年間飲酒量まとめてみた! 私は酒を飲み過ぎているのか?
今回は、4年に渡り記録してきた、私の飲酒量を総括したい。
これまでは、酒を飲んだ量(杯数や本数)で、飲み過ぎかを判断することが多かったが、缶チューハイを例にとっても、3%〜9%まで度数は幅広い。その1本から摂取するアルコール量は大きく異なる。
2023年11月22日に、厚生労働省が取りまとめた「飲酒ガイドライン案」では、酒に含まれる「純アルコール量(グラム)」で、健康へのリスクが示されている。
生活習慣病のリスクを高める量は、1日あたり男性40g・女性20g以上。一般的なビールの500ml缶でいうと、男性2本・女性1本以上に相当する。
この記録を開始した当時は、高アルコールの缶チューハイが大ブームのストロング戦国時代。適正飲酒の声も、いまほど強くなかった。しかし、ここ数年で、その流れも大きく激変。適正飲酒・低アル・ノンアルの時代がやってきた。私の飲酒量だけでなく、ビール大手各社の取り組みがどう変化したのかも合わせて見ていこう。
私の年間飲酒量
この4年間で、私の飲酒量は大きく減少した。
といっても、つらい断酒をしたわけでもなく、世の中の風潮や販売される商品の変化とともに、次第に減っていった感じだ。
飲んだ量はもちろん、そこに含まれる純アルコール量自体も大きく減りつつある。飲酒ガイドラインで示されるように、容量(リットル)ではなく、純アルコール量(グラム)で見ることが重要だ。
純アルコール量は、飲酒量を記録するアプリを使うと自動的に計算できる。アプリは、容量やアルコール度数が、自由にカスタマイズできるものがおすすめだ。Excelなどのスプレッドシートに記録してもよい。その場合の「純アルコール量の計算方法」は、記事の後半で解説しよう。
まずは、私の「年ごとの飲酒量」と「飲酒に対する世の中の変化」を、以下にまとめてみた。
■ 2018〜2019年(調査開始以前)
時は高アルRTD全盛期のストロング戦国時代。度数9%のストロング系飲料が大ブームだった。安くて飲みやすくて、おいしくて楽しい。そんな魅力的な酒があふれていた。
適正飲酒の声もまだ小さく、大手各社は、ストロング系飲料の無料サンプルをバンバン配布してくれた。コンビニで引き換えできるクーポンや、街頭配布もあった。旧Twitterの写真投稿キャンペーンでは、ストロング系飲料6缶パックが2度も当選した。
ネットでは「薬物もサンプルからといいますからねぇ」などと皮肉が出るくらい、大手各社は太っ腹だった。振り返ると、年間1ケース近くの試飲缶を受け取っていた。
ビール工場見学は有料化するところもあったが、ほとんどがまだ無料で、ツアーの最後に、工場直送のできたてビールが3杯(1リットル近く)も飲めることが魅力だった。
SNSでは飲酒界隈と盛り上がり、いつも私はよっぱらっていた。不適正かつ不健全な日々だったが、それは楽しい時代でもあった。
■ 2020年(103.6L・5648g)
この頃から、ストロング系飲料の依存性や健康への影響について、問題視されるようになった。それに伴い、私も飲酒量の計測を開始。はじめて自分の年間飲酒量を知ることになる。
年間103.6L、多いときでは月に10Lも飲んでいた。10Lは350ml缶でいうと28.6本。ひと月1ケースちょっとを飲んでいた計算だ。
これが多いか少ないか?
まずは、世界の統計と比較してみよう。
▷ 『国別一人当たりビール消費量』
キリンホールディングスでは、毎年12月に「世界主要国のビール消費量」というレポートを発表している。そのなかに『国別一人当たりビール消費量』という統計がある。
レポートは「前年のもの」が取りまとめられるため、この時点で見ていた、2019年の統計で話をしよう。
1位:チェコ(188.6L)
2位:オーストリア(107.8L)
3位:ルーマニア(100.3L)
4位:ドイツ(99.0L)
私の年間飲酒量は 103.6L なので、世界の2位と3位で争っている状況だ。不覚にもビール大国ドイツには、勝ってしまった。
この統計はビールに特化したものだが、私の飲酒量は、ビール以外のRTD・日本酒・ワインなども含めた合計だ。すべてのアルコールを含めたら、世界はもっと飲んでいるかもしれない。
だが、そこで安心していいわけでもない。ビール単体と比較しても、世界のベスト3と競い合っている状況はいただけない。とにかくこのランキング上位から外れることを目標にしよう。
53位:日本(38.4L)
※日本は発泡酒・新ジャンルも含む
ちなみに日本は 38.4L。意外と少なかった。仮にビール以外の酒を含めたとしても、100Lには及ばないはずだ。私は、日本の「一人当たり」の倍以上を飲んでいる可能性がある。
▷ 緊急事態宣言が発令
私が酒を飲みまくっていた2020年は、飲酒界隈にとって暗黒時代の始まりでもあった。新型コロナウイルス感染症という得体の知れないものが突如としてあらわれ「緊急事態宣言」が発令された。
住民には、不要不急の外出自粛。飲食店には、酒を提供する場合は休業要請が出され、酒を出さない場合でも時短営業が求められた。
酒の提供が禁じられた理由は「飲酒をすると注意力がなくなるから」という話だった。もはや感染症対策は、車の運転と同じだ。飲んだら事故が起こる。私は家で酒を飲み、そのまま部屋に閉じこもった。
▷ 「Go To Eat」で、酒を飲みまくる
感染症の流行がひと段落した頃、今度はとんでもなくお得な飲み放題を提供する飲食店が続出した。経済の再興を図る「Go To Eat キャンペーン」も相まって、人々は酒を飲みに向かう。まるで厳しい制限をされていた酒の大逆流が起こったかのようだった。
クラフトビールにハマっていた私は、ビアバーの飲み放題で、あらゆる銘柄を片っ端から飲みまくった。いま思うと「この先の人生で、もうこんなにお得な飲み放題は出てこないんじゃないか」と思うくらいの魅力的な内容ばかりだった。
外出自粛による客離れや時短営業などの影響で、酒を廃棄せざるを得ない状況に迫られる店も多かった。酒のロスをなんとかしたい飲食店と、肝臓の限界までお得に飲んでやろうと意気込む私たち。そこには「適正飲酒」などという言葉は、存在しなかった。
▷ SDGsでは「アルコールの有害摂取防止」も
一方、アルコールに対する厳しい見方は、世界中で強まっていた。WHOや国連も健康リスク要因としてアルコールの有害摂取について指摘していたのだ。なによりSDGsの目標3には「麻薬乱用やアルコールの有害な摂取を含む、薬物乱用の防止・治療を強化する」という一文がある。
これによって、アサヒビールも「スマートドリンキング」を宣言。「飲む人も飲まない人もお互いが尊重し合える社会の実現を目指す」という目標を掲げた。(2020年12月10日 ニュースリリース 参考)
同時にアサヒは、アルコール9%の飲料を一部終売にし、低アルコール飲料の構成比を増やしていく方針に。2025年までにアルコール度数3.5%以下の商品構成比20%を目指すとのことだ。
記事の前半で、ストロング系飲料の無料サンプルをたくさんもらった話を書いたが、実は一番もらっていたのが、アサヒビールの商品だった。それなのに、なんという方向転換! ツッコミたい気持ちも山々だが、この流れについていくしかない。
■ 2021年(92.62L・4520g)
2021年の飲酒量は、年間10L減で終わったが、純アルコール量は1000g減。アルコールの摂取量自体は、だいぶ減ったように思える。
大手各社のRTDは、度数9%のストロング系から、5〜7%の商品にシフトし始めていた。度数が低くても、おいしくて飲みごたえのあるレモンサワーやハイボールが続々と登場していたので、私の純アルコール摂取量もそれに合わせて減っていったのだ。
▷ 度数1%未満の微アルコール飲料が広がる
コロナ禍で家飲みが増えたことによって、アルコール摂取量を気にする人が増え始めていた。2021年は、消費者のニーズにも変化があらわれた。
アサヒビールは、3月30日に、アルコール度数0.5%の「微アルコール」ビールテイスト飲料『アサヒ ビアリー』を発売。続いてサッポロビールが、9月14日に、度数0.7%の『サッポロ The DRAFTY』を発売した。
『アサヒ ビアリー』にいたっては、牛丼チェーンの松屋でも提供されていた。コロナ禍では、酒を提供する飲食店に時短営業が求められたが、牛丼チェーン3社は、通常どおりの営業を続けるため、酒の提供を取りやめた時期もあった。微アルコールは、酒類ではなく「食品」の扱いとなる。ノンアル以上・お酒未満の「微アルコール」の登場は、飲む人だけでなく、提供する側にも、良い点があったようだ。
▷ キリン直営店で「飲み放題」が廃止に
2021年4月、キリンホールディングスは、直営のビアレストラン「キリンシティ」などで「飲み放題」プランの提供を停止した。大手4社では、初の試みとなる。過度な飲酒や高アルコール飲料に対する社会的な批判の高まりに対応したかたちだ。
「完全に時代が変わった」と思う瞬間だった。でもどこか、ホッとしていた。前年の出来事で書いたように、私は飲み放題で疲れ切っていた。
「元をとらなきゃ」「限界まで飲まなきゃ損をする」という気持ちに煽られながら、いつも無理して飲み過ぎていた。煽る人など誰もいないにもかかわらずだ。これは、自分で自分を煽ってしまう呪いなのだ。飲み放題には、煽りの亡霊がいて、時間終了まで飲ませようとするのだ。
▷ ビール大手各社、純アルコールグラム量を表示する動きに
ビール大手4社では、酒類に含まれる純アルコール量(グラム)の表記がはじまった。もっとも早かったのがアサヒビールで、2021年7月より缶本体への表記を開始。サッポロ、キリン、サントリーは、すぐにHPで純アルコール量の開示を行い、2022年には、缶本体への表記が進められた。
▷ 一部の多量飲酒者が多くのアルコールを消費している
日本では、アルコールの健康リスクに関する調査も進んでいる。国内のアルコール消費量は減少しているようだが、アルコール性の肝疾患で亡くなる人は増加傾向。酒を飲む人と飲まない人の差が広がっているようだ。
2021年に国がまとめた『アルコール健康障害対策推進基本計画』では「全体のアルコール消費量は減少傾向にあるが、一部の多量飲酒者が多くのアルコールを消費している状況がある」と分析している。
「一部の多量飲酒者」に、私は含まれてしまうのだろうか…?
■ 2022年(73.02L・3496g)
2022年は、お酒メディアのライターをしていた。それに反して私の飲酒量はさらに減っていった。多くの銘柄を飲んで勉強することも大事だったが、正しく飲んで健康でいる必要があると思った。
私の周りには、多量飲酒の影響か、健康診断の結果がよくない人がちらほらいた。私には、おすすめのおいしい酒があっても、それで体を壊すことはおすすめできない。おいしい酒をつくる人も、おいしく提供する人も、そんなことは望んでないはずだ。この頃から適正飲酒について、より深く考えるようになった。
▷ ビール工場見学が再開するも、適正飲酒の流れに
2020年の緊急事態宣言により長い間休止していたビール工場見学も、徐々に再開するようになった。各工場では一変して適正飲酒の流れに。試飲できる量や杯数も、以前より少なくなった。
アサヒビールにいたっては、見学施設の一部を適正飲酒のコーナーに変更。アサヒビールが提唱する新しい飲み方のスタイル「スマートドリンキング」について、説明する時間が加わった。
壁には『適正飲酒の10か条』も。これは、公益社団法人アルコール健康医学協会が、お酒の適切な飲み方・マナーを標語としてまとめたものだ。
私は日本ビール検定1級ホルダーなので、不覚にもこの10個をすべて暗記している。五七五の文章のうち、上の句で呼びかけられると、反射的に後の句で応えてしまう体になってしまった。もはや、秘密の合言葉だ。
■ 2023年(59.06L・3103g)
私自身、酒に対する意識が大きく変わった年でもある。もっとも大きな変化は、SNSをやめたことだった。
酒の情報から離れたせいか、新商品をいち早く飲むこともしなくなった。新作は店頭で出会った運命に任せよう。飲むのは気になるものだけ。好きなものを、好きなペースで飲むスタイルは変わらないが、それでも飲酒量は減っていた。
酒も人間関係と同じだ。無理して付き合う必要もないし、疲れたら少し離れればいい。話題についていくために、無理して追いかける必要もない。大切な時間を彩り、気持ちを豊かにしてくれる存在でもあるが、付き合い方を間違えると毒にもなる。なにより適量、適度な距離感が大切なのだ。
▷ 『国別一人当たりビール消費量』
記録を開始した当初と同じように、私の年間飲酒量を『国別一人当たりビール消費量』と比較しよう。今年も12月22日に、最新のレポート(前年2022年分の統計)が発表された。
私の年間飲酒量は 59.06L。
4年前は 103.6Lで、世界の2位と3位で争っていた。それが目標どおり、ランキング上位から外れることができた。
日本の順位も見てみよう。
56位:日本(34.2L)
※日本は発泡酒・新ジャンルも含む
日本は相変わらず少ない!
しかも4年前より4リットル減っている。
日本国民は、週に350ml缶を2本程度しか飲まないってことか。
これはビールだけの統計なので、人々はもっとほかの酒を飲んでいると思いたい。仮にそうだとしても、年間50L以内におさえたほうがいいことは確かだ。
来年以降は「日本の平均に近づくこと」を目標としよう。
*
◎ 純アルコール量を計算してみよう!
飲み過ぎかの判断をするためには、まずは飲んでいる酒の「純アルコールグラム量」を知る必要がある。
純アルコールグラム量は、「アルコール度数」「飲む量」「アルコールの比重 0.8」をかけあわせて計算できる。
アルコール度数 5%のビール ロング缶(500ml)の場合、
500ml × 5/100 × 0.8 = 20g となる。
1日の摂取量では、男性40g、女性20g を超えると、生活習慣病のリスクが高まるといわれている。これを超えないように酒を飲もう。
◎ 純アルコール量20gで何が飲める?
純アルコール量を20gにおさめたい場合、何がどのぐらい飲めるだろうか? 私がよく飲む銘柄で見ていこう。
アルコール度数 5%の「サッポロ 黒ラベル」なら 500mlまで楽しめる。お気に入りの「氷結 無糖レモン」の 7%は、やや度数が高いため 350ml缶1本までだ。
「ワンカップ大関」は 180ml(1合)で少々オーバー。9%の「ストロングゼロ」は、350ml缶でも余裕で20gを超えてしまう。
ぜひ、自分がよく飲む銘柄の純アルコール量を計算して、適量範囲に収まっているか、確認してみてほしい。
◎ 1週間の飲酒量にも注意!
厚生労働省の「飲酒ガイドライン案」では、病気ごとに、どの程度の飲酒をすると発症リスクが高まるかも示された。
疾病別!発症リスクが高くなる目安(1週間の純アルコール摂取量)
一般的なビール(度数5%)だと、500ml缶1本に含まれる純アルコール量は20g。1週間に8本飲むと150gを超えてしまう。
500mlのロング缶で毎日晩酌する生活は、病気の発症リスクを高めることになる。女性にいたっては、たったの「4本」で、脳梗塞の発症リスクである75gを超えてしまうのだ。
その他の病気については、NHKニュース「お酒の望ましい量は?「飲酒ガイドライン」厚労省が案まとめる」に掲載の表がわかりやすい。健康診断で要注意になってしまった病気など、自分に当てはまることがないか、チェックしておこう。
◎ アルコールの遺伝子検査を受けてみよう!
ビール酒造組合の適正飲酒啓発活動「ほど酔い女子プロジェクト」のキャンペーンでは、アルコールの遺伝子検査を受けることができた。
これは『アルコール感受性遺伝子検査キット』。酒に強い・弱いだけでなく、アルコール依存症の可能性や、飲酒による健康リスクが高いかどうかを知ることができる。
遺伝子検査なので、結果次第では、自分の血縁にアルコール依存症の人がいる可能性もわかってしまう。ナイーブな情報を含むため、結果をネット上で公開しないようにも書かれていた。
当たり障りのないように書くと、私は心配する各種リスクは高くないものの、酒に強い体質だった。
酒に弱くなった… と感じたら
遺伝子検査が示すとおり、確かに私は酒に強い。しかしここ数年で、急に弱くなったと感じることもある。飲酒量が減ったせいだろうか? それともただの老化現象か?
「酒をたくさん飲めば、強くなるはウソ」といわれるように、飲まなくなれば、弱くなるわけでもないはずだ。もし急に弱くなったと感じたら、内臓機能が低下している可能性もある。毎年の健康診断など、定期検査を忘れずにいよう。
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飲み過ぎは、感覚ではなく「数値」で見よう!
4年前、私は年間103.6Lの酒を飲んでいた。月平均8.63L。350ml缶にして毎月約1ケース、週6本は飲んでいた計算だ。
それを聞いて「えっ?そのぐらい普通じゃない?」と言う人もいれば、「飲み過ぎだね」と言う人もいる。酒に対する感覚は、人によって大きく違う。一番怖いのは、日頃から酒を飲む人たちのなかにいると、自分が飲みすぎている状態に気づきにくいことなのだ。
いまは明確なガイドラインが示されたことによって、1日の適正量だけでなく、1週間の目安もわかるようになった。これからは、感覚だけでなく、数値でも判断していこう。休肝日をつくることはもちろん、飲んだ日の純アルコール量にも気をつけてみてほしい。