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競う相手は他者でなく自分自身――「心技体」の鍛錬に余念なし/名大弓道部

酷暑が続く8月初旬、蝉の鳴き声が響く静寂にキリキリ…と弓を引き絞る音が響きます。張り詰めた空気を打ち破るように、射手(いて)が弦(つる)をカッと弾くと、勢いよく放たれた矢が、パンッと的に当たりました。ここは東山キャンパスの外れにある弓道場。8月8日~11日に開催される七大戦を前に、名大弓道部の部員が練習に励んでいました。

東山キャンパスの西はずれにある弓道場。この広い施設を部員が管理運営しています

よどみなく一連の動作が整えば「的に当たる」

弓道は、長さ七尺三寸(約221㎝)の和弓を使って直径36cmの的を射る競技。的までの距離は28mもあるため、手元のほんの数ミリの狂いで、矢が大きく的を外れてしまいます。
「弓は足で引く」と表現されることもある弓道。両足を広めに開き、長い和弓を腕いっぱいに引く立ち姿は、大地にどっしり根を生やした「大木」のようです。男子主将の安江咲葵人さん(工学部3年)は「弓道には“正しい形”というものがあります。正しい射形を学び、自分の体で再現することが大切です。的に当たる、というのは一連の動作がよどみなく整った結果です」と説明します。
女子主将の白井歩さん(工学部3年)は、小学校から中学まで剣道に打ち込み、高校から弓道の道に。「相手がいる剣道とは異なり、弓道で対峙するのは的と自分だけ。すべての責任は自分にあります。結果が出せなくても、相手が強かったという言い訳はできません」と、その厳しさであり魅力を語ります。

女子主将の白井歩さん(左)と男子主将の安江咲葵人さん

弓道の神髄は「心技体」を一つにすること

「的中率を高めるには技術や筋力も必要ですが、それ以上に精神面が重要です」という安江さん。矢を射る際に気持ちを落ち着ける上で、呼吸の仕方も重視します。強い足腰でぶれない体をつくり、静かに呼吸を整えて心を安定させ、正しい射形で弓をひく――。弓道の神髄はまさに「心技体」を一つにすることといえます。
弓道への向き合い方は、普段の生活にも生かされています。「私は緊張しやすい方ですが、授業での発表時に弓道の呼吸法を使うと自然に落ち着いてきます。弓道が自分の行動のベースになっている面があります」と安江さん。白井さんは「どのような武道も礼儀作法はとても大切です。私はいつも『良いことをしたらイイコトが帰ってくる』と思って、日頃の心がけを大切にしています」と語ります。

1本1本集中して呼吸を整え正しい射形で弓をひき、練習を重ねます

部員同士が教え合い、切磋琢磨

現在、部員は男女あわせて85名。中学、高校からの経験者もいますが、半数は大学から始めた初心者です。初心者は弓を持たずに形を学ぶところから始めますが、3~4ヶ月後には的に向かい弓を引けるようになるそうです。
活動は原則、平日2日間の夕方と土曜日の午前又は午後の週3回。部員が多く全員が一度に練習できないので、曜日や時間を交代しながら練習しています。
弓と矢が整然と並ぶ弓道場には、あちこちに大きな鏡が置いてあります。白井さんは「常に自身の射形を確認しながら、出来ているところ、出来ていないところを分析して修正していきます」と説明します。
他方では、弓を引く様子を他の人に見てもらい、アドバイスを受けている部員も。「指導者が常にいる中高と違い、部員同士で教え合うことが多いです。師範に指導いただくこともありますが、部員同士だと感覚が近いので、改めるべき点が分かりやすいというメリットもあります」(安江さん)と、互いに切磋琢磨しながら練習しています。

入学して初めて弓道を始めた部員に経験者からアドバイス

1射1射が真剣勝負

弓道の試合は3~5人のチーム制。一人あたり4本の矢を射て、的に当てた矢の数で競います。一人4本しかないため一射一射が真剣勝負で、1本の矢も無駄にできません。順番に矢を射っていきますが、最初に射る人は、チームの流れを作る必要があり、最後に射る人はチームの流れを受け止める必要があります。安江さんは「誰が、どの順番で射るかも大事な戦略です。1番手は嫌ですね(笑)」と明かします。
東海学生弓道連盟に加盟している弓道部は1部から5部に割り振られ、1つの部(ブロック)に4校ほどの大学が所属しています。名大弓道部は現在、男子、女子共に最も上位の1部に所属しています。

毎年恒例の夏合宿!

7大戦の目標は、男女ともに優勝!

昨年度の七大戦で、男子は6位。安江さんは「7帝大の中には伝統的に強い大学もあって、その雰囲気に圧倒されそうになりますが、負けずに優勝を目指したいです」と力を込めます。一方、昨年度の女子は準優勝。白井さんは「今年の女子は、突出した選手が引っ張るというより、選手が互いに補完しながら全員で勝つ感じです。ひとりが不調になってもカバーし合えるところが強み。今年こそ優勝。それしかありません!」と闘志を燃やします。

弓道場に部員の弓がずらり整然と並びます

名古屋大学 弓道部「七大戦」
8月8日(木)~11日(日)
蒲郡市民体育センター弓道場

名古屋大学 弓道部
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