タルマーリーと山形小学校 ー 徹底的に鳥取旅 自然と共に生きる町 智頭町を巡る ー
それは、昼食難民の気配が漂い始めた時分であった。
やばい、もう13時を回っている。
智頭宿をぐるっと回った後、この歴史ある宿場町を離れ、山奥のお店に向かった。が、なんと臨時休業だったのだ・・
ということで、再び智頭宿へ戻ってきた、我らなぐなぐツーリスト。
カラン
ドアを開ける。
智頭宿の駐車場からすぐのお店に、吸い込まれるように入った。午前中の散策では気に留めなかったお店、こんどは不思議と惹かれた。
これが、タルマーリーとの出会いであった。
初秋、平日の昼下がり
地中海風の店内、冬には使われるのであろう暖炉も見える。店の入り口には、自家製のパン、そして全国からセレクトした食材や調味料が並んでいた。
ゆったりと時間が流れる店内
適度にまばらに客がいる。
客に交じって、お店の方なのか隣の席で商談をしている。こんな雰囲気でゆったりと仕事をするのも悪くないなぁと考えていると、食事が出てきた。
猪肉のハンバーガーと、旬野菜のピタサンド。
一口食べた瞬間、うまい! と、唸る味ではない。猪のミンチ肉は薄味で、物足りなさすら感じた。
がなぜだか、じんわり優しいパンの味わいに惹かれた。さらりと、お腹に収まる味だ。
あっ!
壁ぎわにあった本に、妻が気づいた。
妻が、読んでみたいと思っていた本が、そこにあった。
なんと、著者のお店だったのだ。
何というめぐりあわせ、
もともと、滝めぐりをする予定であったのが、通行止めで智頭宿へ変更。そして、最初に行こうとしたお店は、臨時休業。
そして、たどり着いたのがここ「タルマーリー 2号店」
突然ですが、
本の紹介をしよう
この本は、格(イタル)さんと麻里子(マリコ)さん夫婦が切り盛りしているお店、「タルマーリー」の起業話である。
ただのパン屋さんではない。このパン屋さん一風変わっているのだ。
野生酵母、野生麹を使ったパン作りをしているのだ。
蒸したお米を、数日空気にさらす。
空気中に浮遊している麹菌が降りてきて、お米に付着繁殖する。こうして野生の麹菌から米麹を造るのだ。同様に、小麦を発酵させる酵母も、乳酸菌も野生のものを使っているのだ。
ところがどっこい、
野生麹の採取が、極めて難しいのだ。
本書によると成功したのが数年に1回!とのこと、空気が澄んでいるときしか、麹さんは舞い降りてこないのだ。
農薬散布のあとは、麹(善玉菌)が降りて来ず代わりに悪玉菌が繁殖し、米が腐敗するそうだ。また、使用するお米も無農薬のものを使わないと、やはり悪玉菌が繁殖しダメらしい。
著者によると、ここ最近成功率があがった、その理由は・・
コロナ禍
人の移動が制限され、空気が綺麗になり、結果麹が元気になったのだ。
空気が澄んでいると、善玉である麹が繁殖するとともに、食品はカビないとの事。そういえば・・思い当たる節がある。
田舎育ちのオイラ
小学生の頃、食事の余り物は、蝿帳をかぶせたまま、常温保存されていることが多かった。
お腹を壊した経験はなかった。
が、高校生になったくらいからか、冷蔵庫に入れないとカビて食べられなくなった。
昨今、飲食店に行くと、毎回テーブルをアルコール消毒している。が、もしかすると、我々は自分で空気を汚し、せっせとカビやすい環境を作っているのかも知れない。
美味しいパン 好きですか?
このタルマーリーの目指すパンは、
コンビニ弁当は、美味しい
が、翌日以降の体調や気分はどうだろう
数日後の体調まで考えて、美味しいと表現してこなかった自分がいる。
自分にとって美味しい、と言う言葉の意味をアップデートするときが来たようだ。
◇◇
食事を終え、次なる目的地は・・
旧山形小学校
智頭町には、小学校が6つあった。現在は、統廃合されているが、旧学区を中心に、5つの協議会という自治組織が運営されている。
廃校になった小学校や、保育園などの活用方法を、地域の協議会が決定する。この山形小学校は、林業に関係する企業を誘致していた。
お邪魔にならないように、当時の様子が残る校舎の見学をさせていただいた。
まわり一面、真っ白な冬も大好きなんです。
それはそれは、神秘的な景色ですよ。
対応いただいた、協議会の女性のことばは、地元愛に溢れていた。
冬また来ます。
言葉を残して、小学校をあとにする。
タルマーリー1号店は、保育園の校舎を活用している。パンだけでなく、ビールも野生の酵母を使用して醸している。
昨夜飲んだ日本酒も、酵母無添加(つまり蔵に住みついている野生の酵母)で醸されたお酒であった。
こういった土壌があったからこそ、地元の協議会はタルマーリーのクレイジーな提案を評価したのかもしれない。
そこは、最先端の町、自然と共に暮らす町
であった。
(つづく…)
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