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育休(5日)を取りました

この度,育休(5日)を取りました。男性が育休を取ることについては様々な記事等があると思いますので(以下に私が読んだnoteを挙げておきます),ここではあくまで私個人の体験談,そして男性研究者・大学教員と育休ということについて書いておこうと思います。

妊娠,出産,育児はとてもデリケートな話題ですので,実名と身分を明かしているこの場で書くかどうか迷いましたが,特に自分の周囲や同じような状況の方の参考になればと思い,書くことにしました。もちろん,本記事は特定の人や組織,価値観などを否定・非難するものではないことをお含みおきください。

育休(5日)の理由

まず,育休が5日というと短い印象があると思いますが,なぜ5日なのかというと単純に制度がそうだったからです。つまり,勤務先では有給で男性が取れる育休は5日でしたのでこれを利用させてもらいました。

それでも,妻の退院時期の数日後がちょうど冬休みでしたので,年休と合わせて結果的には2週間ちょっとくらいは育児に専念する期間を作ることができました。

ただ,これはたまたまタイミングが良かっただけで,タイミングが違っていたら本当に5日だけになってしまい,それはやはり短かっただろうなと思います。実際に過ごしてみて分かったことですが,この5日すべてを育児に費やせるわけではなく,この間に様々な申請や届け出等で役所や職場に出向かねばならず,1日~2日家を空けることがあります。そのことを踏まえると,やはり5日+αは欲しいところです。(もちろん,本音を言えばもっと長く取れるのが理想的ですが)

育休(5日)でも取ったほうがいい理由

それでも,たった5日でも,育休は取った方がいいと思います。その理由の1つに,まず育休を使って基本的な育児スキルを集中的に身に付けられることがあります。いわば,育児スキル習得の crash courseと言えるかもしれません。この5日で抱っこ,おむつ替え,ミルク,沐浴など基本的な育児スキルを学び,スムーズにできるようになることで,その後の育児で多少なりの戦力になることができると思います。休みを取らず徐々に覚えるということも不可能ではないと思いますが,家での育児が始まってからできる限り早くこのスキルを身に付けたほうが良いのは間違いないと思います。

もう1つは,制度は利用してこそ意味があるということがあります。大学教員のほとんどは裁量労働制であり,特に私の場合は先に述べたように年休や冬休みを使うこともできたので,育休制度を利用せずとも5日分の休みを設けることはできたと思います。実際,事務の方にも全て年休としたほうが提出する書類も少なくなるので良いのではないかと勧められました(注:これは私の負担を減らそうという100%善意の提案です)。しかし,たとえそうだとしても,やはり育休の制度を使うこと自体に意味があるのと思うのです。育休制度を使って休みを取ることで周りにそのような制度があることを周知することにもなるし,今後同じように育休を取りたいと思っている男性教職員も育休が取りやすくなると思います。なので,手続きが面倒でも,あえて育休を申請することにしました。

現在,多くの大学では男性教職員が育休を取れる制度が整備されていると思います。ですが,実際にその制度を知っているという人はどのくらいいるのでしょうか。同時に,資格のある男性のうち,その制度を利用した割合はどのくらいなのでしょうか。おそらく高くないのではと予想していますが,是非とも各大学には制度の整備だけでなくその利用率も検討してもらいたいと思います。(ちょっと調べてみると,利用率を公表している大学もありました)

男性大学教員が育休を取るためには

言い古されてきたことではありますが,育休制度がありながらそれが利用されないのは,周囲の理解が得られないということも要因の1つだと思います。「男性は仕事を優先すべき」「自分は仕事しながら育児もしてきた」「今休まれたら困る」そういった考えは多くの職場で未だありふれているかもしれません。

私の場合は幸いにも周囲に理解をしていただき,快く育休を取らせて頂きました。育休を取らせてほしいと申し出た際には「当然の権利」と言っていただきましたし,育休中にどうしても必要な会議があった場合は別の先生が代理で出席してくださったりもしていただきました。本当にありがたいことです。

ただ,学位論文指導や入試など,大学教員特有の避けられない仕事や行事もあります。育休中のこれらの仕事についてどのように対応するのかというのが事前に決まっていたり,ある程度カバーできるような仕組みがあると,より安心して育休が取れるのではないかと思います。私の場合は,ちょうど卒論の提出日が出産予定日と重なり,1週間前には卒論を完成できるような予定で進めていましたが,私の指導力不足もあり結果的にはギリギリまで指導していました。代わりがきかない仕事でもあるので,このような指導への対応というのも考えていく必要があるかなと思います。

育休以外の支援や配慮ももっと必要

ここまで育休の話を書いてきましたが,実際には育休以外の支援,たとえばパートナーの妊娠中や妊娠前の支援・配慮も必要だと思います。安定期に入るまでの妊娠期間や,実際には事情を把握するのが難しいところではあるのですが,男女問わず妊娠を希望している人には何らかの支援や配慮が必要だと思います。勤務先では不妊治療のための休暇制度も設けられていてそれはとても素晴らしいことだと思うのですが,これも実際に利用するにはいくつかのハードルがありそうです。まずは,多くの人が妊娠・出産に関する知識や理解を深めていくことが必須だと思います。そしてもちろん,妊娠・出産だけでなく,親の介護等を含め様々な休みが必要な場合に対しても同様の支援・配慮が必要です。

さらに,大学教員という職種で言えば,任期の問題はとても大きいです。もちろん,妊娠・出産をするから任期を更新しないとか,育休を取ったからテニュア(任期なし)を獲得できないとするのはマタハラ・パタハラそのもなのでもっての外ですが,そのようなことがなかったとしても,任期なしのポジションにない人にとっては躊躇することがあるのではないでしょうか。たとえば,任期3年で最後の年にテニュア獲得の審査がある場合,任期中の3年で出産・育児を行うことに何の抵抗もないという人はいないでしょう。先のようなマタハラ・パタハラがなかったとしても,任期中に出産・育児をすることで周囲に迷惑を掛けるのではないか,大変な育児をしながら求められる業績を作ることができるのだろうかという不安があります。そうなると,結果的に「出産・育児は安定したポジションが獲得できてからにしよう」という悲しい結論に至ります

これは男女ともあり得ることですが,出産・育児による影響は女性のほうが甚大であるのは間違いありません。今後,大学にしても学界にしても,若手と女性研究者の力がますます必要になってくるのは疑いのないことです。大学・学界が維持・発展をしていくためには,雇用の在り方や産休・育休を含めた女性キャリアの支援は必須だと思います。

育休後も育児は続いていく

育休は終わりましたが,育児は終わりません。むしろ日に日にハードになっていくし,仕事をしながら育児を行うというのは育児をし始めた育休のころとは違った不安や大変さがあります。時には育児を任せっきりにして仕事に没頭したくなることもありますが,そんな時はこの記事を自分で読み返したいと思います。

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