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麗し秋田 神来月旅 その3 深き湖の女神と龍神へのご挨拶 イイ・イヤシロ・チvol.57

湖の畔を車で進むと、雨上がりの名残の霧と色とりどりの紅葉に飾られた車道に、明るい日差しが差し込んできた。

龍神の歓迎かしらね?などと相変わらずの前向き?解釈で、ニコニコな三人。30分ほどで到着したのは、御座石神社。

https://www.tohokukanko.jp/attractions/detail_1007210.html

まずは、車を停めた場所に近い、潟頭の霊泉にご挨拶。きれいな黃葉が敷きつめられた、水の聖処。

お水が湧き出ているかはよく分からず、残念

この社殿の後方は磐座のあるお山であるが、そちらへの道は熊注意の通行止めになっていた。なかなかに、熊とのお付き合いは難しくなっているようだ。

振り返って対面する田沢湖は、静かに広がり、湖面の透明度が大変に高かった。西日本では小さなため池がたくさんあるが、このような優美な湖には殆ど御縁がないわたくしは、なんとも神秘的な風景に魅惑される心持ちになる。

水質が良く、泳ぐウグイがはっきりと見えた

その湖に向けて、厳島神社や真言密教を想起させる赤い両部鳥居が立っていた。まるで湖から上がってくるナニカを迎える目印のように。

湖の龍神のゲートなのか

此処の絶景ポイントは、絶好の撮影スポットである。人々は代るがわる記念写真を撮っていく。もちろんわたくしたも同様に、この瞬間を保管するべく、それぞれが思い思いのショットを撮影をした。

秋の湖は少し愁いを帯びて、湖水浴場も設けられるという賑やかな夏季とは異なる趣を呈していた。

この鳥居から道路を挟んで、御座石神社は在った。

迫力満点パワスポな御神木

どっしりとした御神木の杉が、門番のように立っている。この付近から既に雅楽放送の音色が響いて、神社ムードが醸し出されていた。境内に足を踏み入れると、美貌や恋愛成就祈願の女性たちが、明るい笑顔で参拝している様子が見られた。

女神の愛らしさを感じる拝殿

わたくしたちも、拝殿の前に進み、女性らしい雰囲気のお社にご挨拶をすませてから、右手の方へ向かった。

其処に、少しギョッとさせられる像が在った。傍の掲示板には辰子姫の姿だとのこと。申し訳ないけれど、伝説にあるような龍というよりは、蛇の妖怪めいた印象が強く、わたくしにはどうにもしっくりとこなかった。

ふと、もしかしたら、美しい女性が犠牲になって湖の周辺の人々を救った話が、転化したのではないだろうか?という考えがわたくしの頭に過ぎる。

縄文文化の色濃い当地で、雨乞いや水害防除、豊かな水源の保全の祈願において、水神との橋渡しを担った霊力のある女性たちが存在していたのではないか?

その方々の存在を忘れないように、伝説の形で人々が語り継いでいるのではないだろうか?実際に、日本各地の水辺には、女性と龍神のペアの伝承が共通して存在するのも、そのためかもしれない、などとわたくしは想像をたくましくするのだ。

トグロにドッキリ

そんなとりとめもない妄想を抱いたまま、更に歩を進めると、祈祷所にたどり着く。

想いが天に届く場所

祈り場として、なんとも落ち着くその場所の手前に、かなり存在感を示す桂の大樹が立っている。

後方にあの鳥居が見えている

桂は龍が寄り付く木種だと、わたくしは考えていると、タイミングを合わせるように、旅友が、「湖畔の鳥居から一直線上にありますよ!」と、とても大切な発見をしたように声を発した。

それを受けて、ああ、此方がやはり龍燈の木なのだと素直に受け取り、こちらで小さく龍神祝詞をあげさせていただいた。

御朱印と可愛らしい獅子のお神籤を授けていただいて、次なる目的地、浮木神社に向かう。水面の様子に合わせるように、ゆったりとした参拝の満足感を抱いて対岸を目指して進む。

龍神の文字が滑らかな龍体をイメージする御朱印

ほどなくして到着すると、丁度外国人の団体が賑やかに観光中だった。美しい水質や水面近くに群れ泳ぐウグイに、明るくはしゃぐ観光客たちを横目に、わたくしたちは、この場所の探索を始めた。まず目を引くのは、湖面に佇む金色の女性像。薄曇りの中でも眩く美しいので、晴天の空と湖の間の姿は如何ばかりかと思ったことだ。

観光客に人気のフォトジェニックなポイント

そして、さして広くないそのエリアに、浮木神社が湖面に突き出して建っている。

花の季節も素敵だろう
湖上に突き出ている、とても貴重な建物
趣ある扁額

拝殿にご挨拶して、大勢の参拝客の後をついて、ぐるりと社殿の周りを歩いて田沢湖の湖周を遠望してみた。

晴れていれば、対岸の山々も見えていたかも

どこまでも平らかな遠くの湖面を、紅葉が縁取っているのが秋らしい。水の有難さを十分に感じ入って、御朱印を授かった。

古名の御朱印ですよ、と一言いただいて授かる

主祭神は金鶴姫命と。辰子姫のことだろうか?金峯神社の金ともつながるような気がしたが、よくわからない。永遠の若さと美を求めて、龍になってしまったという伝説も、不思議だ。そんな欲深な女性を、人々が長い間語り継ぐだろうか?と。わたくしは、誰かに呼びかけられたような気がして振り返り、金色の立像を再度見つめた。水深と同じくらい深い謎が其処に秘められているように思えてならない、わたくしであった。

ところで、ハッシー様のブログ↑を拝読すると、この湖も汚染の危機に見に舞われた歴史があり、固有種のクニマスという湖魚が絶滅かという状況だったことも知る。多くの人々が護ってきた自然をこれからも引き継いでいくことの大切さを、想う。

この豊かな湖がもたらす恵みは図りしれず、ずっと昔から変わらず人々のたつき(生計の古語。千年以上前から使われていた。ここではこの言葉がぴったりと感じるのであえて)を支えてきた。きれいな水質と風景に育まれて、長い時を数多の生命は循環してきた。

金色の辰子姫の立像は、まるで優しく見守る母親のようなまなざしを投げかけながら、訪れる人々にこの自然を大事にしていくよう、優しく愉し、語りかけているようだった。

柊の花の香 密やかに拡がる晩秋

最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。


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