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私が一番寂しかったとき

私が一番寂しかったとき
電子ピアノの前に座って
じっとしていた

日が落ちた
骨壺のような暗い部屋で

寂しいなんて便利な言葉を知らなかったから

居間では母と叔母と叔父といとこが
静かな声で話している
父は神棚の
小さな白い箱のなか

ピアノの蓋を開けて
白鍵と黒鍵を眺めて
そっと閉じた

母が階段を上る音がする
なにしてるの、と声がする

ピアノをみてるの。

私は酷だから

泣かないで。
お母さんが泣くの、わたしこわい。

そうだね、と
母は居間に下りていく

窓を開けるとジョンの寝息が聞こえた

オートバイの荷台に乗って
6月の風に彼がひげをそよがせることは
もう ない


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