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マイクロノベル集「母が持って来る。そして持って行く」

マイクロノベルNo.1936
あっちゃん、お弁当! しかし、バーチャル世界に冷凍ひとくち餃子は届かない。じゃあどうする!? 電子レンジで無線を撹乱だ! 「光ケーブルからこんにちは~。あっちゃんでっす」くそっ、配信は完全有線なのか。止まれ~! 「F5アタックはやめて!」


マイクロノベルNo.1937
窓から神輿の屋根が見えた。でも、わっしょいが聞こえない。「あら、本当に来たのねえ」おかあさんが困ったように微笑む。「大丈夫、きっと楽しいわよ」これは時々見る夢。ぼくにお母さんはいないけれど、お供え物のおにぎりを食べると懐かしい気持ちになる。


マイクロノベルNo.1938
結局、私たちは誰もお母さんの味を受け継がなかったので、あのボツボツという音の止め方はわからない。「これは夕立というのよ」お母さんはよくキッチンで鍋を火にかけていた。「ゲリラ豪雨は、こうやるのよ」途端に強くなる雨音。私はずっと本を読んでいた。



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