ホルモン炎上カメラマン
炭火七輪の宇宙に浮かぶ、ホルモンという名の小惑星
ホルモンと炭火七輪。これがなければ今の私は存在しない。他の何にも代えられない、私の魂を強く揺さぶる存在。これは私の活動の証。感じた全てを全力で、一枚の写真と文章に、全身全霊で閉じ込める。この想いを、ずっと忘れないように。
戦場のホルモン炎上カメラマン
ここはとあるホルモン店。木造家屋のダクトから狼煙が上がると、客が列を成して押し寄せる。弾丸のごとく肉と酒が飛び交い、客席の至る所で七輪が炎上し、店員が即座に消火活動を行う。うっかりタレで服を汚せば、洗剤のついたおしぼりで救護される。喰う者も喰われる者も常に戦い。まさにここは戦場だ。そして私は戦場カメラマン、ホルモン炎上カメラマンなのだ。
むき出しのダクト、少し焦げた木のテーブル、着席した時のしっくり感がたまらない。不安定な椅子、熱で歪んだメニュー、流れる懐かしJーPOP。炭火七輪の脂の香り、ずっと深呼吸していたい店の空気。感慨無量。そう、ここは胃袋の実家だ。
ホルモン、シマチョウ、マルチョウ、これぞ男の三種の神器!
この肉を前にする時、そこに老いも若きも、男も女も関係ない。ただ勇ましく、胃袋の持てる力の限り、その肉に無心で喰らいつくのだ。
網上の美学
ホルモン店に行く前日、肉のオーダーと戦略を立てる。野球で言うなら私は監督。なじみの店が公式戦なら、伝説の名店は日本シリーズだ。テーマに沿って肉種を選び、スタメンを完璧にそろえる。今日は何が新鮮か?欠場選手が出るかもしれない。周りの卓の肉を見て、臨機応変に戦略も変える。私は投手で網はマウンド。網上での振舞いにも美学がある。バッテリーを組む相手も重要だ。今日も優秀な選手たちが、美しくグラウンドにそろったようだ。
太網、細網、ガスロースター。どんな舞台でもホルモンは美しい、そして情熱的に燃え上がる。
考えるな、感じろ! 燃えよ!ホルモン!!
一万人に理解してもらえるより、敬愛する、たった一人に声が届けばそれでいい。万人受けする薄っぺらな言葉で何かを言うなら、それは本当の自分の声じゃない。そこに自分の魂はない。だから今日も、胃袋の底から叫び続ける。全身全霊、力の限り。そしていつか、この狂気じみた叫びに気付いた他の誰かが、ちょっと振り返ってくれたらそれでいい。これは私の共鳴する魂の叫び!
東に炭火七輪あれば、行ってホルモンを炎上し、西にガスロースターあれば、行ってホルモンを炎上する。
そういう肉を、私は撮りたい。