春は苦いものを食べよ
3月第2週の食とココロの処方箋。
春の陽気が続いたかと思うと、急に冬に逆戻りしたように寒くなったり、寒暖差の大きいこの頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
三寒四温という言葉がぴったりな頃です。
もともとは、中国や朝鮮半島北部の冬の気候を表す言葉ですが、日本では寒暖の変化が大きくなる春先に使われることが多くなったそうです。
寒さと暖かさをくり返しながら少しずつ季節が移り変わっていくこの時期、春が待ち遠しくなりますね。
《コーナー①》
最初のコーナーは、
今週の暦
です。
一年を24に分けた二十四節気と、さらに三分割して72に分けた「七十二候」をご紹介しています。
二十四節気は、3月4日まで「雨水(うすい)」。
3月5日からは「啓蟄(けいちつ)」。
冬眠していた虫たちが、穴の中から這い出してくる頃。
暦便覧には「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ればなり。」と書かれています。
土の中にも暖かい気配が届き、寒さで縮こまっていた虫や蛙や蛇も穴から出て動き始めます。
七十二候
は、3月5日から9日まで啓蟄の初候「蟄虫啓戸(すごもりむし とをひらく)」。
二十四節気と同じく、冬ごもりをしていた虫たちが土から這い出す様子が描かれています。
ここでは啓蟄の「蟄」の字を「すごもり」と読んでいますが、この字は「かくれる」「地中にとじこもる」という意味。
秋分の次候「蟄虫坏戸(むしかくれて とをふさぐ)」、虫が冬支度を始める時期を表す候と対になっています。
咲くは笑う
10日から14日までは、啓蟄の次候「桃始笑(もも はじめて さく)」、桃の花が咲き始める頃。
「さく」は「笑う」と書きます。
笑っているように咲く桃の花が目に浮かぶようですね。
「花が咲く」と「笑う」は、もともとは同じ字なのです。
「咲く」と書いて「えみ」と読む名前もありますね。
笑顔になることを「顔がほころぶ」とか「口元がほころぶ」と言って、花が咲き始めることを「蕾がほころぶ」と言うのも、共通点があってのことなのでしょうか。
花も笑顔も、人を明るい気持ちにさせてくれますね。
笑うことで、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)が活性化して、免疫力が高まるということもわかっています。
微笑むだけでも効果があるそうですよ。
暗い気持ちや批判的な気持ちになりやすい出来事も少なくありませんが、そんな時だからこそ、笑顔になれるようなことに目を向けてみることが大切かなと思います。
15日から20日までは末候「菜虫化蝶(なむし ちょうとなる)」、青虫のさなぎが羽化して蝶になる時期です。
幼虫から蛹になり、大きく体を作り変えて美しい蝶になる様子から、蝶は「変化・変容」の象徴とされています。
蛹になっている間はじっと動かず、外から見ると生きているのかどうかもよくわからない状態ですが、中では大きな変化が起こっているといいます。
体のほとんどの部分が一度溶けて、クリームのようなドロドロの状態になってから、羽根や脚が作られて、蝶の姿になるのです。
大変身ですね。
はらぺこあおむし」
青虫といえば思い出すのが、鮮やかな色彩で有名な絵本「はらぺこあおむし」。
昨年もこの時期に話題にしていたのですが、作者のエリック・カールさんが91歳で亡くなられたのが、その後間もない2021年5月。
「はらぺこあおむし」は2019年に50周年を迎え、日本でもたくさんのイベントが開催されました。
半世紀にもわたって、世界中で愛され読み継がれている名作、ぜひお手に取ってみてください。
「エリック・カールの世界」公式サイトのアドレスもnoteに載せておきますね。
《コーナー②》
次のコーナーです。
次のコーナーは、
四季折々の食事と健康
この番組では、「医食同源」をテーマに、日本の四季と旬の食べ物・その季節にお勧めの食べ物を紹介しています。
今週は、
「菜の花」
です。
菜の花と言うと、野菜よりも一面黄色の菜の花畑が思い浮かぶかもしれません。
関東近郊では南房総や伊豆などが有名ですね。
都心でも、新橋・汐留から近い「浜離宮恩賜庭園」で菜の花畑を見ることができます。
2月から3月にかけては梅、その後は桜と菜の花の競演が始まります。
高層ビルとのコントラストにも、一味違った美しさが感じられます。
残念ながら、新型コロナウイルスの影響で現在臨時休業となっていますが、早くお花見や散策が楽しめるようになるといいですね。
野菜として食べるのは、花が咲く前のつぼみの段階で、茎も葉っぱもつぼみも全部食べられます。
少し苦みがあるのが特徴で、1月から4月頃まで、和食はもちろん、イタリアンやフレンチなどいろいろな料理に使われているのを見かけます。
「春は苦いものを食べよ」
と昔から言われていて、この苦みが春に向けて体調を整えるのに役立つと言われてきました。
この苦みの正体は、ケンフェロールという成分で、ポリフェノールの一種です。
代謝を高め、老廃物を排泄するのに役立つと言われています。
他にも、イソチオシアネートという辛味成分も特徴的です。
このイソチオシアネートの元になる成分が、特につぼみの部分に多く含まれています。
他にはブロッコリー、キャベツ、カブ、小松菜などにも含まれています。
大根やわさび、マスタードの辛味も同じで、もともとは、植物が虫から身を守るために作り出している物質です。
このような野菜や、果物や、穀物などの植物に含まれる生理活性物質を、「フィトケミカル」とか「ファイトケミカル」と呼んでいます。
他にも、イソフラボンやアントシアニンのようなポリフェノール、β-カロテンのようなカロテノイドなどがあります。
体内の酸化や炎症を抑える働きなど、健康への効果が注目されています。
菜の花は栄養価が高い野菜
で、特にβ-カロテン、ビタミンC、鉄分、食物繊維が豊富です。
他にも、ビタミンB群や、カルシウム、カリウム、葉酸などのミネラルも含まれている、健康を気遣う方にはお勧めの野菜です。
ビタミンCを損なわないためにも、食感を楽しむためにも、加熱のしすぎにはお気をつけください。
β-カロテンは体内でビタミンAに変わりますが、ビタミンAやビタミンEのような脂溶性ビタミンは、油と一緒に摂ると効率よく吸収されます。
最近食べたものでは、菜の花を使ったペペロンチーノがとても美味しかったです。
早春の味覚、ぜひお楽しみください。
産業医さくらばちほ
レインボータウンFM「食とココロの処方箋」より