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another story-ほんとのところ㉝

ライブの2日後にレッスンがあった。
よろしくお願いします、と普段通りに挨拶をして始まったけれど
ライブのことはお互いに一切口にしなかった。

「これやりたいって曲はある?」

突然のようちゃんの問いかけに返事に困った。
頭の中でいろんな曲名がぐるぐる回ったけれど、これと言えるものがない。

今から一年ほど前にも
同じことを聞かれたのを思い出して顔が赤くなった。

「これがやりたい!」と意気揚々で言ってみたはものの
全くできずに撃沈してそのまま話が流れてしまった、そんなことがあった。

「そんなに難しく考えないでいいから。曲名だけでも言ってみて」

ようちゃんは優しく言ってくれるけれど、ますます返事に困った。

「即答できないので、持ち帰ります」

たぶん教室運営で決められた文言だとは思うけれど
ちょっとだけ進めたようで嬉しい。

片づけをしながら、ようちゃんに尋ねた。

「再来週のライブは先生のおススメに入りますか?」

ようちゃんの表情がちょっとだけ綻んだ。

「うーん、普通。
たぶん、パンパンで入れないと思うよ。バースデイライブだもん」

「そっかぁ、じゃあ、やめとこうかな。ありがとうございました」

ようちゃんの素っ気なくて飄々とした態度に傷付くこともない。
だって、ようちゃんはそういう人だから。
それも含めてようちゃんで、それも嫌いじゃない。
そう思ったら次のライブが楽しみになって来た。
それに、この前とは違う共演者の方だから
どんな表情するのだろう想像したら絶対に行かなきゃと思った。

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