才能の隠れ場所 - 2020年10月23日のニュースレター
あるとき突然抜擢され、主演をまかされる俳優さんや
急にランキング上位に食い込み、曲をよく聞くようになったバンドなど
いつのまにか有名になる存在がここ数年多くなった気がします。
発信できるツールが増えたことで、自分のアンテナに全く引っかからないけれど局所的に人気がある人、という存在が増え、
人の好みというのはこんなにも多様なのかと驚く毎日です。
実は一見、ぽっと出のように見える方も自分が知らないだけで古くからのファンがいたり、地道な下積み時代がある方も多く、
何かを「続ける」ことには物凄い複利のパワーがあることが
こんなところからも感じられます。
私も、企業の広報活動を支援している中で
いつも「継続して発信することが大切です」と伝え続けていますが
それが実行できる会社さんはとても少ないです。
今日ピックアップするのは
愛する奥さんに25年もの間、毎日詩を贈り続けた男性の物語です。
英国の俳優、Peter Gordonさんは
妻のAlisonさんが2016年にガンで亡くなっても
詩を書くことを止めませんでした。
彼が毎日、言葉を紡ぐことを続けられた秘訣は、
何だったのでしょうか?
【本日のピックアップニュース】
俳優のPeter Gordonさんは、
妻Alisonさんのために25年間詩を書き続け、妻の死後も続けています。
現在87歳の彼の家族は、彼の詩を共有するためのウェブサイト「A Love in Verse」を立ち上げました。
ほとんどの男性は、たまに花束を買う以上のことをするのは特別なことだと考えています。
しかし、Peterさんは数十年にわたって、Alisonさんと共有した人生と愛について、8,500編の詩を書きました。
PeterさんがAlisonさんと出会ったのは1971年のこと。
1973年に再会し、その1年後に結婚しました。
70年代後半には娘のキャシーとアンナが生まれ、
80年代に初めて妻の枕元に詩を贈り、
90年代に入ってからは毎日詩を書くようになりました。
「彼女はとても感動していて、それを楽しみにしていました 」
と彼は振り返ります。
「最初は小さなメモから始まり、小さな詩になっていきました。
私はそれを枕の下に置いて、彼女が枕下をチェックして私に渡し、私はいつもそれを読んであげました。」
2014年に肺がんと診断されたAlisonさんは、
2015年、化学療法の合間に二人の娘で演劇作家・演出家のアンナ・ジョーダンが演出した劇『ラブレターズ』でPeterさんと共演して、
2016年に亡くなりました。
彼女の死後、Peterさんは、1983年に初めて書かれたものから、
何千もの詩を整理し始めました。
膨大なアーカイブの中から約340編の詩が、娘のキャシーさんとアンナさんによってオンラインで公開されています。
詩の一部は、Julie Hesmondhalghや、Pearl Mackieなどの俳優によるビデオで朗読されてもいます。
「A Love In Verse」で読めるこれらの詩は、
Alisonさんの死後4回忌、パンデミックの年に初めて公開されました。
「妻の死を悼み、愛を示すために妻に対して何かをするなら、
良いものであってほしいと思っていたので、
膨大な詩を丁寧に読んでいったんです。」
とPeterさんは言います。
「ウェブサイトの注目度の高さに感激しています。
この歳になって突然、ちょっとした波紋を呼ぶことになってとても嬉しいです。」
「私はいつも作家になりたいと思っていました。
それが私の野望でした。
振り返ってみると、無意識のうちに詩を書く傾向があったことがわかります。」
「私たちが持っていた愛に敬意を表したかったし、
それを皆に知ってもらうことは特にこの困難な時代に良いことだと思いました。」
***
誰から強要されたわけでもなく、「ただそれを伝えたいから」という理由だけで25年もの間たったひとりのために詩を書き続けられるのは
“情熱”という言葉以外に当てはまる言葉が浮かびません。
夫婦愛というのは
おはよう、とか
いただきます、とか
いってらっしゃい、とか
ありがとう、とか
毎日の何気なくて穏やかな挨拶の中で一番感じられると思っているのですが
それが少し長く、3行の文章になると美しい詩になるのだなと知りました。
自分が読みたいものを書き、
それを大好きな人が受け取ってくれて
しかも喜んでくれるなんて、
それだけで毎日が満たされます。
Peterさんが25年もの間、詩を書き続けられた理由は
Alisonさんが受け取ってくれた、ということも大きなモチベーションだったかもしれませんが、
多分、最初から自分が読みたいものを書いていたからです。
これをやってみよう、とふと思う時に
そこに過度な期待や下心がなく、無理なく楽しく、毎日できることであれば
それがあなたの才能です。
3行の詩を毎日誰かに贈るのでも
丁寧にお料理をつくるのでも
綺麗なものを撮影するのでも
自分にとっては小さなことでも
毎日続けると、何百回目か何千回目かに奇跡は起こります。
ただ楽しいから、やる。
そんなシンプルな動機から始まったことが
繰り返される所にこそ、才能が隠れていると思うのです。
そしてもし、その才能を受け取ってくれる人がいるのであれば
そういう相手が本当の「パートナー」なので
お互いが影響しあって、才能を伸ばしていける存在になれるよう
大切にしていきたいと思うのでした。
***
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