ゴレンジャーの何色になりたいか
私のゾンビ映画ブームは2004年に始まった。
当時、付き合いたての彼と映画デートをしようという話になり、何観たい?との問いにもじもじしながら「ドーン・オブ・ザ・デッド…」と答えた記憶がある。
拒否せず映画館に着いてきてくれた彼には、今でもとても感謝している。
一番好きなゾンビ作品は「28日後」
全速力で走って追いかけてくるという従来のゾンビの概念を覆した衝撃はもちろん、イギリス映画独特の洒落た雰囲気が好きで何回もリピートした。
アメリカのドラマ「ウォーキングデット」も大好きだったけど、ゾンビよりも怖いのは人間であるというテンプレストーリーに飽きてしまい、後半は見れていない。
有名どころからB級ものまでたくさんのゾンビ映画を見てきたけれど、この夏とても素晴らしい作品に出会った。
Netflixで配信が始まったばかりの「ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜」
今までのゾンビ映画を覆すどころか、めちゃめちゃにふざけ倒してる設定があまりにも新鮮。
社畜×ゾンビの組み合わせは「そうきたか!」と思わず声に出してしまうほど面白い。
ブラック企業、ドン・キホーテ、など日本らしさ盛り沢山な作りはNetflixというコンテンツがピッタリだ。
ゾンビものが好きな日本人なら、誰しも一度は想像したことがあると思う。
銃のない国でどうゾンビと対峙するか、逃げ場のない島国で生き延びるにはどうしたらいいのか。
かなり難易度の高い問題だと思うけれど、この作品でのアンサーはめちゃくちゃふざけていてとにかく痛快。
ぜひこの夏、クーラーがガンガンに効いた部屋でピザポテトでも食べながら見てほしい。
この作品の良い所はとにかく、主人公の輝を演じる赤楚衛二くんだと思う。
男前な俳優さんだなという印象だったけれど、今作で演じているのは平凡な男の子。それなのに、とにかく演技がキラキラと輝いている。
ブラック企業でどっぷり飼い慣らされた社畜くんが、生き生きと荒廃した世界を生きる様は清々しく、見ていてとっても気持ちがいい。
自分で考えて行動することって、実は疲れる。
正直、誰かの指示に従って生きる方が楽ちんだ。
(以下、少しネタバレ含みます)
上司の言いなりでしか動けなかった主人公が、パンデミック後の世界では自分の意思で行動する。それも、はちゃめちゃに楽しみながら。
肉にかける塩が欲しいがために危険を犯すような、典型的なバカで真っ直ぐな主人公。
少しばかり運動神経がいいだけで、特段秀でた能力があるわけでもない。
そんな彼が「ゾンビになる前にやりたいことを100個やってみよう」と思い付く所からストーリーが始まるのだけれど、夢を100個考えるって案外難しい。
そこから彼がどのように考え、行動していくのか。
ありきたりな表現だけど、本当にハラハラドキドキ2時間があっという間に過ぎていった。
なんのために働くんだろう。
自分にできる仕事ってなんだろう。
この世界での自分の立ち位置ってどこだろう。
今まさに迷子になっている方がいたら、ぜひこの作品を見てみてほしい。
「ゴレンジャーの何色になりたいか」
私は昔から、自分のポジションを考えるような子供だった。
前に出るタイプではないけどしっかり基盤を作る青。
いるだけで華やかで、グループを円滑に回していくピンク。
食いしん坊で明るいムードメーカーな黄色。
ミステリアスで口数が少ないけど、常にみんなのことを考えている黒。
恥ずかしくて言えなかったけれど、私は心の底でずっと赤レンジャーに憧れていた。
大した能力はないけれど、無駄に大きな正義感と、人の役に立ちたいという強い思いが発揮されるポジションはリーダーである赤しかないと思ったから。
主人公の輝も赤レンジャーになるべく奮闘する。その姿に勇気をもらった。
リーダーの元に仲間が集い、ゴレンジャーのように各々の能力が集結していく様を見ているのは微笑ましい。
作品の中では、そもそもゴレンジャーになりたいなんて思わない人々も出てくる。
何色かになりたい人
何色にもなりたくない人
何色かになりたいけれどなれない人
そんな人間模様が、2時間の中で上手く描かれているなと思う。
何色かになることが善というわけではなく、何色にも染まらないからこそ守れるものもある。
人生の主人公は自分自身。
見落としがちだけれど、大切なのはポジションではなくどう動くか。
そんな当たり前のことを気付かせてくれた、素敵な作品に出会えたことに感謝して。