CX版「ジョハリの窓」分類が面白い
引き続き、CXを体系的に学び直すための読書を続けています。
CX施策の1つ1つは非常に細かく、どんな目的で何ををするのかは多岐に渡ります。
過去の経験から
(1)解決するべき課題がある場合の施策と
(2)「こうあるべきだ」というビジョンドリブンで考える施策
の2つがあると思っていたのですが、
CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略―顧客の心とつながる経験価値経営で紹介されていた「CX版ジョハリの窓」整理がとてもわかりやすかったです。
この説明を踏まえて、改めて自分自身の感覚とすり合わせてみると
と整理できました。
さらに、事例としてこれまで実践してきたことをそれぞれの窓で整理してみたいと思います。
「盲点の窓」不満をCXの機会に変える
盲点の窓とは、図の右上で、「自社は気づいていないけれど顧客が気づいた不満」への施策。
事後対応になるので、カスタマーサポートで受けた苦情や不満に対してどう向き合って対応するか、というステージです。
NAGOMI VISITでは、ゲストやホストから「今回のホームビジット中こんなことがあった」という負の感情を伴う感想をいただいた時には、徹底的にその背景を調べて分析し、次に同じことが起きないようにするための改善を必ず実行するようにしています。
そしてその経緯は、感想を寄せてくださったユーザーに必ず報告をするようにしています。
ユーザー自身の経験はすでに起きてしまったことではありますが、常により良いプロセスを検討し改善していることをユーザーに直接お伝えすることで、感想をくださったことへの感謝とともに「一緒に活動をよくしている」と感じていただき団体や活動への愛着を持っていただくという目的で、グッドマンの法則に倣っているといえます。
グッドマンの法則とは
盲点の窓をCXの機会にした例
実際に、何がこの「盲点の窓」に合致するかなぁと考えてみたところ、ゲストの遅刻問題がピッタリ当てはまると思いました。
課題と施策、そしてその結果はこんな感じです。
課題:ゲストが遅刻してしまうこと
実践した施策:ユーザーに前提を示した(消費者教育)
結果
遅刻そのものが減った
遅刻が発生しても「外国人はやっぱり時間にルーズだね」という短絡的な思い込みを避けることができるようになった
背景と経緯
課題
事業をスタートして間もない頃、ホスト側から「ゲストが約束の時間に遅刻してきたので、駅で待っている間中心配でした。」という感想が寄せられることがありました。
駅の改札口で待つホスト側にとって、「なぜ来ないのだろう」という心配や人によってはそもそも「遅刻」に対する嫌悪感が強く、大きな負の体験になっていることがわかりました。
また、この件は「やっぱり外国人は時間にルーズだから(遅刻をなんとも思わないのよね)」という誤った認識に簡単に繋がってしまいがち。
時間に対する感覚は文化によって様々ですが、「外国人は時間にルーズ」は明らかに偏見です。これを助長するような状況は好ましくなく、団体のビジョンとしてもできるだけ早く解決したい課題でした。
そこで、まずはなぜ遅れてしまうのか?を突き詰めることから始めました。
「遅刻があった」というケースのゲストご本人へコンタクトし、「当日どんなことがあったのか教えて欲しい」とヒアリングをしたり、ホストにもさらに細かく状況をお聞きして感想から何が起きているのかを整理し仮説を立てました。
ホストはもちろん、ゲストもすでに旅行が終わって帰国し日常生活に戻っているようなタイミングです。にも関わらず、旅先のある1日の出来事について改めて事情を説明することに時間を割いていただくのは並大抵のお願いではありませんので、なぜ聞きたいのかやどう活かしたいのかなど、個別に丁寧にコミュニケーションを取り信頼関係を築きながら調査と分析を進めました。
ヒアリングを重ねてまずわかったことは、ゲスト側で「本当に時間にルーズな人」は皆無だったということ。
むしろ初対面の人の家に行くのだから余裕を持っていたはずだけれど、トラブルがあって遅れてしまったという状況でした。
トラブルの例としては、電車の乗り換えを間違えて迷った、各駅停車ではなく準急に乗ってしまった、タクシーを使ったら渋滞に巻き込まれた、待ち合わせの改札口を間違えて別のところで待っていた、等々です。
2013〜2014年頃の話ですので、今ほどWiFiやGPSも発展しておらず、Google Map さえ満足に使えないような環境。
海外旅行先で、慣れない公共交通機関を使って移動してしかも観光地ではない場所に自力でたどり着くことを考えると、いくらでも発生しそうなトラブルばかりでした。
ヒアリングをして分かったことは、「遅刻が発生してしまうのは、ある程度仕方ない」ということ。
その状況で、ホスト側の負の経験を減らすために運営側でできることは何か?と考えた結果、実践した施策はゲストにもホストにも、予め待ち合わせに関する前提を示しておくのが良いのではないか、ということでした。
適切な情報を提供する「消費者教育」と言い換えられるかもしれません。
ゲストへの情報提供
知らない土地で移動するのは、トラブルがつきもの。
(国によっては電車は時間通りにこないのが当たり前なことも多いけれど)日本の交通機関は非常に時間に正確だから、予め乗り換えプランは完全に確認しておくこと
日本では約束の時間は、ピッタリであることが良いとされる文化。できれば余裕を持って10分くらい前に到着しているくらいがちょうどいい、というTips
5分以上遅れるようなら、必ず電話で状況を連絡してくださいという具体的なアドバイス
ホームビジット当日にあなたを待っているのは、日常の生活をしている普通の人。万が一遅れた場合、駅では実際にホストが立って心配して待っている、という絵をビジュアルで伝えた。
特に5.については、NAGOMI VISIT特有の施策かもしれません。一般的な旅行中のサービス(例:ホテルのチェックインや、予約しているアクティビティなど)の場合、旅行者が時間に多少遅れたとしても何も問題がありません。
でもホームビジットの場合は一般の人が個人的に心配して待っているという違いを強調する必要がありました。
ホストへの情報提供
ゲストは旅行者であり、知らない土地の移動で迷ってしまう可能性はとても大きい
できれば事前に、最寄り駅までの乗り換え等についてメール等でヘルプしてあげられるとお互いに安心できる、というTips
万が一遅れた場合には、何かしらのトラブルに合っている可能性があるので、ぜひすぐに連絡をとれるようにしておくことが望ましい
結果
これらの施策を実践したあと、結果としては「ゲストに遅刻されて嫌だった、困った」というクレーム的な要素を含む声が圧倒的に減りました。
むしろ、「NAGOMI VISITに参加されてお会いするゲストは、皆さん時間に余裕を持って来られるのが素晴らしい」という声が増えたので、ゲスト側への情報提供が功を奏したと言えるかなと考えています。
ゲストもホストもお互いに前提知識を持っていることで、遅刻の発生という課題そのものへの予防策になりました。
また、当然遅刻の発生自体をゼロにすることはできませんが、何かしらのトラブルがあったとしても「約束の時間は過ぎていたものの、お互いに連絡を取り合えていたので安心してお待ちできました」という声が多くなり、「遅刻=時間にルーズ」という偏見に至るのではなく、相手を1人の人としてお互いに思いやりながら事態に対応できる関係性を作りのお手伝いができたかなと考えています。
今後、「秘密の窓」や「未知の窓」についてもNAGOMI VISITでの実践を整理してみたいと思います。