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そりゃあ師も走る。


こんにちは、こんばんは。
たけだです。

お久しぶりになってしまいました。
意図せず、意図せずですよ、ほんとうに。
ほんとうです、忙しかったんです、きっと。

困った時には猫ちゃんのふりをして誤魔化しなさい、と教わってきたので一旦そちらで乗り切らせていただきます。



にゃー ^._.^



元気です、けっこう元気にしてました。

夏の終わりに高知へ旅行したり、
その川の青さに目を奪われたり、
学祭でダムダムとドラムを叩いたり、
忙しい友だちがそのステージを観に来てくれて、
じんわり うるっとしたり。

初めての足つぼマッサージに撃沈したり、
バイトのみんなで小学生用のドリルを解いたり、
引っ張り出してきた秋服から去年使っていた柔軟剤の香りがしたり、
卒論に追われて情緒が死んだり、
好きなものを好き!と大きな声で言えるようになったり。

新しい挑戦をしてみたり(結果はまたこちらで報告させてください)、
これからもきっと忘れられないんだろうな、と思えるような抱えきれないご褒美をいただいたり、
ユニバで高校生みたいに はしゃいだり、
季節外れ(?)のハロウィンパーティーを開催したり、
だいすきな芸人さんに会って、あまりの"愛”に、
漫才メンヘラになりかけたり(?)

失恋したり、飲み会したり、二日酔いになったり、
友だちに失恋確定☆ヤケクソ神戸旅行に付き合ってもらったり(その節はほんとうにありがとう)、
わたしには、「自分は大切にされて当たり前」という自覚が欠落していると指摘されたり。

ほろ苦ぇ秋を過ごしました。ほろほろ。

それでも、自分のご機嫌は自分でとらなきゃいけないわけですし、「まあ、わたし可愛いし」と力技で乗り切る自分も案外好きです。



あらためまして、わたしの大切なみなさんへ。
わたしと一緒に居てくれて、わたしの文章を読んでくれて、わたしの言葉を信じてくれて、どうもありがとう。

"いつか”あなたとここへ行きたい。
"いつか”あなたに伝えたい。
"いつか”あなたと会ってみたい。
そうやって、わたしの"いつか”になってくれて、延命措置になってくれてありがとう。


わたしは多分、優しくいられない日もありますし、面倒な日もあります。余計なことを言ってしまう日も、きっとあります。

迷惑をかけてしまうかもしれないけど、傷つけてしまうかもしれないけど。
だけど、絶対にそれで終わりにはしないので。
だから、信じてそばに居て欲しいと思います。

今年も冬がやって参りました。
どうかみなさま、温かいひかりの中に居てくださいね。


前置きが長くなってしまいました。
通常運転です。

だってだって。ここ最近はね、素敵な人たちに囲まれているなあ、幸せだなあ、この時間がずっと続けばいいのになあ、と思う瞬間に溢れているんです。ありがたいことに。

愛おしくて、全部見逃したくなくて、何もかもを覚えておきたくて。
でも人は移り変っていくものだから、だからせめてこの文章には残しておきたいと思ったんですもん。
そんなこんなで、わたしは今日も元気です。
まだまだ元気で居なくっちゃ。


与えられたものを、わたしは何一つみんなに返せていないんだから。



𓂃 𓈒𓏸◌𓂃 𓈒𓏸◌𓂃 𓈒𓏸◌𓂃 𓈒𓏸◌𓂃 𓈒𓏸◌𓂃 𓈒𓏸◌𓂃 𓈒𓏸◌𓂃 𓈒𓏸

本題に入ります。
今年ももうゴールテープが見えて参りました。
ひぇっ、もう2024年ちゃんが満足そうに手を振っています。自己完結しないでいただきたい(?)
待って!!行かないで!!!

震える速度で年の瀬です。
そりゃあ、師も走るわけですわ。


今年はね、たくさんの目標をもって挑んだ一年でした。その中の一つに、「読書記録をつける」というものがあります。
一年間、これまでにないくらい多忙な一年だったけど、たくさんの読書体験に恵まれました。

本棚を見せることは、裸を見せることよりも恥ずかしい。
の、ですが、それでもこの世界は良本に恵まれ過ぎています、あまりにも。

なので、せめてお裾分けの気持ちで、今年読んだ本の中から、わたしのお気に入りを紹介したいと思います。最後まで読んでくれたら嬉しいです。
ランキングをつけるのはどうか、と迷ったのですが、オススメしたい本があまりにも多過ぎて収集がつかなくなりそうだったので、致し方なく。

2024年のベスト5を紹介します。
なるべくネタバレは回避します、してみせます!させてください!!

なので、安心感をもって、春のパンまつりでもらえる白いお皿くらい(あれ、ほんまに落としても叩いても、いや、流石に叩きはしないけど、それくらい何しても割れないんです)の安心感をもって、最後までお付き合いいただけますと幸いです。

Best,5  
日本のヤバい女の子 静かなる抵抗(はらだ有彩)

「日本のヤバい女の子 静かなる抵抗」はらだ有彩

こちらは、著者・はらだ有彩氏が、昔話に登場する"女の子たち”の不条理や憤りや怒りなんかを代弁したり、深堀したり、時には現代に置き換えたりしながら、新しい視点で切り込んでいくという、斬新かつ新鮮な、女の子のお守りみたいな一冊です。

学校の図書館で偶然見つけたこの表紙がポップで可愛らしくて、それでいて、その鮮やかな雰囲気に似つかわしくない「抵抗」というタイトルに心を惹かれて手を伸ばしました。

古今東西、神話から古典作品から地域に根付いた伝承から。様々な"女の子”の物語を現代口調で抜粋し、それに対して疑問を投げかけていくスタイルで話はサクサク進んでいきます。

どうして、私がこの作品を「女の子のお守りみたいな一冊」だと感じたのか。
それは、繊細ながらも強くて可愛らしくて、芯のある著者の言葉たちに何度も背中を押されたからです。


いくつか紹介させてください。

まったく君ときたら最悪で、最悪で、最悪で、チャーミングなんだから、困るんだよね。

自分の力で抵抗することは、(中略)女性のすてきな振る舞いではないのか?

私たちは基本的にはいい子だ。だからちょっとくらい、心のままに振る舞ってもいいのだ。

迎えに来てほしいとも、どこかへ攫ってほしいとも思わない。待つとか、待たないとかではない。私は今あなたに会いたい。

掲げた理想に今一歩至っていない無力感に抗い、「そんなのは嘘だ、そんなのはおかしい」と思う感情が嫉妬の源泉だとすれば、こんなにアクティヴなマインドはない。

背が高い方が好きだけど、高すぎると並んで歩きたくない。少しぽっちゃりしているくらいがかわいいけど、太りすぎているのはちょっと・・・・・・。なんて二度と言えないくらい、衝撃的なものを見せてあげようか。驚いて舌を噛まないように、口を閉じておいた方がいいぜ。

もういいじゃん。変わらないなんて無理だよ。全部流れていくんだから。受け入れた方が楽なんだから。それでもやっぱり明け渡せないものが、どうしても譲れないものがある。

幸せでいてほしい。できれば近くにいられて、その幸せが私によって齎されているなら、もちろんとてもうれしい。もし仮にそうでなくても、とにかく幸せなら何でもいい。私もできるだけご機嫌に暮らすから心配しないで。でもたまに泣きつかせて。

ね、女の子ってやっぱり最高に面倒くさくて、嫉妬深くて、我儘で、それでいて最高に可愛いよね〜〜!!
それはそう。でも、それで終わらないのが本作です。

現代にも通ずる女性蔑視や男尊女卑、根強く残る性差別や偏見。巨大で、数が多くて、一人ではどうしようもない。そんな歴史の壁に阻まれた時、それでも、あなたは怒っていいんです。

"仕方ないから”とか"そういうものだから”とかじゃない。あなたが丁寧に扱われない時、理不尽に人生を狂わされた時、あなたのなりたい"あなた”でいられない時、わたしはとても悲しい。
あなたの代わりに、あなたの傍で旗を振って「こんなの、おかしい!」と声を上げてみせるから。
だから、どうかあなたも怒ってください。心の底から抵抗してください。

そんなメッセージが込められた本だと、わたしは受け取りました。

読み進めていると、「分かる!そうなのよ!」と、まるでわたしの心を代弁してくれているように感じられる瞬間も、「どうしてそんなに理不尽な目に・・・・・・」とわたしが"彼女たち”の心を代弁している瞬間も、両方ありました。

目の奥が、じんッと熱くなる瞬間も、あまりに開けっぴろげな表現に天を仰いだ瞬間も、わたし自身と向き合い直した瞬間も。すべて、この本がわたしの奥底に眠る違和感を引きずり出してくれました。やっぱり言葉にするとスッキリします。

怒ってください。泣き寝入り、なんて可愛いあなたでいる必要はないのだから。

読みやすい本です。少々下世話な話題もありますが、すべてまるっと人間ですから。品の有無には今日だけ目を瞑ります。
でも、読みやすさの裏に、自分と向き合う難しさを隠した一冊だと思いました。
理不尽なことがあった時、大切なわたしを蔑ろにされた時、きっとわたしはこの本のことを思い出して、精一杯怒るのだろうと思います。
ね、だから、みなさんも是非ご一緒に。


Best,4  
人間失格(太宰治)

「人間失格」太宰治

「今更、何を仰る・・・・・・」と思われても仕方ありません。実は、実はですよ、ここだけの話。本作をちゃんと読んだのはこれが初めてでして。

やめてください、ヒィいい、これでも文学部生なんです。あ、ちょっと、お願いですから先生には言いつけないでッ!!

でも、やっぱり、太宰治すごい……。すごい、凄すぎる。
いや、今更こんなことを言うのもほんっっとうに恥ずかしい話なのですけれども。

滑らかすぎる文体の中に、ゾワッと血液を逆流させられるような不快さ、言葉の凄みみたいなものを感じました。良い・・・・・・最高の不快感。
いやでも、言い訳をさせていただきますと、同じく太宰治の作品「トカトントン」は読み通しておりまして!!
これがね、「トカトントン」を読んで、「わたしは、太宰治が好きだ!!(ドーン)」となって、今回改めて「人間失格」に手を伸ばしたわけでございます。

ここから先、少々ネタバレ(と言えるのかどうかも分からないくらい有名過ぎますよね、ハイ)を含みます。ご了承を。

有名どころである最後の一文「神様みたいないい子でした」は流石に知っていたのですが(ドヤ顔すらできません、すみません)、長い本文を追っていって、ようやく最後の最後に落とされる一文がコレっていう、その一連の流れに沿って読むことで、より迫りくるものがありました。

「人間、失格」と本文の中でタイトルが回収される前後の文脈はあまりにも秀逸で痺れます。痺れました。

何と言えばいいんですかね、滑らかなんですよね。多分文章そのものに切れ目があまり無いのでしょうね。故に、意識の流れみたいなものが自然と出来上がっていて、読者はその流れに沿って主人公と心中することになるので、この世界に抵抗できません。
すごいなあ、すごいなあ。

下手をすると俗っぽく感じられる性的な場面でも、直接的な表現がないからか自分はとても読みやすかったです。やはり、人もモノも言葉も、上品なものの方が好きです。
どこか色っぽくて妙に艶っぽいんです。だって、直接言わない方が、こっちの方が、品があって余計に熱を帯びちゃうんですもの。もッ、文豪って凄い。
この理屈っぽい感じも嫌いじゃないな〜〜!!

と、まあいちいちリアクションをしながら読了しました。読んでよかった。読めてよかった。
純文学が、やっぱりわたしはだいすきです。

青空文庫でも手軽に読める作品なので、もし気になった方はこの機会に是非。


弱虫は、幸福をさえおそれるものです。綿で怪我をするんです。幸福に傷つけられることもあるんです。

人間にはその場の一本勝負にたよるほか、生き伸びる工夫がつかぬのだ。

心地の良い闇へ、御一緒に堕ちて参りましょう。


Best,3  
クドリャフカの順番(米澤穂信)

「クドリャフカの順番」米澤穂信

みなさん、「氷菓」シリーズをご存知ですか?
わたしは今年どっぷりハマってしまい(この理由については、未来のわたしが後でアツく語ってくれていると思います)、あっという間に全作読み尽くしました。

まずは、「氷菓」の大まかなあらすじを。

「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」をモットーに掲げる高校生・折木奉太郎。
奉太郎は、高校進学をキッカケに、姉の助言を受けて古典部に入部することになります。
しかし、そこには先客・千反田えるの姿が。
好奇心旺盛なお嬢様・千反田えると、省エネ主義の男子高校生・折木奉太郎が織り成す青春ミステリー「氷菓」。

本作「クドリャフカの順番」は、この大人気「氷菓」シリーズの第3弾となる作品です。

文化祭で奇妙な連続盗難事件が発生。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲。古典部の知名度を上げようと盛り上がる仲間達に後押しされて、奉太郎はこの謎に挑むはめに。〈古典部〉シリーズ第3弾!

KADOKAWAオフィシャルサイトより抜粋

これ、今までのシリーズの中で1番好きかも。。
というか、最新作まで読んだなかでも、1番好きな作品かもしれません。

まず構成が面白いんです。
古典部4人の視点がコロコロ入れ替わるという構成になっています。
トランプの♡が千反田、♤は折木、♢は伊原(古典部のメンバーです)、♧は福部(奉太郎の中学校からの同級生で、同じく古典部のメンバーです)という感じで、今誰がメインで語られているのかが分かりやすい構成になっていて、視覚的にもたのしい。

細部にまで拘り抜かれた伏線には毎シリーズ驚かされます。
読みやすいのに内容は深いし、人物描写は前作、前々作から更に深くなってきたし、面白いったらありゃしません。
ユーモアに関しても、もッほんとうにセンスが良い。本当に目の前に古典部4人が存在しているみたい。わたしが幻の5人目なのかもしれません。

しかし、この作品最大のポイントといえば、わたしの中の福部里志像が少しづつ変化してきたということです。

データベースたる僕が自ら真相を求めるのは、本来、柄には合わない。しかしながら、少しだけ見上げなければならなくなった友をささやかに模倣するため、僕はそれをする。

「クドリャフカの順番」より福部里志

里志は作品の中で何度か、「データベースは結論を出せない」と口にします。知識があることと、それを活かせることは別だと考える彼の言葉です。

そして本作の中で、「期待」という言葉は、自分に自信のある時には出してはいけないという話があります。
これは、一作目「氷菓」事件、二作目「女帝」事件で活躍した奉太郎と、データベースである福部里志とを比較した時、自分にはそれを成し遂げることができない、と奉太郎に探偵役を託そうとする場面で登場します。

でも、どうだろう。
期待ってそんなにネガティブな言葉なのかな。自分に適していないことは、いっそのこと、誰かにどーんと任せちゃって、その分、自分の領域でしっかり働いたらいいんじゃないかなとわたしは思います。
里志は、自分を客観視でき過ぎるが故に、自分の強みを理解していないんじゃないかな、とも。
なんだかね、この福部里志という人物は寂しいんです、切ないんです。

わたしなら、君の隣に立ってでっかい声で「お前には!お前の強みがあるだろ!」と言いたいです。
しかし、大方曖昧な顔をして流されるだけだろうと思います。この人にとって、欲しい言葉はそれではないのですから。
「データベースは結論を出せない」
この言葉に滲み出る彼の心境。
今回この人物の深淵を見た気がしました。

知れば知るほど、好きになる「氷菓」シリーズ。
わたしの1番のお気に入りは、この福部里志というキャラクターです。でも、伊原摩耶花もとっても良かった。

古典部と漫画研究部を兼部する摩耶花。
見た目は子供っぽくて幼いけれど、気が強くて、でもそれは本当に強いわけじゃなくて、強くあろうとしているだけの、ただの女の子。
大変な役回りが多くて気の毒になる場面もありますが、その分古典部メンバーの安心感・安定感が引き立っていて、結果的には良い材料になっています。

そして、本作は全体的にテンポ感がすごく良いです。特に、文化祭でのお料理対決のシーンは圧巻で、実に手際良く進んでいきます。
一気読み必須の一作ですね。

シリーズも3弾目ということで、少しずつ古典部4人の人間性が読み解けてきた気がします。
というかねッ!!里志と摩耶花の関係性が気になってしょうがないんです。これは、ほんとうに是非読んでいただきたいのですが、淡すぎる……淡すぎるぜ。

しかしね、一つハードルがありまして。
この米澤穂信さんの作品は、やっぱり基礎的な教養が高くないと充分に楽しむことができないと、読みながら何度も痛感しました。イタイ。

自分の中の語彙力(語彙力は人よりあるのかもしれないけど、知識として沢山の語彙を持っているだけではダメで、要は使い方を知らなきゃ武器にならないってこと)の乏しさ、これを毎回突きつけられます。
でも、だからこそ、楽しい。学ぶべきことは、いつだって近くに溢れていますから。

自分とは比べ物にならないほどのセンス・才能。そんな才能溢れる人を見て、自分の分まで期待して、その期待が裏切られて、失望して、その順番はいつかまわってくるのだろうか。「クドリャフカの順番」。タイトルも秀逸です。

最後の一文も、ね、最高過ぎ。
え、ちょっと待ってください。絶対自分で文庫本買います。というか、これまで読んだ米澤作品は全部買い占めます。

乗り越えるべきトラブルがあるなんて、なんて素敵なことだろう!

「クドリャフカの順番」より福部里志

語彙は豊富だと思ってるんだけど、役に立つ言葉はあんまり知らないんだよ。

「クドリャフカの順番」より福部里志

いつも貧乏籤(くじ)を引かせて、本当にごめん。あとで埋め合わせるから決めといて。じゃ、任せたよ。

「クドリャフカの順番」より福部里志

どっちを重要視するかといえば⋯⋯。まあ、摩耶花の笑顔に繋がる方だよね、やっぱり。

「クドリャフカの順番」より福部里志

チャンスには大胆に。

「クドリャフカの順番」より千反田える

嬉しそうに手を振るのは、ちーちゃんだ。そんなに急いでどうしたの、と訊こうとしたけれど、その前にちーちゃんに腕を掴まれた。随分温かい手の平だな、となんとなく思った。

「クドリャフカの順番」より伊原摩耶花

「氷菓」を売るのに忙しくてちょっとわからないが、待て、いい響きだ、もう一度。「氷菓」を売るのに忙しくてちょっとわからないが、

「クドリャフカの順番」より折木奉太郎

自分に自信があるときは、期待なんて言葉を出しちゃあいけない。(略)期待っていうのはね、諦めから出る言葉なんだよ。

「クドリャフカの順番」より福部里志

こういう穏やかな顔を見せるときは、千反田は本当に楚々として見える。俺はこれを、詐欺だと思っている。

「クドリャフカの順番」より折木奉太郎

好きな表現が多すぎて全然選べませんでした〜〜!!でもこうしてみると、やっぱり福ちゃんが好き過ぎてますね、わたし。
4人の関係性がほんっっとに良過ぎて、でも、アア、ここだけ切り取っても到底伝わるものではなくて。嗚呼アア。
絶対に全作読んでもらいたいです。


Best,2  
ラブカは静かに弓を持つ(安壇美緒)

「ラブカは静かに弓を持つ」安壇美緒

少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。 ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。 目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。 橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。

集英社文芸ステーションより抜粋

「聴覚作品を文字で??」と初めはかなり不安でした。音楽作品ってこの世に溢れかえっているけど、ドラマとか映画とかアニメとか。そういう「直接耳へダイレクトイン!」みたいなイメージが強くて。だから、文字作品でどのように音を表現するのか興味津々でした。

一読してみて。
もッとにかくですね、作者の安壇さん、日常の中に潜む一瞬の煌めきを切り取るのがほんとうにお上手な方です。
そして、その一瞬が、たくさんの奇跡の連続で形成されているということを認めざるを得ない作品でした。
でも、それほどに危うさを感じる作品でもありました。
奇跡のように愛おしい時間と、現実の儚さが絶妙なバランスで保たれていて。
主人公・橘のささやかな幸せや安堵がずっと続いて欲しいと願わずにはいられません。

総じてメインキャラクターのキャラ立ちも良いですし、終わり方も子気味良くて好きです。普段、割とバッドエンドばかり引き当ててしまうわたしですが、今回ばかりは勝訴です(勿論、後味最悪な仄暗バッドエンドも最高〜〜に好きです)。

そして、何より圧巻の語彙力。。
先ほども申し上げましたが、「聴覚情報ナシの音楽小説なんて・・・・・・」と疑念を抱いていた少し前の自分をぶん殴ってやりたいです。。
世界は広い。学ぶべきことはやっぱりたくさんあります。

そしてね、音楽を経験してきた身として、共感できる場面が多々ありました。堪らなく愛おしい気持ちになりました。
特に発表会のシーン。音楽は、始まってしまえば必ず終わる。何度も何度も、繰り返し練習したフレーズも、たった数秒で跡形もなく消え去る。だから、どうか、終わらないでくれと願う。
分かるんだよな〜〜!!胸が締め付けられる、、苦しい。慌ただしくて、何よりも美しい魔法のような一時。

チェロをBGMに携えて、一気読みしてしまいました。
読後、柔らかな充実感が胸いっぱいに広がるあの感覚。これこそが読書の醍醐味です。

浅葉先生の言葉に、わたし自身何度も救われました。

そして、全て読み終わったあとに、改めて斉藤壮馬さんのコメントを読むと、「そうそう!そうなのよ!」と首が取れちゃうくらい納得できました。
はなまる満点なコメント。
天才なのかもしれません(単行本の帯に斉藤さんのコメントが……天才です)。

どうか、これからも、橘のささやかな日常が優しい光のなかで続いていきますように。

それでも、死ぬ時に後悔したら困ると思ったから。

「ラブカは静かに弓を持つ」より橘樹

これは独り言ですが、この橘の言葉って、突拍子がないように思えて、実はどんな理屈よりも強く尾を引く動機なのかもしれないと思いました。

わたしもね、途方もない先の未来に、何か自分の支えになるような予定を作っておこうと思います。そうすると、きっと案外生き延びれるものだと思うから。

あ〜〜ほんとに今のわたしで読めて良かった!!!

Best 1,
儚い羊たちの祝宴(米澤穂信)

「儚い羊たちの祝宴」米澤穂信

堂々たる1位は、やっぱり米澤穂信氏の「儚い羊たちの祝宴」!
これなしに、2024年の読書体験は語れません。。。それくらい、衝撃を受けた一作です。

初めて読んだ米澤作品が今作なのですが、
これを読んで米澤さんの創り出す世界観に陶酔→「氷菓」シリーズへ一直線→あっという間に最新作まで追いついてしまう→一刻も早く続編を欲する米澤ゾンビ☆ココに爆誕☆という最高のリレーを体験できた一年でした。

一読して、これは凄いものを読んだ、という凄まじい衝撃を受けました。
わたしはこれまで、新井素子氏や梶井基次郎氏といった、どこか儚げで詩的な作風を好んで参りまして。
でも、今作はそれらとは一線を画すと言いますか。光と影と言いますか。少し強引に言葉にしてしまえば、残酷な儚さと言いますか。
こういう時、自分の語彙力の乏しさに絶望しますね。

5編の物語から成る短編集なのですが、その短編同士が「バベルの会」という点で緩く繋がりを見せていく作品です。
とにかく短編一つ一つの完成度が高くて、読後の満足感が凄い。。

これは本当に全人類にオススメしたい。いや、確かに苦手な人もいるかもしれない。でも、少しダークで苦味のある作品が好きな人には絶対ハマるはずです!!

わたしは文庫本で読んだのですが、持ち運びもしやすかったですし、妖艶でどこか不気味なオーラを放つ表紙が良かったです。
ミステリー好きには堪らない、黒く美しい非日常へと私を連れ出してくれる作品でした。𝑩𝑰𝑮𝑳𝑶𝑽𝑬──────────


一作目「身内に不幸がありまして」

まずは、あらすじを少しだけ。

五歳の時に丹山家へ引き取られた村里夕日は、丹山家の長女・吹子の身の回りの世話をすることになる。
年齢の近い二人は、主人と従者という立場の違いはあるものの、お互いに良好な関係を築いていた。
時は経ち、吹子は大学へと進学し、「バベルの会」という読書会に入った。しかし、夏休みに開催されるという読書会の二日前、七月三十日に丹山家の屋敷が襲撃される悲惨な事件が発生する。


私が大好きな、"タイトルが終末で回収されるパターン”です。ネタバレはできないけど、これくらいは許してください。
冒頭はスムーズに話が進みます。上流階級のお屋敷を舞台にした物語で、「寝ている間に何か本音を漏らしてしまったらどうしよう」という仄暗い不安に襲われる少女たちが登場します。
そして、この夢想こそが、バベルの会へ繋がっていく大きな伏線となっていくんです!言われて嬉しい言葉!伏線回収!!
あとは、唐突な展開に、頭を殴られたかのような衝撃を受けます。「え?は?何それどういうこと??」と、一気に物語を見失うのが新鮮かつ斬新な感覚。
とにかく!結末の一文がたまらなく良いので、一人でも多くの人にこの衝撃を味わって欲しいのです。


二作目「北の館の罪人」

こちらも、あらすじをば。

母親の遺言に従い六綱家に向かう内名あまりは、六綱家の別館である北の舘に住むことになる。その北の舘には、『先客』である六綱早太郎が静かに暮らしていた。あまりは、早太郎の世話と監視の役を与えられる。しかし、その一方で、早太郎からはある買い物を頼まれる。

これも良かったです。。
「犯罪者は赤い手袋をしている」という言葉が2回出てくるのですが、1回目と2回目でその印象が少し変わります。こちらも、終盤で明かされる真意に驚きます。
本物の罪人とは一体誰なのか、早太郎様は全て気付いていたのか。冒頭と終盤で主人公の見方がガラリと変わる一作です。

三作目「山荘秘聞」


ね、二度あることは三度ある。あらすじです。

八垣内にある別荘「飛鶏舘」の管理を任されることになった屋島守子は、ある日、崖の下に倒れている男を発見する。屋島がその男を「飛鶏館」へ連れていくと、彼は越智靖巳と名乗り、山岳部の仲間が助けに来ると言い寝てしまう。その後、越智の言葉通り、「飛鶏館」に人が訪れるのだが──。

これは言葉にできない憤りを感じる作品でした。
遭難者を匿っておきながら、自身の中の仄暗い欲望に従順な主人公が登場します。
もうね、一周まわって人間的だとも感じました。
ただ、色々仄めかす描写が多く、一読しただけでは私には難しかった……読解力をムキムキにして再読する余地ありです。
結末の一文で心地好い絶望感に打ちのめされる一作でした。

四作目、「玉野五十鈴の誉れ」


はい、みんなで声を揃えて!
せーの!A・RA・SU・JI!

小栗家の長女・純香は、十五歳の時に玉野五十鈴という使用人を与えられる。
純香は大学進学をきっかけに「バベルの会」の会員となり、家族を説得して五十鈴と二人で暮らし始めるが、伯父が殺人事件を起こしたことによって、祖母から『カエレ』という電報が届いてしまう。

これが!!1番良かった!!
ミステリーなんですが、まず登場人物に心惹かれます。五十鈴、純香の2人が織り成す空気感に微笑む瞬間もありました。
しかし、物語の後半から純香を取り巻く環境が急転。そこから胸が苦しくなるような場面が続き、「お祖母様」に対するどうしようもない嫌悪感を覚えます。

そして何より、最後の一文ですね(というか、これしか言ってませんね、だって、めっちゃいいんですもん)。

全てがあの一文に帰結する。その真意を理解した瞬間、思わずベッドから立ち上がり、「まさか、」と口走りながら廊下に項垂れてしまいました。
嘘やと思うでしょう?これが実は、本当にあった怖い話なんです。母に怪訝な顔をされました。

良い、とても良いです。
全ては語らず、あとは読者の想像任せ。
しかし、放任主義ではなく、ギリギリ、品の良いところまでは手を引いて、あとはどうぞご自由に、地獄へ落ちてくださいませ、と言わんばかり。
私もこんな絶望が書けたら、と思います。
やはり、凄いものを見る度に、ちょっとずつ、貪欲になっていくね。
私にとって、これまで読んだどの短編作品より満足感のあるマスターピースな一作です。
是非、ご賞味あれ。

五作目「儚い羊たちの晩餐」


アリーナ〜〜!腹から声出せぇぇえ!!
あ!ら!す!じ!いぇ〜〜い!最高だぜ!!


一人の女学生が荒れたサンルームで一冊の日記を手に取る。最初の頁には「バベルの会はこうして消滅した」と走り書きがあって──。


これは、短編同士を繋ぐ橋渡し的な存在の物語です。
まだまだ古典にも文学にも精通していないわたしですか、「儚い羊たちの晩餐」という、作品全体の要となるこちらを読んで、なんとか物語の全容を理解することができました。

後書きも読みました。とても良かったです。
特に、あとがきにある
「世界が悪意に満ちているように見えるほど非情な実体を持つならば、その中でしたたかに生き残ろうという当然の意思も、あるいは悪意に近いかたちを取らざるを得ないのかも知れない」という文章には痺れました。
人に借りた本なのですが、是非自分でも買いたいと思う一冊でした。良い読書体験、ありがとう。




あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の
ながながし夜 ひとりかもねむ

「拾遺集」より恋3・773 柿本人麻呂

と、このような感じで、今年も大豊作な一年でした。読書、ほんとうにたのしい。

ことん、と死んだように眠る静かな冬の夜。
寒いのは苦手ですが、ずっと続いていくような冬の夜は割と好きです。
みなさまも、お気に入りの本を片手に特別な一時をお楽しみくださいね。温かくして眠ってね。

それではまた。

今日も独り言にお付き合いいただき、ありがとうございます❄️
素敵な一日をお過ごしください。


〜番外編〜

暗号解読(サイモン・シン)
→現在、読み進めております。少々お待ちを。

夏の夜の夢(ウィリアム・シェイクスピア)
→卒論の関係で読み進めております。こちらも読了を急ぎます。

〜番外編2〜

IMAX ルパン三世カリオストロの城(45周年記念上映)
→昨日、観に行きました。絶対どこかで語らせていただきたいです。絶対!!


to be continued……❓

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