村上龍『限りなく透明に近いブルー』感想
最近夜の間だけ、村上龍の限りなく透明に近いブルーを少しずつ読み進めているのだけれど描写がなかなかにグロくて重くて夢現みたい。
見たことのない映像や感触や感覚が自分の中に流れ込んでくる。読んでいて悲しくなったり気分が落ちたりすることは今まであったけど本当に吐き気を催した小説は初めてだった。
しかし、それを上回るほどの鮮明なイメージを文字によって描き出す力や文章の躍動感やスピード感に圧倒されてページをめくってしまう。内容も描写もグロテスクなのだけれど、それでも読ませてしまうのはさすが力のある作家だと思った。
途中のフルートの話から、この作品に出てくる若者の孤独や無力感みたいなものが痛切に伝わってくる気がした。
また、最後の黒い鳥は何を表しているのだろう。主人公とこの世界の人々を取り巻く冷たい現実?
黒い鳥のメタファーからのスピード感と最後の静寂感の対比が良かった。
余談だけど、映像で喋ったり食事したりして動いている村上龍を見た時は村上春樹が喋っているのを見たのと同じ種類の衝撃が走った。多分、性や内面の心の動きなどの超プライベートなことや暴力や違法薬物の描写をあれだけ詳細に書いて世の中に大公開する人って普通ではないという思い込みが前提としてあったからだと思う。でも、彼らは作家であるから強烈な描写でも物語の進行や内容を示すための1つの表現方法として選んだ可能性は多いにあるから不思議ではないと言えばないのかもしれないけれど。
読了2024.09.11 0:36
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