
うつくしい人へと嫉妬心
『うつくしい人』(西 加奈子)の感想
1.嫉妬心の正体
姉の美しさを決めたのは、私の卑屈な心だ。
姉が私に「自分は汚い」と思わせていたのではない。
姉は、ただそこにいただけだった。
なんでも悲観的に捉えてしまう私。
やりたいことを楽しんでいる人、
幸せな家庭を築いている人、
稼いでいる人、
うつくしい人。
こういう人を見ると苦しくなる。
でもそういう人から実際に馬鹿にされたことなどない。
私が勝手に卑屈になって、嫉妬しているだけ。
そんな自分に気付かせてくれた一節。
2.不機嫌な自分を大切にする
昨日だって、あった。
一昨日だって、その前だって、 ずっとずっと、変わらずそこにあった海だ。
なのに、今日のこの美しさは尋常ではない気がした。
天気の悪い日や、寒い日は、違った顔を見せるのだろう。
灰色がかってみすぼらしいときも、 ごうごうと暴れてこちらを突き放すときも、あるのだろう。
海も変わるのだ。
こんな立派な海が。
では、 私が変わることくらい、環境によって自分を見失ってしまうことくらい、起こりうることなのではないか。
自然と人間を例えるのはよくある話。
「止まない雨はないから、今のこの悲しみもいつかは消える」的な。
今回は海と私。
ありきたりな例えのような気がするのに、今の私にはとても新鮮に感じて、心にストンと届いた。
私は、自身の心が海のように変化が激しいことを自覚している。
機嫌の良し悪しが態度に出やすいのだ。
穏やかな人でいたいから、なるべく演じているけれど、すぐにほころびが出る。
そんな自分が嫌になって、自己肯定感の低い私がまた顔を出す。
でも海も私も諸行無常。
ずっと一定でいるなんてできない。
心の中はどれだけ渦巻いていたっていい。
渦巻いて、
大雨で、
大波で、
突風が吹き荒れる。
でも表面上は穏やかに。
すると、どうだろう。
この渦巻きは
誰も知らない私だけの秘密。
そんな自分の心を愛おしく大切にできたら、
人生もっと楽しくなるような気がした。
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