道
下を向いて歩く、
登ってるのか下ってるのかわからない、
毎日の道。
あるときはお金がおちていないかと探し、
あるときは携帯に夢中になり、
あるときは現実から目を背けたくて、
あるときは絶望を感じて、、
水溜まりは避けられるが、
電柱にぶつかる。
ありの行列は踏まずに済むが、
赤信号に気づけない。
点字ブロックが目に入った時には、
少し前にそれを必要としてる人がいる。
あぁ。
なんてこった。
小さなため息が重石になって、
首や背中をまた押さえつける。
ざっ
しゃっ
ざっ
しゃっ
何処からか、
からっとしたものが摩れる音がする。
「おはようございます」
足の少し先をみると、
誰か知らない人が自分に挨拶をしている。
苔色の竹ほうきをもち、
公園脇の落ち葉をはいて集めていた。
自分ははっとした。
毎日歩いて見ていた道は、
この人が綺麗にしていたのだ。
「ありがとうございます」
なに、
自分のためなんかじゃないことはわかってた。
でも、ふと溢れたんだ。
その知らない人は、
その時から知らない人じゃない、“落ち葉をはいてくれる人”になった。
自分の目の世界が、
ことん。と音を立てて転がった、
今日は、この坂道を、一歩一歩、登った。
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