「健康」とは何なのか
2021年1月第1週の食とココロの処方箋。
2021年もどうぞよろしくお願い致します。
今年も暦をたどりながら、四季折々の食事と健康、心の健康、季節の健康情報などお届けしていきたいと思います。
ぜひ聴いてください。
《コーナー①》
最初のコーナーは、「四季折々の食事と健康」。
この番組では、「医食同源」をテーマに、日本の四季と旬の食べ物・その季節にお勧めの食べ物を紹介していきます。
今週の暦です。
小寒(しょうかん)
一年を24に分けた二十四節気と、さらに三分割して72に分けた「七十二候」をご紹介しています。
二十四節気は、1月5日から「小さい」に「寒い」と書いて「小寒(しょうかん)」
いよいよ「寒の入り」ですね。
ここから「立春」の前の「節分」までが「寒の内(かんのうち)」と呼ばれる、一年で一番寒いとされる時期。
年越し寒波の後に、また寒波が来ているそうですから、昨シーズンが暖冬だっただけにさらに寒さが身に沁みそうです。
芹乃栄(せり すなわち さかう)
七十二候は、1月5日から9日まで「芹乃栄(せり すなわち さかう)」、芹が盛んに生える時期です。
芹は「春の七草」としても知られていますね。
1月7日は、一年の健康・無病息災を願って七草粥を食べる日となっています。
中国から伝わった五節句の1つ「人日の節句(じんじつのせっく)」でもあり、この日に七草粥を食べる風習が一般にも定着したのは江戸時代の頃だそうです。
「芹(せり)・薺(なずな)・御形(ごぎょう)・繁縷(はこべら)・仏の座(ほとけのざ)・菘(すずな)・蘿蔔(すずしろ)」
歌のように覚えている方も多いのではないでしょうか。
「すずな」は蕪、「すずしろ」は大根のことで、冬の野菜としても代表的なものですね。
この七草を摘んでくることを「若菜摘み」と言います。
古来、年の初めに雪の間から芽を出した草を摘む風習があって、これが七草粥の元になったとされています。
寒い中でも生えてくる野草の生命力にあやかって、一年の健康を願ったのですね。
お正月のご馳走で疲れた胃腸をいたわるという意味で、現代にも合っているかもしれません。
納豆汁
七草の種類や食べ方は地域によって違うそうで、私の出身地の山形では納豆汁を食べる風習があります。
納豆汁、食べたことありますか?
味噌と 潰した納豆がベースで、具は里芋、里芋の茎を干した芋がら、豆腐、油揚げなどが入っています。
体が温まるし美味しいので、1月7日以外にも食べたくなってしまいます。
七草粥以外の食べ方をする地域の方、ぜひ教えてください。
つめきりの日
1月7日は、年が明けて初めて爪を切る「つめきりの日」でもあります。
七草粥は、前の日の夜に七草を包丁で叩いて水に浸しておいて、7日の朝にお粥を作ることになっていました。
お粥を作る前に、七草を浸しておいた水に爪をつけて柔らかくしてから切ると、その一年間風邪を引かないという慣わしで、「七草爪」というそうですよ。
これは知りませんでした。
「健康」とは何なのか
次のコーナーです。
この番組では、季節の健康情報もお届けしていますが、暦に沿って見ていくだけでも、健康を願う風習というのは本当にたくさんありますよね。
無病息災、不老長寿という言葉もあるように、健康に対する人間の思いは昔から強くあるものなのだと感じます。
2020年は特に健康を意識するようになった方が多かったようですね。
ところで、「健康」とは何なのか、考えたことはあるでしょうか。
「健康第一」「健康のために」などとよく言いますが、どのような状態を「健康」とするのかは、実は幅広く、奥の深い概念だと思います。
1948年WHO世界保健機関設立の時に掲げられた「WHO憲章」の前文には、このように定義されています。
「健康とは、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない」
少しわかりにくいのですが、
「健康とは、病気でないというだけでなく、体も、心も、周りの環境も良い状態である」
ということが言いたいのかなと思います。
みなさんはどう感じますか?
健康の定義は人の数だけあって、答えはないかもしれません。
健康について考えることは、この人生をどう生きたいのか、どう在りたいのかを考えることにも繋がっていき、自分が求める幸せについて考えることにもなるのではないでしょうか。
新年の目標を立てている方、「健康」と言う分野も加えてみてはいかがでしょうか。
「医食同源」
世の中には、健康法や食事法が数多く存在していて、ブームになっては消えていったものもありますよね。
この番組では、「四季折々の食事と健康」を一つのテーマとしていますが、元になっているのが「医食同源」という考え方です。
「医食同源」とは、「医薬と食事は根源が同じである」という意味。
中国に古くからある「薬食同源」の思想を基に、1970年代に日本で生まれた言葉なのだそうです。
「医者いらず」と言われる食べ物もたくさんありますね。
体を作る毎日の食事、大切にしたいものです。
「何を食べるか」は大事なことですが、「どう食べるか」がすごく大事だなと思うことがよくあります。
美味しく食べることはもちろん、適量をわかって食べることが必要なんじゃないかと思っています。
年代によっても、仕事や運動などの活動量によっても、体調によっても、その時々に必要な量や種類は変わってくるものです。
空腹感・満腹感を感じているかどうか、食べている時に食感や味をちゃんと感じているかどうか、どんな時に食べたくなるのか…。
時々見てみると、自分の食べ方のクセやパターンに気づくかもしれません。
この番組でも、旬の食材やその季節にお勧めの食材を紹介していますが、
体にいいからといって
そればかり大量に食べ続けることは
お勧めしていません。
食事制限もそうですが、やりすぎると、どこかで反動がくるものです。
「これは体に良い」「あれは体に悪い」と囚われすぎずに、季節の物を中心に美味しく適度に食べることが何よりではないでしょうか。
「ダイエット」という言葉
「ダイエット」という言葉は、一般的に「食事制限をして痩せること」という意味で使われていますよね。
本来は「食事療法」や「治療食」という意味を持つ言葉で、古代ギリシャ語の「diaita」が語源になっています。
このdiaitaには、「生活様式」や「生き方」という意味もあるそうです。
確かに、
何をどう食べるか、食べないかは、生き方・ライフスタイル
そのものとも言えますね。
食とココロの処方箋、そんな視点でもお伝えしていきたいと思います。
産業医 櫻庭千穂
ラジオ音声はこちらでどうぞ。 https://youtu.be/jqt-o5nPZCI