マイクロノベルちょいす 023「悪意」
No.1003
大きなイベントが行われる予定だった土地に人が住んでいる。生命の美しさを尊ぶ目的だったけど、中止になったそうだ。その土地に暮らす者の挨拶は独特だ。「殺すな」
No.1026
彼は出番を心得た老練な賢者だ。ここは任せよう。「学校で人が殴られた? 警察を呼べ」「AIに作品をパクられた? 裁判だ」「企業の判断を越えている? 政府が動け」あのジジイはいつになったら仕事をするんだ? 「老人を働かせる不心得者はお前だな」
No.1089
雨が降るとデコボコがはっきりわかりますね。大人も子どもも水たまりを避けて歩く姿は、ちょっぴりユーモラスで、世の中を平等にします。どんどん歩いて、地面をすり減らして、凹凸をなくして、すべてを等しく平らにしましょう。
No.1105
最近、無礼な連中が我らの土地を掘り返してしまった。道を作るだの地球を綺麗にだの、きれい事ばかり並べおって。実に愚かしいな。下から出てくるのは我らのエサよ。さらにその下からはエサのエサが。新しい世界に、お前たちの土地が余っているかは見物だな。
No.1137
あそこに工事中の道があるだろう? こういう場所が狙い目なんだ。見ろ、フェンスの向こうを。工事なんてやってない。普通の道があるだけだ。すり抜けてしまえ。そして、曲がり角の向こうにある大きな穴に落ちてしまえ。ショートカットなんてないのさ。
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