植物の基礎体力UP!企業と大学が共同開発した「バイオスティミュラント」を使ってみよう
「バイオスティミュラント」という言葉を聞いたことがありますか?
直訳すると「生物刺激剤」で、これからの農業資材として注目が高まっています。農薬でも化学肥料でもなく、植物が本来もっている「成長する」力や「病気から自分を守る」力を高める、サプリメントのような働きをします。
まだ新しく、知名度も高くないバイオスティミュラント。実は、名古屋大学と株式会社レゾナックさんが共同開発しています!既に「クロピコ®」という商品名で販売されているバイオスティミュラントを実際に使い、よりよい農業の未来について考えるイベントを開催しました。
バイオスティミュラントは固体?液体?どう使う?
まずはバイオスティミュラント「クロピコ®」の体験タイムです。参加のみなさんに、クロピコ®をどのように使うか、試してもらいました。
クロピコ®は、アルミパウチに入った液体です。
なんだかゼリー飲料みたいですが、ゼリー状ではありません。とろっとしていて、触ると少しベタっとする液体です。1000倍に薄めて使います。
薄めた液を、植物にスプレーします。
使い方のレクチャーは、これで終了です。なんとも簡単ですね。普段の水やりに加え、週1回程度スプレーすればOKとのこと。特に、芽生えの時期からスプレーしてあげると効果が出やすいようです。
クロピコ®は何でできているの?
簡単で効果があると聞くと、成分も気になります。その辺りは、開発者である講師のお二人から、じっくりお話を聞きました。
まずはクロピコ®の原料。一体どんなスゴイ素材でできているのかというと…
綿、とうもろこしの芯、エビの殻…!?!?
全て、廃棄される運命だった素材を「オリゴ糖」という形で生き返らせたとのこと。
これらの素材は、主成分が「多糖」という共通点があります。多糖とは、ブドウ糖のような小さな糖が、鎖状にたくさん連なったもの。デンプンやセルロースは多糖の代表例です。これをある程度短めに、ブチッ、ブチッと切った「オリゴ糖」が、クロピコ®の正体ということです。
ちなみに、オリゴ糖は、レゾナックさんオリジナルの製法で作っているそうです。
オリゴ糖がなぜ効くの?
そして、クロピコ® を使って育てたトマトの登場です。普通に育てたものと比べると、背丈が大きいですね。
クロピコ®のオリゴ糖が栄養になっているから…?ではありません。それどころか、植物はオリゴ糖を「外敵」と認識するそうです。その理由は、病原菌がオリゴ糖を持っているから。つまり、オリゴ糖でできたクロピコ®をかけると、病原菌が来たぞ!と勘違いして、成長や免疫に関連する遺伝子を活性化させる、というわけです。
イベントをサポートしてくれた竹本さんのラボメンバーも、植物がオリゴ糖を認識するしくみや、免疫を上げるしくみについて研究しています。
農場でも効果あるの?
研究室と同じ効果を、実際の農場でも確認できるのでしょうか?各地の農場で様々な農作物にクロピコ®を散布した事例が紹介されました。例えばサツマイモでは、収量が増え、形が揃う効果が確認できたそうです。
ジャガイモやイネでも良い効果があり、クロピコ®のようなバイオスティミュラントが環境負荷の少ない農業に貢献できるのではないか、と齋藤さんは話します。農家さんへの普及のためには、クロピコ®を多くの人に知ってもらうことが重要とのこと。利用が拡がっていくといいですね。
「バイオスティミュラントで植物のどんな力を高めたい?」という問いに対して、参加のみなさんからも期待の込められた回答が挙がりました。
イベントの後、みなさんにはトマトの苗とクロピコ®を持ち帰り、お家で育ててもらっています。開始時にはバイオスティミュラントを知っている方は一人もいませんでしたが、トマトの日々の成長にクロピコ®の底力を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
(報告:丸山恵)