スペシャリストになるために、ポジティブに研究する|パナソニック 宮本敬信さん
「教授、准教授、助教とは密に多くのコミュニケーションを取れていたので、奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)の二年間は、とても研究が進めやすく、研究室はアットホームでした」と話してくださった宮本敬信さん。奈良先端大での研究を通して、身に付けた考え方は社会人になってからも役に立ち、仕事に活かされているそうです。 奈良先端大の研究室と同じように、会社のチームメンバーは優しい方が多いというお話も印象的でした。就職先を決めるポイント、会社の雰囲気、現在のお仕事内容、奈良先端大で学んだことを中心に、お話を伺いました。
宮本 敬信(先端科学技術研究科 博士前期課程2019年3月修了)
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学領域にて、車や工場で走っている無人ロボットに対して、無線で電力を供給する無線電力伝送の研究を行う。博士前期課程修了後、パナソニック株式会社に入社、ソフトウェア開発の業務に携わっている。
就活における就職先を決める3つの軸
就職活動はM1(博士前期課程1年)の夏頃、インターンシップの募集があった頃から、どこに行こうかなと考え始めました。結構ミーハーのため、大手の電機メーカーや電子部品メーカーを主に見ていましたね。2週間のインターンシップを2回、ワンデイも3、4回行って、パナソニックにも行きました。
就職先を決めるにあたっては、3つほど軸を置いていて、一つ目はやりがいがあるか、二つ目はスキルアップができるか、三つ目は社風が自分に合っているかを考えていました。その中で特に自分が行っていた研究分野でもある無線の知見を活かして、実際にその無線の開発ができるかというところを重点的に考えながら、企業選びをしていました。
入社後の業務内容とチームメンバーの雰囲気
最初に半年間の研修期間がありました。その後はバックグラウンドなどを見て、バランス良く配属されるという感じで、一応希望も通りますね。私の配属先はコネクティッドソリューションズ社の配下にある事業部で、BtoB向けのスマートフォンやタブレット、決済端末といった商品を開発しています。その中で私は主にセルラー通信(4G、5G)、Wi-Fi、GPSといった無線の開発をしています。まだ新しいことがたくさんできているので、楽しいですね。NAISTの時と同じで、上司はとてもアットホームで優しめな方で、 パナソニック全体でも優しい方が多いイメージですね。
具体的な業務内容としては、基本的にソフトウェア開発を行っていて、プロジェクトチームメンバーと協力しながら、新商品の仕様調査や詳細設計をしています。私の無線分野では、例えば、「今回は5Gのモデルを搭載します」となれば、5Gのモデルの仕様調査をして、その仕様を満たすために、どういう技術が必要かを分析して決めます。そこからは開発で、どうやってコーディングするかということを決めていくというような仕事です。また、チームの様子ですが、うまくいかない時もチームは悪い雰囲気にはならなくて、実装するにあたって課題となる箇所をお互いに出し合い、それを解決するためにどういうアプローチでいこうかと、常に話し合っています。
今の仕事で課題に感じていること
課題に感じていることは、C言語やJavaを使ったソフトウェアのコーディング能力ですね。パナソニックのソフト開発は上流工程が多く、基本的に仕様書や設計書を書いて委託先に投げる形が多いため、そういうコーティングも少し自分でやりたいなと思っています。今はそこが鍛えられてないので、隙あらばコーディングに挑戦したいなと考えております。
仕事におけるやりがい、成功するためのモットー
自分一人の力で何かの課題を解決に導けた時はやりがいを感じます。開発時は常に新しい技術が導入されてプロジェクトが進行します。そのため、上司も常に最新の知識を持っているというわけではないので、そのような際に自ら調査を行い解決に導くことで、一人でできたという達成感と新しい知識を身に付けられたという満足感があります。
また、モットーにしていることは基本的に何事もポジティブに考えることを常に心がけています。仕事をしていると、とてもうまくいく日もありますが、うまくいかない日もあって、うまくいかない日に凹んでいると、前に仕事が進まなくなって停滞するので、そういう失敗も何で失敗したのかを自分で分析しながら、次にどう繋げていけるかは常に考えています。そういう意味で、ポジティブにどうすれば次に成功できるかを考えています。
これからスペシャリストになるために挑戦していること
現在は無線技術である5GやWi-Fiのソフト開発の仕事に携わっていて、基地局と言われるところと端末を繋いでいます。今後は基地局からその先のネットワークという部分を鍛えたくて、資格の勉強もしています。それが何になるかと言うと、今は端末しか作れていないですが、そのネットワーク部分が分かることで、ネットワーク全体も自分で構築できることになるため、パナソニックとして、一括で製品を開発できるところをやりたいと思っています。 情報処理の資格で、ネットワークスペシャリストの試験があり、そこでネットワークに関する知見を深めようと思って、取得しようとしています。自分にとって、技術的な幅も広がるので、自分がやりたい仕事も増えると思っていますね。
現役の奈良先端大生へのメッセージ
社会人になっても、目の前にある課題を常に解決していかなければいけないので、研究を行う際に自ら解決すべき課題を設定し、それに対してどうすれば解決できるかを常に主体的に考えていくことが大事です。また、社会人になるとチームで行動することが多くなります。そのため、チームで最大限の成果をあげるためにはどうすべきかについて考える能力を養っておくと将来的に役立ちます。
奈良先端大を目指している受験生へのメッセージ
大学院に入るとなると、研究がメインになってくるので、大学のネームバリューで決めるというよりは自分が何をしたいか、将来、大学院を卒業した後、どういう未来を描きたいかを考えながら、進路選びをすることが一番良いですね。奈良先端大は最先端の技術を扱うことができ、エンジニアとして成長ができます。
奈良先端大で一番印象に残ったこと:カナダでの研究発表を経験して得られたもの
高専の時は国内の学会には時々行っていましたが、国際会議へ行く経験はなかったので、そういう海外の研究発表に行けたことは、奈良先端大の二年間で一番印象深かった出来事です。半分観光、半分研究を聞く感じでしたが、一週間ぐらい、カナダのモントリオールに行きました。研究を聞いていると、やはり日本の研究者だけでは、普段から日本語の論文を読んでいるので、そこまで視野が広がっていなかったです。ただ、海外だと色々な研究があって、視野が広くなりました。ポスター発表とオーラル発表の両方を行い、ポスター発表では海外の研究者の方と非常に多くのコミュニケーションを取りました。価値観で見た時、日本はシミュレーションベースの研究が多いのですが、海外は実測データが大事で、「実測データを取っていこう」と、よく言われましたね。
奈良先端大で一番学んだこと:入社してから今も役に立つ考え方
研究を通して一番学んだ点は論理的に考える思考力や分析力です。会社に入ってからも、何かを開発する際に、上司から毎回サポートが得られるわけではないです。自分から主体的に、何がやりたくて、何を解決するのかを常に求められます。 奈良先端大の二年間で自分で何か課題を見つけてきて、それを分析して、どう解決するかという思考能力が一番成長できたことで、社会人となった今でもその能力が役立っています。
※この記事に記載した内容は取材当時の情報になり、会社名や役職名等は現在と異なる場合があります。