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続ー 台所解体、そして

台所のリフォームをして3か月経った。この間、年末と正月というわたしの中では年間でも最も「台所に居たい/居る」時期も経験した。
リフォームするとなれば、おそらく複数社の相見積もりをとり、ネット情報を探り、価格と好みの仕様にこだわるのが「王道」というものだろう。リフォームした後で比較サイトを眺めて「へぇ」なんて言ってる、間抜けなわたしは大きく道を外れている。それは知っている。
言い訳をするなら、リフォームのきっかけが「ガス器具の不調」だったからだ。地域によってはいざ知らず、都内23区「東京ガス」が網羅しているエリアに限って言えば、ガス器具の不調を、他社に相談する理由がない(と、わたしは思っている)。ガス器具交換の延長でリフォームするとなれば提携しているメーカーさんに頼ることになる。(別にここで他社の相見積もりをとってもいいわけだが、仕事の合間に、1か所との連絡でも頻繁でうんざりした身としては、まめまめしい専業主婦の方々を尊敬こそすれ真似することはできない)
その提携先がクリナップさん。建売時のリクシルさんからの乗り換えとなったわけだ。ブランドにもメーカーにもこだわりはなかった。リクシルキッチンに不満なく20年付き合ってきたし、むしろ気に入っていたと言っていい。こだわりがないことの背景には「システムキッチンには、ある程度の規格ってもんがあるだろう」という甘い見立てがあった。と、いうことに思い至ったのは、実際に不自由を感じるようになってからだ。

ここに掲載する以上は、誰かの目にはとまるだろうけれども、SNS拡散もしていない個人としてはほぼ影響力はないものと思って、あえてメーカー名も出して、新しくピカピカになった台所の、ちょっと「いただけない点」を3つに絞って挙げておく。これらはすべて「お前がショールームで舞い上がって、きちんと確認しなかったせいだろう」と言われたら、まったくもって返す言葉はない。だからクリナップさんを(そして紹介してくれた東京ガスさんを)責めるものではないことを強調しておきたい。

その1:「引き出し内装が時代遅れ」
ひとつはシンク横の引き出しの中。おたまやしゃもじなど、使用頻度の高い「柄のついた調理器具」を寝かせてしまう引き出しに、備え付けのトレイがはまっている。これがなんとも半端で、文字通り帯に短し襷に長し。トレイにおさめるには「幅が足りない」か「長さが足りない」、そしてトレイが(おしゃれ仕様なのかもしれないが)曲線を描いているため、数が入らない。カタログなどでは別の引き出しにシステマティックに「立てて収納」された写真が出ているが、そうすると今度は高さが足りずにつっかえて引き出しが閉まらない。「器具の多さと大きさをなんとか考え直せよ」という啓示のようでもある。反省はするものの、譲れない器具も多いので、引き出しの内装トレイは早晩はずすことになりそうだ。しかし、ぴかぴかなプラごみを増やすのはしのびなく、悩みながら3か月経過。
もうひとつは、コンロ横の間口15センチの引き出し。こちらの内装は、上下2段のボトル入れが「ほぼ均等に上下割」しているのを選ばず、「下段の高さ優先、上段少量」を選択した。これまでのリクシルさんで慣れてきたように、下段には背の高いボトルを入れたいと思ったためだ。ところがこの一番手前は「一升瓶」を入れる仕様になっている。懐かしい。昭和のご家庭は一升瓶で日本酒を常備していましたとも!
現代でも日本酒や白ワイン、大容量を買ってお得感を得たい方には必要なのかもしれないが、少なくともわたしは購入しない。50代のおばさんが一升瓶を持ち上げて酒類を鍋に注ぎ入れるのは、手首の負担も引火の可能性も考えると、恐怖でしかない(だってわざわざ90センチの高さにかさ上げしたわけですし)。何より使い切るまでに風味が落ちるのが嫌なのだ。かくして我が家では最も使用頻度の高い本みりん900mlびんが収まっているが、高さも幅も有効に使われているとは言い難い。

その2:「L字型部分のモノ置き場が死んでいる」
家の構造上、L字型キッチン(必然的に割高になる)を継承した。リクシルさんのつくりではL字部分が観音開きをそのままL字に折った扉になっていて、(若干もぐりこむような恰好にはなるが)奥まで手が届き、台の下すべての空間を有効に使えていた。特に「すごい」とも思わず、当然と思って、正月にしか使わないような大鍋、高さのある果実酒用瓶、手作り味噌甕の置き場として重宝していた。ちょっとした「縁の下」的な使い方だった。
一方、クリナップさんは上下段に分けた上で、下段を引き出しタイプにしている。言葉で説明するのは難しいのだが、L字部分の左右に引き出しをつけることはできない。がちぶつかりして開け閉めに支障をきたすからだ。結果として(我が家の場合は向かって右側に引き出しがあり)左側の下段スペースは死んでいる。更に、上段の「L字観音開き」は、奥までモノを入れるには間口が狭く、大鍋はつっかえて入らない。下段と貫通しているわけでもないので、高さがある瓶なども入らない。使用頻度が低いとはいえ、大きく重いものは吊戸棚に入れる訳にはいかないのだ。かくして大鍋は(非常時用と称して)別の部屋に引っ越し。味噌甕は台所床の一角に鎮座ましましている。

その3:「棚板の規格が違いすぎる」
いわゆる一般的な家具家電のように「90センチ幅」「30センチ幅」と言えば、(色や素材や、メーカーが記載できる安全性に目をつぶれば)同じ棚板が使えるだろうというのが、「ある程度の規格」と考えていた。甘かった。とても甘かった。
解体時にあまりにきれいな棚板が廃棄されるのがしのびなく(だいたいそんな発想がモノを増やす要因なのだが)DIY用に引き取った棚板たち。吊戸棚の「3段棚」が「2段棚」になって、以前のものが入らなくなったのは、事前の確認不足として反省はした(このことで、東京ガスの営業さんはクリナップさんに「事前の確認を!」と注意喚起を受けてしまったようで、二重に申し訳なく思った)が、まさか棚板の幅までもがこんなに「微妙に」違うとは!クリナップさん「90センチ幅」の棚に、リクシルさんの「90センチ幅」の棚板を入れようと思うと、すこん、と落ちてしまう。ダボ(棚板をとめる留め金)の仕様の問題ではなく板の幅自体が違うのだ。驚いた。もしかしたら20年という時間経過の間に、「90センチ」が変形して縮んでしまったのか、とはまさか思わないけれど、例えば棚板の「一般的な表記方法」が「内装幅90センチ」から「外装幅90センチ」に変わった(板の厚み分)とか、そんな業界事情があるのかもしれない、とは考えた。いずれにしても、そんな事情は一般人の知る所ではない。おまけに奥行きの長さも全然違った。だからたぶんこれは「今までそうだったから」という、それぞれのメーカー事情なのだろう(そうしないと修理対応ができないのは理解する)。
システムキッチン屋さんにも、建材屋さんにも、それぞれの「事情」がおありなのだとは思う。メーカーごとの機能的な差別化も必要だろう。でも、耐用年数と同じくらい、廃棄に至る道筋も検討できないだろうか。せめて「板」という、そのものが機能を持つものではない部分だけでも。きれいな空き家のリノベーションも流行り、活用できる場はたぶんたくさんある。
クリナップさんを、リクシルさんを責めたいのではなく、どうにか「業界基準」みたいなものをご相談いただけないかな、という願望である。SDG’sを声高に叫ばなくとも、できることはあるんじゃないかな・・・などとつぶやきながら、きれいな棚板のDIY活用を考えている。
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