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い き が あ っ て る ね
終点まで残ったのは、わたしと、目の前のお遍路さんだけだった。
1時間に2本しかない電車。降り立ったホームには屋根すらない。
春の霧雨。わたしの髪の毛に絡まって、雨粒がビーズみたいに流れてく。
改札を抜けると、紫陽花色の傘を差した先生が待っていた。
驚いた。来ると思っていなかったから。
いつもなら皺一つ残さないワイシャツも、今日だけは先生の姿勢の悪さを刻んでる。
ざまあみろです。わたし、今日という今日は何も言ってやらないんだから。
「傘、持っていかなかったろ」
「別に、先生には関係ないでしょう」
「お前なあ、そういうところが……」
次に続く言葉を待たず、白い道中着がわたしたちを追い越した。
「息が合ってるね」
お遍路さんは確かにそう言ったと思う。
「え?」 「はい?」
い き が あ っ て る ね
平仮名に変換して、1文字ずつなぞってみる。
が、はて。
「どこがですかね」
先生はしばらく彼を目で追っていたけれど、
「……今朝は悪かった」
紫陽花の花びらのなかで、そう呟いた。
どんな風の吹き回しだ。それとも先生は、平仮名の真意に気付いたのだろうか。
わたしは、先生の顔をじっ、と見たあとに視線を落とした。手に提げたビニール袋には、コンビニのスイーツが2つ入っている。
相も変わらず狡い人だ。
ふふ、粋がってるね。
前を歩く道中着の白に、この世の全てのひかりが集まっていた。
ふたりして、少し笑った。
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こんにちは、こんばんは。
たけだです。
ショートショートに憧れる大学生です。
頑張ってはみたものの、600字が限界でした。
次こそ、本物のショートショーターに
おれはなるッ!!!どーん!!
紫陽花が見られる季節はもうすぐそこです。
たのしみです、夏斑。
今日も独り言にお付き合いいただき、ありがとうございます。
素敵な一日をお過ごしください🎐
またね- ̗̀☾ ̖́-