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another story-ほんとのところ㉟

「やっぱり、最初にやりたいって言った曲がいいです」

ようちゃんはスマホでyoutubeを開いた。
ふたりで画面をのぞき込む。

「あのときは、全然できなくてそのままお蔵入りになっちゃった」

「今ならできるよ、大丈夫」

ようちゃんが励ましてくれると、何だかできそうな気もしてくる。

そして次の週。
ようちゃんが二つ折りにしたA3サイズの白い用紙を、これね、と手渡した。

問うてるの楽譜。

「これネットで探したの?」

「ううん、ネットになくて僕が書いた」

私の頭の中にある光景が広がった。
あれは確かまだ関係がギクシャクする前のこと。
午後からお休みというようちゃんと喫茶店で話していたときのこと。

ーようちゃんはお休みの日はどんな風に過ごしているの?

ーうーん、溜まった洗濯をしたり、散歩したりカフェで譜面を書いたり
お昼寝したり、そんな感じかなー

私の知らないお休みの日のようちゃんの姿を思い浮かべて
その隣にいれたら、、と淡い期待を抱いたのを覚えている。

ーようちゃんて、手書き派?それともパソコンで書く?ー

ーパソコンはあまり使わないかな。パソコンはあんまり得意じゃないー

そんなようちゃんが慣れないパソコンを使って書いてくれた・・・

「先生、ありがとう」

ようちゃんは仕事だからって素っ気なく言うけれど
私に自分の時間を割いてくれたことに感動したんだ。

たぶん、私にだけじゃない。
生徒さんみんなにしていること。
だから勘違いしちゃいけないよ。
自分に言い聞かせてみても
何度も求めて、もういいやと諦めても
ようちゃんを求めてしまう。

求めて手にしたものが
自分の想像していたものと全く違うものだったとしても
それでも、ようちゃんの傍にいたい。

その後、お盆休みとか
ようちゃんの都合でレッスンがお休みになったり
元々の休講があったりで何だかんだと
次のレッスンまで一か月が空いてしまった。
この一か月ずっと尻切れ蜻蛉みたいな気分で過ごした。



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