見出し画像

近所にある国道のバイパス道路には

大型チェーン店の電気店、紳士服店、パチンコ店、ホームセンター、ファミリーレストランなどが相次いで建っていて、大変賑わっているのだが、それに比べると旧国道のほうは、この間まで営業していたお店もシャッターがおりていたりして、寂しい雰囲気になっている。

それでも頑張って営業を続けているお店が二つあって、一軒はお婆ちゃんがやっている、みたらし団子だけしかないお団子屋、もう一軒が、メニューに「ビフテキ」とか載っていそうな古風な洋食屋である。

お団子はたまに買うのだが、洋食屋には10年近く前を通っているものの一度も入ったことはない。

しかし、バイパス新興勢に負けず、けなげに開店しているのに心打たれて、ついに入店してみたところ予想通りビフテキがあったので注文した。

注文を3回繰り返さないと聞き取ってもらえなかったお爺さんが一人でやっているらしいので、出てくるのも時間がかかるだろうと思いトイレにたった。

トイレのドアには「W.C.」という筆記体の文字と、男女兼用を表す紳士と淑女のシルエットの絵があったのだが、隣にもうひとつドアがあり、「W.C.C.」という文字と、紳士の絵のプレートがついていた。

こっちは男性専用かなと思いドアを開けると、ダブルのスーツを着た恰幅のいい初老の男性が何人もいて、葉巻とシャンパンが入ったグラスを持って、談笑していた。

ちらっと奥に便器らしきものが見えたものの、パーティー中のホテルのような雰囲気に圧倒されてドアを閉め、隣の男女兼用の方で用を足した。

ビフテキを運んできてくれたお爺さんにW.C.C.ってなんですかと聞くと、おそろしく流暢な発音で「Water Closet Club の略なんだよね。」と言った。

トイレで談笑する会員制のクラブだそうで、日本には珍しいので遠方からもお客さんがくるそうだ。

成る程、道理でいつ通っても駐車場に車が何台も止まっているし、周りが寂れてもお店をたたまないわけだと思った。

いいなと思ったら応援しよう!