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マイクロノベルちょいす 014「ね、簡単でしょう?」
No.1011
窓を少し開けて。拳一つ分ぐらいでいいよ。そしてキッチンの換気扇を回す。これだけで家の中の空気が少しずつ流れて入れ替わるんだ。ほら、換気扇のフィルターに次々とアゲハチョウが集まってくる。一体どこに隠れてるんだろうね?
No.1037
自動演奏ピアノの鍵盤を制御するのは横一列に並んだ水飲み鳥たち。気温や気圧で演奏が変化することから、奏でられる音楽は「自然の音楽」と呼ばれています。かつては猫が歩いても音が鳴ると貶された楽器ですが……ね、猫だぁ! 踏め、踏め!!
No.1056
地球からの移住が進んで、火星は賑やかになった。元々はぼくたちの星なのに、火星人を名乗る人も出てきた。地球を知らない世代になったんだな。なら地球はもらっちゃおう。「ワレワレは地球人ダ」よし、うまくいった。あっ、地球から偽物の地球人が来たぞー。
No.1063
利き水選手権のコツは、癖をとらえること。たとえば人間のコップを持つ動作や口の開き方は、滅多なことでは変わらない。それはAIも同じ。「うーん……アメリカ製AIが作ったバーチャル南アルプス天然水!」惜しい! 正解はバーチャル道頓堀の水!!
No.1079
目の中で神様が手を振っている。ぼくになにかを伝えたいの? ジェスチャーだけじゃわかんないよ。「私がなんとかしよう」別の神様が耳の中で通訳してくれる。「最近、お前の目から入ってくる世界は、なぜ一秒間が百二十分割されているんだ?」わかんないよ。