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最後の大根
私は分譲マンションの1階に父と母の3人で暮らしてきた。1階なので小さな庭があった。そこで父は野菜や果物を育て家庭菜園を、母は花やハーブを育てガーデニングを楽しんでいた。
今年1月28日に父は急死したが、雪下の土に昨年収穫した大根を5本埋めて保存していた。
記録的大雪だった雪も溶けてきて、先日母は土の中からその大根を全て掘り出した。
半分くらい腐ったり、傷がついていたりした。しかし、母は大事に腐ったり傷がついて食べられない部分を取り除いた。
そして、大根サラダや大根おろし、おでんになった。
うちでいちばんおしゃべりだった父がいなくなった、母と私、ふたりの静かな食卓で、父最後の大根、おでんを食べた。
涙が頬をつたった。