してくれました。

例えば、ある企業のトップが「うちの技術部門は効率が悪い」と言ったとします。
それを聞いた技術部門のメンバーは、「そうか、自分たちは効率が悪いんだ」とその発言を鵜呑みにして、あたかも本当に自分たちがそうであるかのように振る舞いはじめる。
これが、「取り入れ」です。

そして、技術部門のメンバーは、自分たちがいかに非効率なのかということを、外の世界に映し出します。
これが、「投影」にあたります。

実際には、この技術部門は、非常に効率の良いチームであるかもしれません。
にも関わらず、トップが言ったことを鵜呑みにして、「非効率な自分たち」として振る舞い始め、それを周囲に投影して、本来は必要のない採用を行ったり、業務フローを変更したり、時間やコストを費やして、組織を間違った方向に導いてしまうことがあるのです。

読者の皆様の中には、「実際に、同様のことが、自分たちの組織で起きているかもしれない・・・」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

こうしたシャドーというものは、個人レベルのものから社会的なレベルのものまで、様々な場面で本当にたくさん見られるものだと思います。

では、どうすれば私たちは、こうしたシャドーに気づくことができるのでしょうか?キムとテリーは、「最初に、その感覚がどこから来ているのかに注意を向けることだ」と言います。

先ほどの例では、技術部門のメンバーが「自分たちは効率が悪いという感覚は、どこから来ているのだろうか?」と自問し、そして、それがトップの発言がきっかけだったと気づいたら、「果たして、その発言は正確な情報なのだろうか?」と、更に問いを深めていくプロセスが重要だということです。

「シャドーを扱う」というのは、まさに自分たちの前提を疑うことなので、口で言うほど簡単なことではありませんが、少なくとも、私たちは、自分たちが思っている以上に、外からの情報を疑いなく取り入れ、それがあたかも真実であると思い込みやすいということを、自覚することは極めて大切だと思います。

そして同様に、自分たちが外に発信する情報が、自分たちのシャドーから生まれたものでないかを、謙虚に問い続けることが必要なのだと思います。

<次号に続く>

                                   
「あなたが信じている感覚は、どこから来ているものですか?」       

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