税金で運営している認可保育園は小学校休校等対応助成金を申請すべきではないのか
新型コロナウイルス感染症の影響で小学校などが休校などになった場合、通っている子どもの保護者に特別有給休暇を与えた企業は、国から助成金を受け取ることができます(小学校休校等対応助成金)。
保育園で働いている保育士などに子どもがいる場合も同様で、保育園が保育士などに特別有給休暇を与えれば、保育園は助成金を受け取ることができます。
ところが、認可保育園については、その運営費が税金で賄われていることから、税金の二重取りではないかとして、助成金の申請をすべきではないという意見があるそうです。
このことについて、なぎさっとさんはどう思いますか?とご質問をいただきました。
結論から言うと、認可保育園であっても、制度がそうなっている以上は申請して問題ないと思います。
そのように思う理由をまとめました。
〜〜〜 追記(2020/06/02) 〜〜〜
私立の認可保育園で勤務する人も小学校休校等対応助成金による特別有給休暇の対象となる旨が厚生労働省のQ&Aにより明示されました。
新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金 Q&A(PDF)
Q9-12 ★
保育所、認定こども園、幼稚園又は地域型保育事業所(小規模保育、家庭的保育等)(以下「保育所等」という。)で勤務する労働者も対象になりますか。
A
私立の認可保育所等や認可外保育所(東京都の「認証保育所」を含む。)で勤務する方は対象になります。ただし、公立の保育所等で勤務する方は支給対象外になります。
また、私立の認可保育園が小学校休業等対応助成金を受給することができる旨と、助成金の活用にあたっては人件費の支出について適切に対応することが望ましい旨が、内閣府により明示されました。
26 休業補償(小学校休業等対応助成金)
小学校等の臨時休業等に伴い、子どもの世話を行うため出勤できない職員がいるのですが、小学校休業等対応助成金を受給することができるのでしょうか。
公定価格と小学校休業等対応助成金は支給する趣旨等が異なることから、要件を満たす事業者については小学校休業等対応助成金を受給することができます。
なお、助成金の活用にあたっては、公定価格で施設の収入が保証されていることを踏まえ、代替要員の人件費等の追加的な費用に充てるなど人件費の支出について適切にご対応いただくことが望ましいと考えております。
〜〜〜 追記終わり 〜〜〜
小学校休校等対応助成金とは
小学校休校等対応助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響で小学校などが休校などになった場合に、企業が子どもの保護者に対して通常の有給休暇とは異なる特別有給休暇を与えた場合に、国が企業に対して助成金を支払うという制度です。
小学校だけではなく、幼稚園や保育園が臨時休園になった場合も対象です。
さらに、臨時休園だけでなく、自治体から登園自粛要請があった場合に保護者が自主的に子どもを休ませる場合も対象です。
助成金の詳しい内容については、こちらの記事をご覧ください。
認可保育園の運営費について
認可保育園には公立と私立があります。
私立の認可保育園を運営する社会福祉法人や株式会社には、国が運営費となる「委託費」を支給しています。
委託費の財源は、国・都道府県・市区町村の税金と、保護者が支払う保育料です。
委託費には、人件費・管理費・事業費などの使途範囲が定められています。
ただし、条件を満たす場合には、他の使途に充てることができるという裁量が保育園に与えられています(弾力運用)。
委託費の金額は、園児の数や保育時間などにより定まります。
新型コロナウイルス感染症による臨時休園などで、保育する園児の数や保育時間は変動していますが、委託費は通常どおり支給されることになっています。
保育士の子どもの学校が休校になった場合
保育士や調理師など、保育園で働く方で、お子さんがいらっしゃる方は少なくありません。
そのお子さんの学校や保育園などが休校などになっている場合も当然あります。
小学校休校等対応助成金の対象者には、業種・職種の限定はありません。
保育士や調理師など、保育園で働く方も対象となります。
認可保育園であっても、法人が保育士などに特別有給休暇を与えた場合には、助成金を申請することで、助成金を受け取ることができます。
認可保育園は助成金の申請をすべきではないのか
このように、私立の認可保育園は、委託費を通常どおり受け取りながら、小学校休校等対応助成金を受け取ることが可能です。
これは税金の二重取りではないか?
認可保育園は助成金の申請をすべきではない。
という意見があるそうです。
私としては、冒頭に書いたように、制度がそうなっている以上は申請して問題ないと思っています。
文句があるなら、制度を作った国に言う、ひいては選挙に行くのが筋だと思います。
今回の制度は、「小学校などが休校などになった保護者」という特定の人(と、その企業)を優遇する構造になっており、そこに当てはまらない人から批判や嫉妬が生じてしまうのは避けられないと思っています。
私が上記で紹介した小学校休校等対応助成金の記事を書いた際にも、たとえば独身や子どもがいない人からの「これだから子持ち様は」という批判を覚悟していました。
(実際にはそのような批判は、今のところありません)
そのような想定される批判に対する私の回答は、やはり「批判は制度を作った国へどうぞ」「選挙へ行ってください」といったものでした。
助成金の記事にも書きましたが、制度がある以上は「使えるものは使って生き延びましょう」と思っています。
二重取りが生じてしまう制度設計がおかしいのか
そうすると、批判を国へ言うことを前提として、二重取りが生じてしまうような制度設計がおかしいのかという話になります。
私の考えとしては、おかしくない、またはやむを得ないと思います。
一般企業でいえば、昨今の情勢で売上が減少している企業が多い中、逆に売上を伸ばし、株価が上昇している企業もあります。
たとえば、テレワークに必要な機材やソフトウェアを作っている企業などが挙げられます。
そのような売上が減少していない企業を助成金の対象外にすべきかというと、そうではないと思います。
今回の助成金の目的は、まず第一に新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐこと、そのための休校要請を安全な形で行うことだと思います。
そうすると、売上(認可保育園でいうところの委託費)に関係なく、保護者が安心して休める環境を整えることが大事だと思います。
つまり、これは二重取りではないと思っています。
認可保育園については、税金が絡んでいるので、別の視点が必要かもしれません。
しかし、委託費があるからといって、保育園が儲けているわけではないです。
(だから保育園の先生方は節約のためにいろいろなものを手作りで用意してくださっています)
また、委託費が通常どおり支給されたとしても、弾力運用により、休業した保育士に給料として支払われるとは限りません。
もともと保育士の数も基準ギリギリでやっている園が多いですし、保育園は何かとブラックみがあります。
保育園の経営者にインセンティブを与えるためと考えれば、(二重取りだとは思いませんが仮に)二重取りだとしても許容範囲内だと、一納税者として思います。
保育園が健全に運営されることは、そこに通う子どもの安全のためにも必要なことです。
ここまでが私の考えです。
ご質問いただいた方にも、同じ内容を回答させていただきました。
ご参考になれば幸いです。
参考資料
・小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設しました
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html
・施設型給付の概要と仕組み(PDF)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/handbook2.pdf
・「新型コロナウィルス感染症により保育所等が臨時休園等した場合の「利用者負担額」及び「子育てのための施設等利用給付」等の取扱いについて」にかかるFAQについて
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/taiou_coronavirus.html
・コロナで保育士の「給与4割カット」は大問題だ|コロナショックの大波紋
https://toyokeizai.net/articles/-/345648
最後までお読みいただき、ありがとうございます。