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55. 朝食論争最前線 ―食べるべきか、抜くべきか―

第55回目の今回は、朝食を食べる意義について、体内時計の観点から切り込んだ研究を紹介します。理学部4年、|髙山楓菜⟪たかやまふうな⟫がお送りします。

ポッドキャストでもお送りしています。
学生メンバーの髙山&永山の、大学生目線の朝食トークです。

朝食、食べていますか?ダイエットや食欲がないという理由で朝食を食べない方もいらっしゃるかもしれません。私は朝食を食べるようにしていますが、どうしても時間がない時などは食べずに出かけてしまうこともあります。

そもそも、朝食は食べる方がいいのでしょうか?食べない方がいいのでしょうか?

これについては長年の論争になっています。一般的には食べた方がいいイメージですが、一時期「朝食抜きダイエット」も話題になりました。朝食を抜くことで空腹時が長くなると、脂肪が分解されて体重を抑える効果があるというものです。ただ、朝抜くと昼に余分に食べてしまいそうですよね。実際に、多くの研究者は、朝食習慣が体重増加を抑えるなど、朝食は健康に良いことを主張してきました。

名古屋大学の小田裕昭おだひろあき准教授もその一人です。これまでに、脂肪の多い食事を食べて朝食を抜くと、体重が増えることをラット実験で確かめてきました。どうやら、朝食欠食が体内時計の異常をもたらすようです。

体内時計という言葉は聞き馴染みがあるかもしれません。第10回でも取り上げましたが、人間の体には約24時間の周期で繰り返される生理現象が多くあります。このような約1日周期のリズムが体内時計です。「朝起きたら朝日を浴びましょう」というように、太陽光は体内時計を整えることがよく知られています。太陽光の他に、食事のタイミングも体内時計に関わっています。太陽光は頭の時計を整えますが、食事のタイミングは首から下の体の時計を整えるようです。

今回、小田准教授の研究グループはマウス実験で、エサの時間をいつもより4時間遅らせて「朝食抜き」の状態をつくり、高脂肪ではない普通のエサを与えました。すると、体温や肝臓、脂肪組織の体内時計が乱れ、体脂肪が蓄積し体重が増えたそうです。さらに、筋肉の体内時計にも異常を来たし、筋肉量は減少。朝食欠食と筋肉量の関係を明らかにしたのは、小田准教授のグループが初めてです。

食事のタイミングが体内時計に影響しており、朝食を抜くと体重増加や筋肉量の低下につながるというマウスでの結果。ヒトにも言えるのなら、体型維持だけでなく、長い目で見たときのメタボリックシンドローム、運動機能が低下するロコモティブシンドローム、加齢で筋肉が極度に萎縮してしまうサルコペニアなど、健康リスクの予防にも役立つかもしれません。

研究を行った小田准教授からのコメントです。

朝食がこれまで長く論争になってきたように、朝食を食べれば痩せるわけではありません。朝食を食べる習慣が、体内時計を正常に調整することによって、健康的に痩せて筋肉を落とさないような体質を作ることが明らかになりました。朝の太陽光が頭を目覚めさせて、朝食が体を目覚めさせます。体の中の時計が上手く協力して動くようになると、健康体質になります。結果的に長年の朝食習慣が生活習慣病の予防につながります。眼の前の体重に気を取られて朝食を抜くよりも、長いスパンで健康的な体質を作っていきましょう。

食習慣を考えるとき、つい食事の内容に注目してしまいがちですが、動物実験では何を食べるかだけでなく、いつ食べるのかも大切なポイントだとわかってきているのですね。食事の内容を変えなくても朝食習慣で太りにくい体質になれるかも!?ということで、私も食習慣を見直そうと思います。

この研究について詳しくは、2022年3月23日発表のプレスリリースもご覧ください。

(文:髙山楓菜、丸山恵)

◯関連リンク
小田裕昭准教授(生命農学研究科)

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