マイクロノベル集 257「帽子が欲しくて」
No.1445
あたたかい帽子を買うために、おかあさんと街までやってきた。「いいかい、絶対に耳を見せてはダメよ」ニンゲンってそんなに怖ろしいのかな。店員さんはにこにこしてるよ。「この猫耳付きの帽子が人気ですよ」うわあ。おかあさん、狐用の帽子があったよ。
No.1446
どうした、ボウズ。寒いのか。俺の頭に乗っている邪魔っ気な帽子を持って行け。年の瀬になにかを勘違いした馬鹿が真っ赤な帽子をかぶせたんだ。「じゃあ、かわりにこれをあげる」やれやれ。稲荷狐にコンビニおにぎりを供える奴があるか。あっ、鮭はあるかね?
No.1447
俺はかぶった者の頭髪を喰らう呪いの帽子。恐れよ! 「おのれ妖怪変化め、調伏してくれる!」うわあ、坊主かよ。「嫌なら俺の式神になれ」毛もプライドもないのかよ。「焼き肉サイコー」この生臭坊主め! 俺が今まで蓄えた頭髪、お前に植え付けてくれる!!
No.1448
つまり、お前そっくりな男が道を歩いていて、そいつはお前よりイケメンだった。その男がかぶっていた帽子さえあれば、自分も格好良くなれると……? 「あんた悪魔だろう。帽子をくれ」帽子とマスクしてりゃ、頭の九割は隠れるぞ。「サングラスもつけてくれ」