【未来予測】AI活用は[幻滅期]に入る,しかし企業はAI利用をやめてはならない -生成系AIと「コスト高」
今回はAIに関する僕の未来予測を書きます。僕が最も伝えておきたいことは後半にありますので、ぜひお役立てください。
以前、Chat-GPTを導入した企業の大半は、実はChat-GPTをうまく使いこなせていない、という記事を書きました。
生成系AIのビジネス活用において、Chat-GPTを使いこなすことは、実はそう簡単ではありません。プロンプトを入力するにもコツが必要です。
やってみると意外と手間がかかり、また難しいので、面倒になって使わなくなってしまう、という人が多いのです。
「Microsoft 365 Copilot」がリリース
そんな中、11月から、Office365に生成系AI機能が徐々に搭載されます。
これにより、ワードやエクセル、パワーポイントやメール作成において、Chat-GPTが組み込まれることになり、ワードの文章、Excelの表・マクロ、パワポの資料作成を、AIがサポートしてくれます。
僕は、ビジネスでのAI活用には、MS-Officeのような、グループウエアと呼ばれる日常業務のソフトそのものにAIが組み込まれるのが一番手っ取り早いと考えていたので、実装が始まるのを楽しみにしています。
「+30ドル/月×従業員数」が払えるか
でも、大きな問題があります。それは利用料金です。
従業員1人当たり、毎月30ドル、つまり4,500円ほどが今のOffice365サービス利用料金に「上乗せ」されます。ずいぶん強気の価格設定です。
1万人の大企業に導入したら、月に4,500万円、年間で約5億円の追加投資が必要です。MS-OfficeでAIを使うのに、これだけのコストを企業は払うのでしょうか? これは判断が難しいと、僕は感じています。
生成系AI導入のコスト対効果
生成系AI導入のコストについて、まず僕の例で述べると、Chat-GPTの有料版は毎月20ドル。僕は、5アカウント使うので、毎月100ドルをOpenAI社に支払っています。AI中山の開発などで、他のAIサービスも利用していますので、AI関連だけで毎月20万円の支払いがあります。
まさに、「AI破産」状態ですね 笑。
さて、僕のことはさておき、企業がAIを使う場合において、この「コスト問題」は今後、大きな課題になると思います。
「Microsoft 365 Copilot」の利用料が30ドルというのは、企業にとっては、かなり大きなコストになります。Chat-GPTをビジネスで利用するにも、最新のGPT4は利用料金が高いのです。
Chat-GTP4のコストは「GPT3.5の10倍」
高い、とだけ書かれてもピンとこないと思いますので、事例で述べていきます。
例えば、ネット販売業務で、Chat-GPT4を使った、AIチャットボットで、顧客対応を自動化するとします。そこで、お客さんとの相談で1件当たり、10分程度の会話をするとしましょう。
その場合、概算ですが、おそらく、1回のやり取りで300円~500円のコストはかかります。企業版のChat-GPTは、Chat-GPT Plusのような月額20ドルといった固定料金ではなく、従量課金なのです。入力する文字数で課金されます。
例えば売り上げが2,000円、粗利が400円の商品を販売するのに、顧客対応で、OpenAI社に500円も支払ったら、商売が成り立ちませんよね?
ですので、今は、応答速度も考えて、どの企業もChat-GPTの3.5を使わざる得ません。GTP3.5だとGTP4の1/10の料金で使えるからです。これなら、何とか「ぎりぎり」使えます。
AI機能追加はコスト的に厳しい
「Microsoft 365 Copilot」が毎月4,500円についても、そのベースとなるMS-Officeに、プランで違いはあれど、大体、毎月2,000円~3,000円支払ってます。そこにAIを使おうとすると、プラスで約4,500円かかるのです。
ワード、エクセル、メール、スケジュール管理などのMSオフィスの利用料金よりも、Chat-GPT機能を追加するAIの利用料金の方が高い。
この料金を支払ってまでAIを利用したいと、企業のIT部門は、経営者は、思うでしょうか?
僕の今までのビジネスの感覚だと、残念ながら「難しい」と思います。
AIへの過剰な期待、その反動
大企業ではどこもChat-GPTの導入を始めています。既に数百社使っています。そして既述の通り、一部の企業を除けば、大半の企業において、Chat-GPTは、ほとんど使われていないのが現状です。
感覚的にいうと、おそらく、一般的な企業だと、従業員の5%程度しか使いこなせていないでしょう。
そんな状況を目にしている経営陣、情報システム部門が、リリース間近の、月30ドルもする「Microsoft 365 Copilot」を全社で導入するかというと、導入の意思決定は難航していると思います。
「Chat-GPTは使われていない。生成系AIを社内に導入すれば奇跡が起きると思っていたが、期待外れ。Microsoft 365 Copilotを導入しても、同じことだろう。価格が高すぎる。導入しない」と考えてもおかしくありません。
AI利用は「幻滅期」に入る
AI利用については、ガートナー社のハイプサイクルの予想も見ておきましょう。
生成系AIのハイプサイクル -過度な期待
ハイプサイクルは、次の5つのフェーズに分類されます。
①黎明期
②「過度な期待」のピーク期
③幻滅期
④回復期
⑤安定期
Chat-GPTに代表される生成系AIは、現在、②「過度な期待」、上のグラフでは頂点の位置にあります。そして生成系AIは「幻滅期」に入っていく。
早ければ来年にでも入るかもしれない、と僕は思います。述べてきたように、期待値が高すぎ、利用コストも多額だからです。
「幻滅期」後、景色は一変する
しかし大切なのは、ここからです。
「幻滅期」に入って、多くの企業がAI利用に関するコストを削減しても、AIを使い続ける企業、使い続けるビジネスパーソンは、着実にAIを使いこなす能力を高めていくことでしょう。
そして僕は、この「幻滅期」は数年で終わると思います。
下のリンク記事で詳しく述べていますが、やがてAIが「弱いAI」から「強いAI」に変化する兆しが見えてくるでしょう。そのとき「幻滅期」は終焉を迎える。そして景色は一変します。
「幻滅期」から「回復期」へ、そして、「強いAI」すなわち、汎用型人工知能:AGI、に変貌を遂げたとき、AIは「安定期」を迎える。そしてヒトとAIの共存社会が到来するでしょう。
AIを使い続けた企業が生き残る
この「安定期」、「ヒトとAIの共存社会」が到来するのは、おそらく2030年頃だと、僕は想定しています。
そして、「ヒトとAIの共存社会」においては、AIを使うヒト、AIに使われるヒトに二分化されるということは以前述べました。
「AIとの共存社会」になったときに、生き残るのは、「幻滅期」でもAIを使い続けた企業です。そしてAIを使い続けていたビジネスパーソンこそが「AIを使うヒト」になることでしょう。
生成系AIを使い続けるか否かが分かれ道
だから、Chat-GPTを使い続けなければならない。そして、使いこなせるように壁を乗り越えなければならない。
この先、おそらく2030年ごろに訪れる、「AIとヒトの共存社会」において、生き残るために。
そんな未来を僕は毎日想起しつつ、AIを使っています。